because I love you
落ち葉の黄金に目を引かれる季節。いつもは黒い道路も今は落ち葉色に染まっていた。朽ちて若干色が悪くなっているものもあれば、落ちたばかりの綺麗なものもあり、ちょっとした模様になっている。
目の前をはらり、ひらりと舞っていくそれを見て、彼女はふぅとため息をついた。そんな彼女の様子に彼は心配げに眉をよせた。
「どうしたの、ため息なんかついて」
彼女が隣りを歩く彼にそっと身を寄せる。
「秋って、あんまり好きじゃないのよねぇ。なんか、寂しくなる」
「アンニュイな気分になるわけですか」
「ですよ」
彼は目を伏せた彼女を見て「ううん」と呻いた。
「俺は秋、好きだけどな。ほら、涼しいから布団入ると気持ちがいいし、あと食いもんうまいし」
秋刀魚とか、芋とか、と指折り挙げていく彼の様子を見て、彼女はくすくすと笑い出した。彼が少し顔を赤らめて「なに笑ってんの!」と怒る。
「だってぇ…子どもみたいな理由なんだもん」
なかなか笑いが収まらない彼女に、彼は臍を曲げる。むすっとした彼に、彼女は
「ごめん、ごめん」
と、やはり笑いながら謝った。
「うん。そうね。私ももしかしたら秋、好きかもしれない」
いきなり手のひらを返した彼女に、彼が首を傾げた。
「さっき好きじゃないって言ったじゃん」
「好きになれそうな気がしたの」
彼女の言うことが分からず、彼は「なんなんだよ」と食い下がった。
「子どもっぽいから教えなーい」
いたずらっぽい目線を彼に向けて、彼女はそう言った。
「子どもっぽくねーし!ガキ扱いすんなよ」
彼がそう叫ぶと彼女は「そういう意味じゃないよ」と首を左右に振った。
するり、と彼の手を繋ぐ。
これで、伝わるだろうか。伝わらないだろうなぁ、と彼女は俯いて苦笑いをした。
年下の彼は時々、恐ろしく鈍感で、彼女はストレートな表現は得意としない。
我ながら子どもみたいだと思う「秋を好きになれそうな理由」は口が裂けても言いたくなかった。
手描きブログにて別名義で描いたネタ
見直したら懐かしかったので、文章にしてみました