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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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18/27

それぞれの闘い方

「前から思ってたんだ!!

 お前たち、この事務所の奴らみんな危機感がないんだよ!」

「危機感……?」


「みんなでポワポワしてて幼稚園みたいじゃねえか! 

俺の営業所はみんなギスギスしてるが、同僚を蹴落としてまで上に行こうという、向上心の強い奴ばっかりなんだよ!!」

「良くない? 幼稚園。可愛いじゃん。

俺はギスギスよりポワポワが好きだけどな〜」


 真田の怒りは収まらない。声がさらに大きくなる。

「ふざけんな!!」


「まあ落ち着けって。

俺たちは起きてる時間のほとんどを仕事で過ごすんだよ、

 それなら楽しい方がいいだろ。

難しい話じゃないさ」

 興奮が冷めないので、とりあえずソファに誘導し座らせる。


「それはそうかもしれないけど、そんな甘い事言ってるから売上も伸ばせないんだろ!!」


 真田の反応を見ながら、ゆっくりした口調で言ってみる。

「……そうかもな。実際ガツガツしてるお前の営業所は売上いいもんな。

 ただ、俺たちも向上心はあるんだよ。

 必要なら休みの日でも研修や勉強会に行って、そこで得た知識を他の社員に伝えたりしてるし。

 やり方が違うだけで、目指している所は一緒だと思うけどな?」


 真田はまだ鼻息荒いが何も言い返さない。

ちょっとは落ち着いてくれたか?

顔が険しいけど。




「おつかれ〜」


 高橋が所長室に入って来た。

「えっと……真田……副所長だよな……」

と独り言のように呟く。


「え? お前知ってた?」

高橋の声に思わず反応する。


「いや、今本部で聞いて来た。

 それで? 今日は何の御用ですか?」

荷物を下ろしながら高橋が真田に投げかける。


 真田は立ち上がり、高橋の机に資料を広げ俺に説明したように話し始める。

 高橋は資料の隅々まで目を通し、パソコンを使ってその会社についても調べている。


 そして言いにくそうに言葉を発する。

「それで……取り分なんだが……」


 高橋は資料を机に置き、深く椅子に座り直し腕組みをした。無表情で何か考えているように見える。


「いいですよ。こっち3、そっち7で」

真田に全部言わせる前に答えた。


「え……?」

顔を見なくても真田が驚いているのがわかる。


高橋が真田の背後の俺に声をかけた。

「いいよな、それで」


「ああ、俺もそう思ってた」


 真田は驚いた顔のまま俺を振り返り、それを聞くと安堵の表情を浮かべた。


 高橋が座ったまま笑顔で真田を見上げる。

「そちらの営業所の売上がいいので、地区の売上金額が下がることなく経過しているようですね。

 お陰でうちは楽しくポワポワして仕事が出来ています。ありがとうございます」


 あら、ポワポワ発言聞いてたんだね。

俺たちの会話聞いていて、ちょうどいいタイミングで入って来てくれたのか。

 こう言われたら真田も悪い気はしないだろうな。


 真田は何ともいえないような顔をしていたが、

「ありがとうございます」と言って深々と頭を下げた。





 真田が去って行くのを見送っている時、高橋が俺を見て笑う。

「フフ……驚いたか?」


「……ああ、あんなに仕事熱心だと思わなかった。

売上取るためなら、何でもしていいって考えだと勝手に思ってたし……」


「あいつは前からああだよ。曲がったことが大嫌い、みたいな。真面目過ぎではあるけど。

 だからあいつから何言われても、ちゃんと信念ある奴だからあんまり頭にこないかな。

 まあ、口は悪いけど」


「ハハッ……ほんと口悪いよな」

「あれで態度とか言葉遣い改めれば、男女共に支持されるだろうに」


 高橋がインスタントコーヒーを作り始めた。

コーヒーの心地よい匂いが室内に染み渡る。


 真田がどんな奴かわかって良かった。

宝物を手に入れたような満足感を感じる。



――――――




 コピーをとっていると声をかけられた。

「お忙しい所すみません、成瀬さ……副所長」

桜田の補充で入った佐伯さん。確か同じ位の年だった。大人しい感じで、肩までの少し茶色がかった髪の女性。


「ああ、名前でもいいよ。誰も副所長なんて呼んでくれないし、堅苦しいの苦手だし」

軽く笑って返す。


「……は、はい。あの、この書類の日付が間違ってないかと思いまして……」


 書類を受け取り確認する。

「あ〜本当だ。書き直しておくよ」

「ありがとうございます、よろしくお願いします」


「こんな細かい所まで気づいてくれてありがとう。

仕事は慣れた?」


 話しかけられると思ってなかったのか、少し驚いた顔を見せた。

「は、はい。みなさん優しい方ばかりで、わからない所も丁寧に教えてもらってます」


「それは良かった。わからない事あったら遠慮なく聞いてね。俺でもいいし」


「ありがとうございます」

と、軽く会釈が返ってきた。

が、聞こえるか聞こえないかの微かな声が聞こえた。


「昔から変わってないですね」



 ……え!? 今なんて言った!?

振り返るが、もうすでに背が遠くにあった。



 藤田が笑いながら近付いて来る。

「ハハハ……なんですか、その顔!」

幽霊でも見たような顔してるっスよ!」




 ……いや、幽霊より怖いぞコレは。



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