作戦決行、そしてざまぁ
とうとう本部会議の日が来た。
昨日はあまり眠れなかった。高橋も同じだった様子。
阿部に、白井と真田がいつも二人で話している喫煙室を教えてもらった。その前の廊下で作戦決行だ。
廊下にしたのも理由がある。
本部へ着き早速その場所へ向かう。時間も教えてもらったからちょうど会えるはず。
足早に移動するが緊張してマジで吐きそう。寝不足で頭痛いし。コンディションは最悪。
ちょうど喫煙室に入ろうとしている二人を見つけた。
「白井課長!」
高橋が声を掛けると、白井より先に真田が動く。
「何だお前ら。無能二人が呼び止めるんじゃねえよ」
何なんこいつ。どこのヤンキーよ。
「叔父さん、コイツらほっといてもう中に入ろう」
と、白井の背を押す。白井はいつも通りの睨み顔。
高橋も引き下がらない。
「この資料を見てください! 売上目標額についてです!」
二人とも思い当たる節があるので足を止め、真田が雑に資料を取り上げる。
しばらく目を通した所で白井が口を開く。
「……で? 何が問題だ?
目標額を上げられたところで達成すればいいだけの話だろ。小さい金額持って来やがって。
俺の所に持ってくるなら1000万の横領でも持って来い!!」
資料を床へ投げつけられた。
そうだよな……確かにドラマみたいに何千万の不正を暴きました!みたいならカッコいいしやってみたいけど。
現実はこのくらいが限度だろ。
真田が不適な笑みを浮かべている。
白井が気味悪く笑いながら俺たちを交互に見る。
「上層部に逆らうとどうなるかわかってるんだろうな」
……何だこの違和感。余裕な態度が気になる。
……まさか想定済みだった?
頭をフル回転させて考える。
前所長を辞めさせ、俺たちが所長と副所長になり、これに気付く事まで?
俺たち二人がいっぺんに辞めると営業所が成り立たなくなって統合され、全ての売上が真田の営業所へいくのでは……
うちの営業所を潰すために……?
ハメられた……
パズルのピースがどんどんハマっていき完成に近付いていく。
「なんだなんだ、こんな廊下で」
背後から声がした。
「渡瀬部長!!」
白井と真田が顔面蒼白。
慌ててさっき投げた資料を拾おうとするので先に拾う。
渡瀬部長にその資料を素早く手渡す。
「すみません、人の邪魔になる所で話してしまって。
これについて話してました」
部長が資料に目を通し始めた。
白井がしどろもどろになって弁明し出す。
「目標額を上乗せした方が、や、やる気が起きるだろうと思いまし、て……」
頭が切れる部長は、1言えば10理解できる位の人だ。一枚の資料だけで全て悟ったようだった。
「ほう、それなら全部の営業所の額を増やすはずだが。
おかしいな、一つだけ減るというのは」
「そ、それは……でもこんな小さな額、大して問題じゃないでしょう……?
大きな横領じゃあるまいし……」
渡瀬部長から今まで聞いたことのない低い声が出た。
「小さな額を不正する奴が、感覚が麻痺しエスカレートして大きな額を動かすようになるとは思わんか」
白井は口を開くことすらままならない。
真田と二人、ヘビに睨まれたカエルのようだった。
そして部長はいつもの笑顔になり、白井の肩に手を置いた。
「上層部に逆らうとどうなるかわかってるんだよな?」
白井と真田が別室に連れて行かれた。
その時、後ろを軽く振り返って頷いてくれたので、深々とお辞儀をした。
「つ、か、れ、たーーー」
壁にもたれかかる。
「どうなることかと思った……」
高橋が目を手で覆っている。
阿部が足早に近付いて来た。
「大丈夫だった? 部長にそっちで揉めてますって伝えといたけど」
廊下で敢えて話したのは離れた所からでも目立つため。喫煙室内で話しては外からは会話内容がわからない。
「阿部〜ナイスアシスト〜!」
阿部に拳を向ける。
「終わったな〜」
俺が座り込むと高橋が俺に手を伸ばす。
「終わってねえよ! 今から会議だ!
急がないと遅れる!」
三人でバタバタと会議室へ向かった。
白井と真田は少し遅れて会議に参加した。
少しおとなしい気がしたが、二人の睨みはいつもの五割増だった。
渡瀬部長のことだから厳重注意で終わりだろうな。でも厳重注意されれば少しは改善するだろ。
夜は三人でお疲れ会。
「いや〜マジで頑張った俺ら」
「学生時代に戻ったみたいなワクワクがあったね」
「もういいよこんなんでワクワク感じたくねえよ」
久しぶりに三人で飲めて楽しい時間を過ごす事が出来た。
会計をしようと立ち上がると、高橋が鞄から紙を取り出して、笑顔で俺たちに見せてくる。
「見てくれ、この数字おかしいと思わないか」
思わねえよ、もうやめてくれ……
そして、居酒屋の外に出た時に綺麗なお姉さんに呼び止められた。
誰だっけこの人……
誰なのか一生懸命考えていると、
「成瀬さん、私のことわからないんですか?」
と微笑まれた。
ええーーー!
また一波乱起こりそうな予感。




