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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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【番外編】事務の女性社員②

「抱ける相手だから頑張ってるのかなって思っただけ〜」

意地悪そうに笑う。


「いや、違うって。誰からの相談でも真面目に考えるさ!」


 まあ下心ゼロとは言い切れんが。


 高橋は机の引き出しの書類をあちこち触っている。

「わかったわかった。そうだと思ったから副所長に選んだんだよ。若い美人でも爺さん婆さんでも同じように接してくれるだろうって。

 ずっとそれで頼むよ」


高橋が一枚の書類をバンッと机の上に出す。

「やっと見つけた!」


「何の書類?」

「異動願い! 桜田が出してたような気がして探してたんだ。前の所長が止めてたんだな。

 桜田が減ると、補充があるまで事務仕事を他の奴らがしないといけなくなるから大変にはなる。

 だけどこれを通すしかないだろうな……」


 これが正解だったのか……

これで桜田は藤田と離れる事が出来るし、希望の異動が出来て一石二鳥か。



――――――



 今日も残業して家に帰って来た。

「おかえり〜!」

嫁がとびきりの笑顔で出迎える。


 こわ。機嫌悪くても怖いけど、機嫌良すぎるのも怖い。 何? 俺殺されるの?


 リビングで椅子に腰掛けると、嫁が雪崩のように話をしてきた。娘の保育園の役員をしなければならなかったのに、しなくて良くなったことをとても嬉しそうに話す。


 俺は無難に相槌を打ちながらそれを聞く。

お腹空いてるんだけど。でも言えない。とても中断していい状況ではない。嫁の話が終わるまで待たねば。


 ご飯を運んでくれる嫁があまりにも機嫌が良いので、ふとお尻を触ってみた。

「もう〜」と笑いながら避けている。


 あれ?今日イケそうじゃね?


 食事や風呂が終わった後、それとなく誘ったが、

「あの日」だから無理と言われた。


 何あの日って。いや、意味はわかるんだ。

俺たち男はあの日に振り回されてやしないか。

 嘘ついてる場合はないか?

 わざわざ確かめないし。


 でも触ったりキスは出来るだろ。

ウチだけ? 「あの日」は触れることすら許されない。

シャッターが下りてしまうように全て遮断される。

 寂しいな〜……今日も悶々と夜を過ごす。



――――――



 異動前日、桜田があちこちに挨拶して回っていた。

当然俺のデスクの所にも来た。


 笑顔を見せながら小声で話しかけてくる。

「成瀬さんのお陰で助かりました。ありがとうございました」


 それだけ言うとさっさと他の奴の所へ挨拶に行ってしまった。


 ……なんだろう。違和感が。

笑顔とか仕草とかが作られている様な……?



――――――




 あれから数週間経った。

俺は、自販機前の休憩所が気に入って時々来るようになっていた。

 フロア全体が見渡せて面白い。

あ、安田がパソコン打つフリしてスマホばっかり触ってる、とか、高橋は所長室にいるな、とか。


 いつもの様にブラックコーヒーを飲みながらくつろいでいると、藤田が通りかかった。

「あ、お疲れさまでーす!」

「ああ、お疲れ」


 藤田は、片手に小銭を持ってジャリジャリ言わせながら自販機で飲み物を選んでいる。

 相変わらずの明るめ茶髪、耳にはピアス穴が数個開いているのが確認できる。


 そもそも、こいつのセクハラから全て始まったよな……


「……なあ、ちょっと話さないか?」

「え!? 俺っスか!? 成瀬さんとあんま話した事ないからキンチョーするな〜」

そう笑い、飲み物を自販機から取り出して隣に座ってくる。


 凄いな、こいつ思った事何でも言うタイプなのか。


 仕事の話など雑談を一通り終わらせる。

「そう言えばさ、桜田異動したな。お前同期じゃなかったっけ?」


 ここまで世間話をしたから自然な流れで行けたはず。


「そうっス! 同期で仲良かったんですよ!

成瀬さんのお陰で彼氏のとこに異動出来るー! って喜んでましたよ」


 ああ彼氏のいる部署に異動したかったのか。

でもセクハラしてくる相手に話すだろうか?


「やっぱあんな可愛い子だから、同期で好きになったりする奴多かったんじゃないか?」

「そうですね〜まあ人それぞれかな。好みあるし」

「……お前は?」

「あーないですないです! 絶対ない!!」

「……なんで? 男と女なんだから絶対とは言い切れないだろ?」


「俺、女じゃ勃たないんスよ!」


「……は?」


「俺、ゲイなんで女無理なんですよね〜。同期の奴はみんな知ってますよ!

……あ! 見ます? 俺の彼氏!」

とスマホの画面を見せられる。


 そこには筋肉隆々の男と藤田が肩を組んでいる写真があった。


 え……ちょっと待て……

でも桜田が……?

 待って最初から考えないと……

 頭がグラグラしてくる。


 桜田が言っていたセクハラは全部嘘?


「……メッセージのやり取りとかはしてたんだよな……?」

「え? 桜田とですか?

グループチャットやってたけど、個人的にはほぼやってないですね〜」


 あの時見た画面は確かに一瞬だった。人のスマホって、しかもメッセージってあまり見ない方がいいと思ってきちんと確認しなかった。


 あのメッセージもグループチャット上の皆に対して言ったもの……?

 全て辻褄が合う。


 異動希望を出したのになかなか進展しないからこれを考えたのか……?

 しかも俺と仲がいい高橋や安田ではなく、あまり関わりのない藤田からセクハラを受けたと……。


 俺は藤田に確かめたか?

前所長に言ったよな、一方的な意見で決めるなって。

あんだけ啖呵切ったくせに自分はなんなんだよ……


 俺が藤田に確認せず行動することまで読まれていた……?


 藤田に申し訳ない気持ちが湧いてきた。


藤田が心配そうな顔をして俺の顔を覗き込んでいる。

「どうしました? そんな泣きそうな顔して」


「ごめん……なんかごめんな……」


 藤田の事を信じてなかった。桜田の意見しか信じてなかった。

 ダメだなこんなんじゃ……



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