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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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本部会議

「お前たちのような営業所は潰れてしまえ」


 何なんだいきなり。というか、誰だよこいつ。


 地区の所長・副所長が一堂に会する本部の会議に行った時の一コマである。 


 俺は初めて行くので緊張していたが、何度も行ったことのある高橋は迷うことなく本部内を歩いて行く。

 金魚の糞のように、ちゃんと後をついていくことが今日の仕事の一つだ。



 会議室へ向かう途中の廊下で、高橋が突然声を掛けられた。


 身長は割と高めで俺たちと同じ位の目線の男。

年齢も同じか少し下かな、切れ長の瞳にグレーのスーツ、ポケットに手を突っ込んでいる。

 首から下げてある名札に「所長 真田」の文字。他の営業所の所長か。


 というか普通に態度悪くね?


 その横にはすらっとして眼鏡をかけた綺麗系の女性が立っている。名札には「副所長 如月」の文字。

 無表情でこちらを見てくる。


「どいういう意味でしょう」

高橋がほほ笑みながら答えた。


 真田が一歩前へ出る。

「お前の所は売上目標達成出来てないだろうが。

そっちが潰れれば全部こっちが引き受ける事が出来て、売上が倍に……いや、お前んとこ売上悪いから1.5倍にしかならないか」

小馬鹿にしたように笑う。


 は?うちの営業所の事なんて何も知らないくせに。

みんな残業してまで働いて、お互いフォローし合ってやっている。


 俺が言い返そうと足を前へ動かすと、即座に高橋が俺の前に腕を伸ばし制止する。


「そうですか。1.5倍でしたらあまり役に立たないですね。業務が大変になるだけでメリットは少ないでしょう?

 そちらにご迷惑かけないよう頑張ります」

貼り付いた笑顔を相手に見せる。


 さすが高橋!長いこと副所長やって磨いたのかその話術は!


 だがもちろん黙って聞いているような相手ではない。真田が次の口撃を出そうとしているのがわかった。


「あっれ〜? 高橋と成瀬じゃ〜ん!」

背後から声が聞こえた。


 真田は舌打ちをしながらどこかへ消えて行く。その後ろを如月が追いかけて行った。


「よお、阿部!」

高橋が手を上げた。

 俺たち三人は同期である。入社時は二十人ほどいた同期もどんどん辞めていき、残り数人になっていた。


 阿部が小走りでこっちに来る。サラサラの髪が揺れている。背は俺らより少し低いくらい。中性的な顔立ちで入社時は女たちから人気があった。


「元気だった〜? そっちの営業所行く機会なんてないから全然会わなかったな〜」

笑顔でハイタッチしてくる。

 名札には「所長 阿部」の文字。

そういや所長になったって数年前に聞いたな。


「お前がいいタイミングで声掛けてくれて助かったよ〜」

そう言いながら高橋が阿部の肩を組んだ。


阿部が小声で話し始める。

「また真田に絡まれてただろ?

 前からお前の所を目の敵にしてるよな。

それより……」

俺に目を向ける。

「お前出世したな〜!

 この会議で滅多に会えない同期に会えるとやっぱテンション上がるわ〜」

「お前も元気そうで良かったよー」


 阿部の営業所はこの地区トップである。営業所は売上が全てなので、真田は阿部に何も言えない。

 自分の営業所より売上が下の所に目をつけて憂さ晴らしでもしているのだろう。




 初めての本部会議は苦痛でしかなかった。

売上目標を達成していない営業所は、何故達成出来なかったのか、それに対する対策を皆の前で言わされる。


 やる気を引き出す為とか言って、ただの公開処刑じゃないか。売上を達成した奴らは、次は自分たちが同じ目に遭うのかもしれない、と怯えた表情でそれを眺めていた。

 上層部はそれを知った上で皆の様子を観察している。高みの見物とはこの事か。


 こんな性格悪いやり方だから、性格が悪い真田が生まれるんじゃないか。

 それに飲み込まれず変わらない高橋や阿部は流石だ。俺もそうなれるのだろうか。真田のように性格が悪くなったら、と考えるとゾッとする。



 やっと会議が終わったので外でタクシーを待つ。

高橋は阿部に言い忘れた事があったらしく、一旦中に戻って行った。


 マジで疲れた。こんな会議に出るくらいなら営業に回ってた方がマシだな。


 出入口から女が出て来た。

 えっと、確か如月か。真田のとこの副所長。

真田も出てくるのか?

 嫌だな、俺は高橋のように華麗な返答が出来るのだろうか。


 身構えたが一人のようだ。俺と目が合うと軽く会釈されたのでそれを返す。

 俺からちょっと離れてタクシーを待っている様子。


「あの……」

突如声を掛けられたが、あまりに小さい声のためよく聞き取れない。少し距離を詰める。


 俺の方を見上げながら言葉を発す。

「先ほどはうちの所長が申し訳ありませんでした」


「いえいえ……」

この人の感覚はまともなのか。だいたい無駄に喧嘩売ってくるのが可笑しいよな。


「いつも喧嘩越しになってしまうのですが、お気になさらないでください」


 その時、真田が出て来た。

「行くぞ如月!」

と、俺に気づいたようで睨みながら近付いて来た。


「何? うちの社員にナンパ?

 欲求不満は大変だな!」

そう言い残し、先にタクシーを奪われ去って行った。


 む、か、つ、く!!!

なんじゃありゃ! 社会人としてどうなんた!?

 会社員としてどうなんだよ!?

その前に人として、人間として終わってるだろアイツ!

 欲求不満は当たってるけど、あんな奴に言われる筋合いはない!!

「お気になさらないで」?

 するわ! 気にするわボケ!!


 もうーー今日めっちゃ疲れるじゃん俺……



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