第七十六話:その後
「・・本当に散々だったわ・・」
「本当ですね・・。」
ルイザは自室でシイナと話をしていた。
ルイザの執務室でメイドは殺され、執務室は血まみれになった。首を切った騎士たちに急ぎ止血をさせ、メイドの死体をしかるべき場所にもっていかせた。だが執務室には血の匂いが充満しており、マリサは絶叫して意識を失い、ヨハスはしてやったぞ!と叫び、シンシアは目隠しされながらサキと共に退室させた。
シイナは目の前でメイドが殺されたことに衝撃は受けていた。
(あのメイドは私が本当はされる予定だったことをされたということね・・)
一歩間違えれば、自分もアタンやディーンと共に自分はああいう風に殺されていたことを実感し、恐怖も感じていた。
ブルっと寒気がしたので、身震いをしているとルイザがそっと抱きしめてくれた。
「シイナ・・本当にあなたが生きていてくれて、無事でいてくれて良かった。ニックにあなたが捕らわれたと聞いた時、どうしようかと思ったもの・・アタンやディーンが時間を稼いでくれていると聞いてはいたけど・・。」
「ルイザ様・・。私も生きた心地はずっとしませんでした。ヨハス様とマリサ、そしてアリスは確実に私を殺そうとしていました。そして殺した後の後釜はマリサがなる予定でした。」
ルイザは深くため息をついた。
「私の側近になって、次は私を殺そう・・というわけね。分かりやすいわ・・。」
「ルイザ様の側近である私が邪魔だったんでしょう。ルイザ様がいない今が丁度良いタイミングだったのかもしれません。」
「・・・本当にそんなことはさせない。もう、こういうことは無いようにするから・・。疲れたでしょう。今日は本当に、ゆっくり休んでほしい。」
「・・ありがとうございます。」
シイナはゆったりとした笑顔を見せた後、自室へ入って行った。
そんなシイナを見送った後、ルイザは自室のソファに座り、今日屋敷で起こったことを振り返っていた。
メイドを殺してからのヨハスは対応や発言は酷いものだった。ルイザ自身、いくらなんでもこのように殺すことは考えていなかったので、ヨハスを嗜めるために声を挙げようとした。だが。その前にヨハスは高らかに笑ってルイザへ同意を求めてきた。
「はは!僕はやってやったぞ!僕をだましたメイドへの処罰はこれしかないだろう!ルイザ。」
メイドが倒れていた場所をチラチラ見ながら誇らしそうにルイザに話しかけるヨハスを見て、ルイザは吐き気がした。
(自分が指示を出して動かしていた使用人たちを、こうもあっさり裏切るとは。)
ルイザはずっとそのことを思っていた。
一見、何も知らなければその時のヨハスは本当にメイドに騙されていたのかもしれない。そう思わせる発言、行動であった。しかし、自分たちはメイドとヨハスたちの関係を知っている。関係を知っているからこそ、この対応は気分が悪かった。
今回殺されたメイドはガスティン侯爵家から派遣されていたメイドだった。そのため、メイド自身も命を落とす覚悟はあったのかもしれない。けれど、少なくともこのような無残な死に方ではなかったはずだ。
(そして・・彼女は何かを私に訴えようとしていた。もしかして・・ハクのように家族の件で脅されてここまでやってきていたなんて・・ことは無いでしょうね。)
ルイザはずっと先ほどのメイドとヨハスのことを考えていた。
「名演技でしたわ、ヨハス。」
「そうだろ。僕も焦ったよ。まさか、このタイミングでルイザが帰ってくるとも思ってなかったし、バレるかと思った。」
自室でヨハスとマリサは話していた。
今回の作戦は失敗に終わったが、作戦内容自体はルイザにバレていないと考えていた。
「私も驚きました。でも一番驚いたのは、あそこで首を落とすことでした。衝撃過ぎて、素の叫び声が出てしまいました・・。」
「そうだろう。僕もまさか首を落とすとは思っていなかったんだけど・・。それでも、彼女はここで死ぬべきだった。何かをルイザにバラす前に、話すことができなくなる方が楽だからな。」
「そうですね、死人に口なしとはよく言われたものです。」
二人はにこやかに笑いながら話を進めていた。
「今後はアリスのフォローですが・・、ガスティン侯爵家から来てもらったメイド達をアリスに専属にするということで良いですか?」
「うん。そうしよう。アリスは自分が狙われたということが怖くてしょうがないからメイドを増やすことに決めたと言って、今後3人いるだろう。3人と・・。」
ヨハスは少し考えた後、閃いたように話した。
「今日、証言をしたサキというメイド。あれをアリスの専属につけておくのはどうだい?サキの証言で更に僕たちは窮地に立たされた。でも端から見たら彼女は勇気があるメイドとして称賛に値するだろう。そのメイドがアリスについていたら油断するんじゃないか?」
「良いですね。そうしましょう。ヨハス。何かあればサキに押し付けられますしね・・。」
二人は今後の作戦を練りながら、赤ワインを飲み始めた。




