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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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9/12

売上目標

「ヒラで働いてた時は、売上なんてどうでもいいと思ってた。今も正直あまり気持ちは変わらない。

 そして、今の話を聞いて更に強く思った。

働いても還元ないならやりがいないだろ。

 皆に、頑張っても得はないのにもっと働けなんて言えない。」


 高橋は何も言わず頷いている。


「ただ、赤字は免れたい。赤字が続くと営業所を潰されるだろ。そうなると皆の生活が崩れるから」


 数ヶ月前、他の地区の営業所が赤字が原因で潰された。

 言い方を変えるなら売上がいい他の営業所と統合。

 潰される場合、退職か他の営業所への異動になるだろう。どっちみち今の生活は出来なくなる。


「赤字と言われる金額ギリギリの売上では、契約解除とか何かあった時に補えなくなる。

 だから赤字にならないギリギリより少し上の目標額でいいのかなって……思うけど……」


 甘いか? 社会人として。副所長として。

さすがに言い過ぎか……? 怒る?


「……甘いな。会社として見れば、収入を増やす事で新たな営業所を開設したり、それにより事業拡大、何かあった時の赤字補填にも充てることが出来る。

 収入が多いに越したことはない」


 高橋がバラバラの資料をまとめ始める。

「……てのが会社的な100点解答かな?

でも俺の意見はお前と同じだ」


 高橋の顔を見ると気恥ずかしそうに笑っていた。

「俺たちは上に行くのに相応しい人間じゃないのかもしれないな」


「そんな事ないさ、お前みたいに部下のこと真剣に考える上司がどこにいるかよ」

 こいつは自分の仕事だけしているわけじゃない、

部下が何で悩んでいるかまでも報告して欲しいと俺に頼んでいた。


「他の会社の中には、売上に応じて給料やボーナスを増やしたりと、ちゃんと還元してくれる所もあるんだ。

 うちの会社がそうでなかっただけで。

 結局、俺たちみたいに売上を第一に考えられない社員が生まれるのは会社方針のあり方なんだろうな」


 高橋が立ち上がる。

「まあ売上の事で怒られるのは俺だから、皆には迷惑かからんだろ……」


 高橋が所長室の外を見て何かに気づいた。

舌打ちし、苦虫を噛み潰したような顔をする。


 ……なんだ?

こいつがこんな顔することなんて滅多にないのに。


 立ち上がり高橋の目線を追う。

が、ノックもされず所長室のドアが開いた。


「あー、ここが売上成績の最下位争いやってる営業所の所長室か〜」

と、言いながらソファにどかっと腰を下ろす。


 白井課長、40代後半でキツネ目の中肉中背。いつも俺たちと話す時は眉間にシワが寄っているので、それ以外の顔は知らない。


「白井課長! 今日は来られる予定ではなかったはずですが……」

高橋が作り笑顔で対応する。


 さすが作り笑顔のプロ高橋!さっきの顔とは別人だ!


 俺の会社の役職として、所長の直属上司が課長、その上が次長、その上が部長、そして社長である。

 基本的にこの上層部たちが来る時は事前に連絡が来る。


 だが白井課長に限っては、不意に事務所に姿を現し、自分の権力を誇示するために威圧的な態度をとってくる。


「ああ? 何か来られてまずいことでもあんのか?」


 ほんとムカつくこの言い方。

だが高橋は笑顔を崩さない。


「いえ全然。いつでもお越しください」

「ここはいつも茶の一つも出さないよな。気遣いがなっとらん」

「申し訳ありません。売上が悪いのでお茶汲み用の社員を配置出来ておりません。」


 白井が顎で所長室の外を指す。

「あそこに女社員がいるじゃないか。あれにやらせばいいだろ」

「あれはお茶汲み用員ではありません。事務員です。

しかも、ウチの事務所にはお茶用の茶葉も急須も売上が低くて用意出来ておりません」


 高橋って意外と淡々と冷静に言い返すんだな……

売上が低いと最初に言われているので、それを多用して返答しているのがわかる。


 その後も言いたいだけ文句を言って白井が帰って行った。


 うちの会社は何だってこんな変な奴が多いんだろう。

 俺もいつの間にかなってるパターンある?

 それに気付かなくなったらおしまいだな。



―――――


 家に帰ると娘が走って来た。

「パパー!たいへんたいへん!だいじけん!」


 はいはい。お前はいつも大事件だもんな。

人形の靴が一つなくなっても大事件、好きなおもちゃが見つからなくても大事件。

 さあ今日は何がなくなった?


「ママのゆびわがないの!!」


 そりゃマジの大事件じゃねえか!!

嫁は肩を落としていたが、いつも通り家事をこなしていた。


「どこに置いたかも覚えてなくて……、ごめん」

と、こぼす。


「いいよ別に。また買えばいいから……」

と言ってやるが、嫁の顔色は変わらない。


 あの結婚指輪30万位しなかったっけ。

まあ同じやつは無理でも、ランク下げれば買えない物でもないし。


 プレゼントした側の俺がいいって言っているのに表情が変わらないって事は、

 ……自分を責めてるんだろうな。


 後ろから優しく抱き締めるが、珍しく何も抵抗ない。

 もうやっちゃう? イイコトして気分変えちゃう?


 あー無理無理。出来そうだけど、ここでやれば後々自己嫌悪に落ちて自分を許せなくなってしまう。


 今日はそばにいて落ち着かせるのがベストかな……



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