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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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10/12

誰かの存在

 ふと思った。


 なぜ前所長が役職を奪われたのか。

 誰かが現状を伝えなければ起こらなかったことではないのか。本部は営業所の詳細は知らないはずだ。

 俺が動く前の事だから俺ではない。

じゃあ誰が? それとも元々上に狙われてた?



 高橋が売上目標一覧を持って来た。

自分の営業所だけじゃない、地区全部の目標額が載っている。しかもご丁寧に三年分。


「これ……時間かかりそうだな」

さすがに圧倒されてしまう。

「36枚だ。通常業務にプラスしてやるとなると、一日一枚が限界かな」


 とりあえず目を通す。

 営業所の正社員とパートの人数も書いてあるからそれに沿って計算し目標額を出す。

それぞれの営業所の金額を出し、いくら増減があるか計算していく。


 まずそれだけして、後から法則があるのか考えていくことにした。


 ボーナス前後で違うのか、その時に契約に大きな変化があったかどうか……他に何かあるのか。

 営業所に何か大きな変化があれば、毎月配られる地区の月報に記入されるのでこれも準備。


 これに時間を費やしたところで何も出なかったら……

 いや、何かしらの法則性は出るだろう。

そう信じないとやってられない。



―――――


 帰り支度をしている所に安田がやって来た。

「成瀬さーん、ちょっと悩み聞いて欲しいんで、今日この後飲みに行けませんか……?」


「安田!?」

「は、はい?」


「安田だぁ〜」

と言ってハグをした。

「もう俺、安田不足よ〜俺を癒して朝まで〜」

「え、ちょっと朝までは嫌かも……」

笑いながら返される。


 副所長になってから高橋と行動することが増え、業務内容が少々変わったこともあり、安田との会話時間が減っていた。

 頻繁に飲みに行っていたのが、だいぶ昔の事のように思える。




「でさー、朝から起きても疲れが取れてなくて、起きた時点で仕事終わった後みたいな疲れがさ……」


 あら? いつの間にか俺の方が悩み聞いてもらってた……


「あ、ごめん。悩みが有るんだったよな」

「ハハ……いいですいいです。久しぶりに成瀬さんと飲みに行けるだけで嬉しいんで」


 もう凄く可愛いこいつ。また抱き締めたい。



「それで、悩みなんですが、仕事辞めようか迷ってて……」

「え……マジ……?」


 勝手に安田はずっとそばにいるものだと思ってた。

そこから違うんだよな、俺の所有物でもないのに。


 悩み相談する時って実は答えが決まってて、背中押して欲しいだけとか言う人いるけど、

 俺は本当に決まってない時に相談する。

軽くこっちかな?と思っていても、相談して意見を聞いて真逆の答えを決めることも多々あった。


 だから前者の場合、

「答えはもう決まってるんだろ?」

という回答例があるが、俺はこれを使わない。

 これを欲しがっている奴がいてもだ。


 せっかく俺に相談してくれたんだから、俺が考えた俺の答えを伝えたい。


「そっか……理由は?」

「給料面とか……。友達の会社の方がボーナスもいいし、福利厚生もちゃんとしてるんですよね。

 仕事内容もあまり変わらないみたいだし、そっちの方がいいかなとか思って……」


「そうだよな……うちの会社基本給安いし、長年勤めてもそこまでベースアップないし、基本給安いせいでボーナスも少ないもんな」


「そうなんですよー、年収で計算すると結構低いんですよね、他の会社と比べると」


「俺はお前にいてもらいたいと思うけど。

仕事ちゃんと責任持って出来て手を抜かないし、お前のこと好きだし……

 でも引き留めて将来を無駄にさせたくはないかな。

今の会社が、胸を張っていい会社です!って言えるなら引き留めるけど、こんな会社でいいのかなって正直思うし。

 大切に思うからこそ引き留めづらい。

 でも寂しいのは寂しいんだよ。

今、いなくなるかもって思ったら、胸がギューってなったし」

本音で言い過ぎて恥ずかしさもあり、下を向きながら言ってしまった。


 顔をゆっくり上げると、涙ボロボロの安田の顔が。


「! ……大丈夫か?

 ちょっと飲み過ぎたんじゃないか……?」

驚いてハンカチを渡す。



「あの、こんなに、一生懸命かんがえ……てくれるなんて思って、なくて……」

俺の渡したハンカチで涙や鼻水を拭き、しゃくりあげながらも頑張って会話しようとしているのが伝わってくる。


「おれ……ちゃんと、かんがえます。

あと、おれも、成瀬さんのこと、好きです……」

涙でぐちゃぐちゃになっているのも好感がもてる。


「後悔しないように決めないとな。いつでも話聞くから」


 安田は涙を拭きながらこくこく頷いていた。




 数カ月後、安田は退職した。

もう喪失感、半端ない。なんだコレ。

泣きたい。めっちゃ泣きたい。

 長年の恋に失恋したかのような傷心。

引き留めれば良かったかな……

 いや、自分が寂しいからって人生棒に振らせるわけにはいかんよなー……




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