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夫に騙されて死んだ元女騎士、次こそ愛娘と共に幸せになります!  作者: モハチ
第二章:春

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第八十四話:束の間の平和

「きゃー!可愛い!」

「はっはっは。そう言ってもらえるとこの馬も喜ぶよ!」


 馬小屋の使用人に案内され、自分の馬と対面する。他の馬と比べて少し小柄だが、これからシンシアと共に成長をするという意味でルイザがこの馬を選んだと聞き、増々嬉しくなった。


「この馬、本当にお母様が選んでくれたんですか?」

「ほっほっほ。そうですよ。少し前に丁度この子が生まれましてね。性格も荒くないし、丁度いいのではと話をしてたんですよ」

「そうだったんだ・・早く言ってくれたら良かったのに!」

「はっはっは。シンシア様のタイミングを見て話すつもりだとその時は言ってましたよ。」


 シンシアは自分の馬を見た。馬の目は黒く澄んでおり、じっとこちらを見つめなおしてくれている。馬もシンシアがここに来たことを喜んでくれているように見えた。


「この子の名前は何て言うの?」

「正式な名前は未だないんだ。お嬢様が決めてあげてください。」

「え!私が・・?決めてもいいの?」

「もちろんですよ!その方がこのこも喜びましょう。」


 シンシアは馬を見る。白色の毛並みが、自分の銀色の髪と似ているような気がした。じっと見ていると、馬はペロとシンシアの顔を舐めた。


「きゃっ!舐めた!」

「おお、お嬢様のことを気に入ったようですな。」

「う・・嬉しい。」


 シンシアは馬を撫でながら自分が考えた名前をボソッと呟いた。


「白色の立派な毛並みだからホワイト・・イトとかどうかな・・?安直すぎる?」

「おお!いいんじゃないですか?ずっと呼び続けていたらこの子も喜びますよ。」


 馬に向かって名前を数回呼んでみた。


「イト、イト、イト!」


 ペロリとまたシンシアを舐めたイトは嬉しそうに見えた。


「ほっほっほ。良かったですなあ。そしたら馬に乗ってみましょう。」

「はい!」


 シンシアは自分の馬、イトと関係性を築きつつ乗馬の訓練を始めた。



 その様子を屋敷の中からじっと見ている人物がいた。それはアリスだった。


「・・羨ましい。ずっとハクが付き添っているじゃない。2人きりで・・」


 アリスは先ほどの衝撃からハクに夢中になっていたため馬番が見えておらず、彼女の目にはハクとシンシアの2人しか見えていなかった。


「ねえお父様、早く私の護衛騎士を何とかしてください。」


 アリスは低い声のトーンでヨハスに声をかける。ヨハスも窓際まで来てハクを見た。


「・・あの者なんだね?自分の護衛騎士にしたいのは。」

「そうです!私の騎士にしてほしいです!」


 アリスは目を潤ませヨハスの胸に抱き着き、懇願した。

 ヨハスは少し驚いたものの、顔をデレデレさせながら頭を撫でた。


「あの者をか・・なんか見たことある気がしないようなするような・・。」


 ヨハスは少し考えていた。()()()外にいる騎士について思い出さなければならないような気がしていたのだ。うーんと何かを考え始めたヨハスに向かって再度アリスは叫んだ。


「お父様!そんなのあの人がクレアトン家の騎士であるからに決まっているでしょう!それならどこかで見ているはずです!」

「あ・・ああ、そうだよな。でもなんか・・」

「お父様・・私本当に早く護衛騎士を変更してほしいです。あの人が良いってアリス思っちゃいました。」


 アリスは上目遣いで一生懸命ヨハスへ訴えた。


(まあ、アリスの言った通り、彼はクレアトン家の騎士だから()()思うんだろう。気にしなくてもいいか。)


「分かったよ。でもね、今僕は人事の権限が無いからまずはルイザに話をしなくちゃいけない・・。」


(ちっ!使えない・・。)


 アリスは心の中で舌打ちをした。思う通りに行かない、早く自分の騎士にしたいのにすぐにできない。手を伸ばせば届くところにハクはいるのに手が届かない・・じれったく思っていた。


(はあ、ほんと・・早くルイザを亡き者にしなくちゃ。こんな思いをずっと続けるのはごめんだわ。)


 チラっとアリスは情けない父を見ながらそう思った。


「ねえお父様・・ルイザがいなくなればお父様には権限が自然と手に入るんですよね・・?」

「ん?ああそうだよ。そのためにあの方、ガスティン侯爵様もこうして手を尽くしてくれているんだから。」

「でも今、それが滞っていますよね・・。」


 アリスに痛いところを突かれたヨハスは少し言葉に詰まった。


「ぐ・・。確かに。でも少しずつ、体制を整えて言っているんじゃないかなって思うんだけど・・。」

「でも、私たちが上手くいかなければ、侯爵様の所もうまくいかないんじゃないですか・・?」


 アリスは自分自身だけが動くのではなく、ヨハスの心を揺動させ、何か行動を促すように声をかけた。それは効果抜群だった。


「そ・・そうだな。確かに。」

「私・・今少し動こうと思っているんですけど・・お父様の力も借りれないですか・・?」

「そうか・・アリスは本当に賢いな。アリスの話を聞こう。」


 ヨハスはアリスの話に耳を傾けた。アリスはヨハスに話しながら窓の外の、ハクの姿を目に写していた。


(これで私はあの人を手に入れることができる・・!)


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