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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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【番外編】事務の女性社員③

「……てことがあって」

高橋と喫煙室で話をした。


 でも藤田がゲイな事は話していない。個人的な事は他人が気軽に話していいわけじゃないと思ったからだ。


「へ〜策士だな、桜田」

「ああ、上手く利用された感じ」


 高橋が煙を吐きながら続ける。

「でも何故か怒りは湧かないな」

「そう! そうなんだよ!

騙されたけど、感心してしまって怒りまで感じないというか……」


「藤田に確認しなかった俺も悪いし、お前あまり落ち込まなくいいからな。

……怖いって。追い詰められた顔してるから」

と背中を叩きハハッと笑う。


「ああ……藤田に悪い事してしまったなって……」

「そうか? 別に注意した訳でもないし、処分された訳でもないからあんま気にしなくていいと思うけどな。本人も気づいてないし」


「気持ちがスッキリしないんだよな……」



――――――



 家に帰り、仕事の鞄を部屋に置きに行く途中に声が掛かった。

「早くお風呂入って!!」


 ……え? 今日機嫌悪い日なの?

 全然わからなかった。

何故機嫌が悪いかは予想しない。無駄だから。


 誰か嫁の機嫌が予測出来るアプリ開発してくれよ。

世の夫たちは、待ってましたとばかりに金払っても手に入れるって。出来たらノーベル賞ものだろ。



――――――



 数日後、また藤田と自販機の前で会った。

胸に留めておくことが出来ず、桜田の事を全部話した。藤田の事を信じておらず、セクハラしていたと思い申し訳なかったとも。


 話し終わると藤田が笑い出した。

「ハハハ……なんだ! そんなことですか!

すごく怖い顔してるから何だろうと思って構えてたのに!」

「そんなこと……? 利用された事知ってたのか?」

「いえ全く!! でも俺を利用したお陰で桜田は希望通りになったんですよね! 良かったです!」


「良かった……? 裏切られたとかじゃなくて?」

「桜田の役に立てて嬉しいです!」


 藤田につられて笑ってしまう。

そっか。そういう考えもあるんだな……


「あ!」

ふと聞いてみたくなった。

「もし答えたくなかったら全然答えなくていいんだけど……」

「え? なんスか?」


「男って、女見た時に抱けるかどうか考えるけど、お前はどうなの?」

「俺は……女見ても何とも思わないですね〜

性の対象じゃないからかな?

 ただ、男を見た時に抱かれたいかどうかは考えますよ」

「へ〜そういうもんなんだ……勉強になる……」

「アハハ……何の勉強ですか〜」


 藤田がふうっと息を吐いてこっちを見る。

「でも良かったです。こうやって話せて」

「なんで?」


「こないだ話した時、最後悲しい顔してたから気になってました。カミングアウトした時に、驚かれたり引かれたりした事はあったけど、あんな悲しい顔された事なかったから。

 桜田の件があったからだったんですね」

「でも凄いな、そういうの隠す奴も多い中で堂々と言えるなんて」


「いや最初は隠してましたよ、俺って普通じゃないんだ、って。

 でもある時プッツンしちゃって。

『もういいや!他人にどう思われてもいいや!』って。

 そんで言うようになったら、離れていく人がいる中、ちゃんとそばにいてくれる人もいて、その存在を認めてくれる人たちのお陰で今いる感じですね」

眩しい笑顔を向けられる。


 強いなこいつ。乗り越えたからこそ言える言葉だから重みがある。


「俺、桜田は無理だけど成瀬さんはアリですよ!」

「え……」


 ……待って。こういう時、傷つけない為には何て言ったらいい?

 えっと……女に言われたと仮定して断ればいいよな?

「嫁と子供がいるからごめんなさい」

……コレか!?


 一生懸命考えているのに藤田が肩を震わせて笑いを堪えている。

「アハハ…冗談っスよ冗談!!

成瀬さんて一つ一つ真面目に考えて可愛いですよね!ほんと好きになりました!あ!性的な意味じゃなく人間として!」


 同性からでも、好きと言われたら悪い気はしないんだなと思った。





 その後、桜田が異動先で妻子持ちに手を出して、その嫁が会社に怒鳴り込んできて退職を余儀なくされたらしいが、今となってはそんな事どうでもいい。


 そう言えば、元所長は俺たちに使われる事に耐えきれずあれから数ヶ月で退職したっけな。



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