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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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見知らぬ女

「成瀬さん、私のことわからないんですか?」


 誰この女!?こんな綺麗な人なら覚えておくはずだし……

 同級生!? 化粧するとわかんないからな〜。

 学生の時のワンナイト!?

 そんなんもう名前すら覚えてないわ。


 思考回路が大騒ぎしていると、女が身体を寄せてきて小声で囁く。

「これから私と朝まで過ごしませんか?」

「いえ! 大丈夫です!」

思わず即答。


 興奮なんかしない。怖いって!

 いきなり知らない女とベッドに入れるほど度胸ねえし、このご時世何があるかわからない。

 嫁を裏切れない……とかの葛藤にまでいかないレベル。


「私に魅力がないってことですね……」

と、言いながら悲しそうに俯く。


「違うって! 美人だし魅力的だと思います!

でも、知らない人にいきなり言われたら怖いだけだから!」


 多少酔っているのもあり、思ったことを全部話してしまう。

 でも同窓会とかで飲んでて、素性のわかる女といい雰囲気になったら、酔った勢いあれば行っちゃうかも……って一瞬思ってしまった。


 女がクスクスと笑い出す。

「正直に言い過ぎでしょ」


 あれ? 笑った顔可愛いな。


 パッと顔を上げられて目が合い、ドキッとする。

「本当に私のことわからないんですか?」



「お前酔った勢いでナンパすんなよ〜」

店から出て来た高橋の声。


 それに続き阿部も出て来て女の方をチラッとみた。


「あれ〜如月さんじゃ〜ん」


 え!? 如月ってあの……真田んとこの!?

 全然違うじゃん!!

 眼鏡外して髪下ろしてばっちりメイクしてるし私服だし!!


「ほんとだ〜何やってるんですか、こんなところで〜」

高橋も気づいた様子。


「成瀬さんに声掛けたんですが、全然私って気づいてくれなくて」

「え〜すぐわかるじゃん」

「だよな、酔っ払い過ぎなんじゃねえの?」


「いやわかんねえよ! お前らと違って何回かしか会ったことないんだから!」


 高橋や阿部は本部会議で何度も会ってるが、俺はまだ数回だ。話したのも一言二言くらい。


「それで何の話してたの? 知らない女の人と」

阿部が俺たちを交互に見ながら聞いてきた。


「ホテルに誘ったんですが断られちゃいました」


 え!? 言うのそれ!! 言っちゃうの!?

そしてやっぱりそっちの意味の朝までだった!?


 高橋と阿部が一斉に笑い出す。

「アハハ……無理無理、成瀬そんな度胸ないから!」

「そうそう、コイツ落とすなら泥酔させなきゃ〜

それで学生の時に何回失敗したことか…ハハハ」


 酔ってるのもあり言いたい放題だな。わざわざ言わんでいいことまで……


「だいたい何で成瀬なの〜? 俺は?」

阿部が面白がっているのがわかる。


「成瀬さんじゃないとダメなんです……」

「え! それって成瀬のこと本気って……」


「違います!!」

即答。


 違うんかい! 俺の下心がちょっと傷つく。


「真田所長に言われたんです。

成瀬さんにハニトラ仕掛けて来いって。

独身より既婚者の方が炎上して面白いから。

 まあ、本気かどうかわかりませんが。

 ……あ!でも全然する気はなかったんですが、

あまりにも成瀬さんが私に気づかないので言ってみました」

意地悪そうに笑いながら俺を見上げる。


 危なっ!! ほいほい返事しないで良かったわ!

魔性過ぎるだろこれ……


「なんだ〜そうだよね〜。何もなかったら成瀬誘ったりしないよね〜」

阿部の安心した顔がちょっと腹立つ。


「私はこれで……」

離れた所に友達を見つけたらしく、俺たちに軽く会釈しながら離れようとする。


 が、すぐに振り返り眉をひそめる。

「所長がまだ狙っているのでお気をつけください」




「どう思う?」

高橋が如月さんの背を見ながら話しかけてきた。

「ハニトラは本気で命令したんじゃないかな。

言いそうじゃん、あいつ」


「再来月には真田よりは役職上になるけど、俺の上に白井がいるからな〜……

 何か起こった時にお前たちのこと守れればいいんだけど……」


 阿部の言葉に少し不安を覚える。



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