第七十一話:緊急事態
ルイザとシンシアは馬車の中で色々なことを和気藹々と話していた。今日あったパーティでの出来事や、王族についての話など話は尽きることがなかった。
そんな時、馬車の窓をノックし外からハクが話しかけてきた。
「ルイザ様、シンシア様!緊急の連絡がきています!」
ルイザとシンシアは顔を合わせ頭に?を浮かべながら窓を開け始めた。
「・・?何かしら、一体。」
「そうですね・・。」
ルイザが窓を開けると、外には馬に乗ったニックがいた。
「ルイザ様!緊急事態なんです!シイナさんが殺されてしまうかもしれません!!」
「「はあ!?」」
2人は驚き、声が裏返ってしまった。
「一体どういうことなの!簡潔に話して!!」
「はい!簡潔に話すと、ヨハス様が冤罪を企ててシイナさんを嵌め、ルイザ様がいない間に処分しようとしてます!」
「まだ処されてないでしょうね!!」
「はい!今、アタンさんとディーンさんが時間稼ぎをしてくれています!ですが、今ヨハス様は伯爵代理として動いており、私たちは使用人なので長時間は難しいと思います!お願いします!早く帰ってきてください!!」
ニックは叫ぶように話す。ルイザは眉間に皺が寄ったのを感じた。
(伯爵代理はそんなことをするための権力じゃないでしょう・・)
「ヨハス・・あいつ!!殺す!!」
ルイザは心の声と実際の声が逆になってしまった。その声に合わせてシンシアは突っ込む。
「お母様!まだ殺してはいけません!まずは絶望を味合わせてからです!!」
「そうね!!!ニック!」
ルイザが恐ろしい言葉を発したが、それよりもシンシアが恐ろしい言葉で制す。その言葉にハッとしたルイザはニックを呼び、馬車に乗るよう命じた。
「え!」
「あなたは馬車で帰ってきて!私は早く帰るために馬を借りるわ!」
ルイザはニックが乗っていた馬にひらりと飛び乗り走り去っていった。
「お母様に1人でもいいから騎士は着いて行って!」
「はい!」
シンシアは騎士に伝え、1人馬車の列から離脱してルイザの後を追った。
ニックはずっとルイザの背中が見えなくなるまでずっと見つめていた。
「はぁ・・本当に間に合ってほしい・・。」
「ニック、お疲れ様。きっと大丈夫よ・・。」
シンシアはここまで走って伝えに来たニックの汗を拭いてあげた。ニックは少しほっとしつつも、手を擦り合わせルイザがシイナを助ける時間を稼ぐことができていることを必死に祈った。
「女神様、どうかお願いです。シイナさんを救ってください・・。僕が頼りないためこんなことになってしまい申し訳ありません。どうか・・女神様・・・。」
シンシアは、おでこを床につけ窓の外に向かって拝み始めたニックの背中をさすり、慰めた。
その時部下のメイドは必死にシイナが冤罪である証拠を探していた。最初はシイナに処分が下されるまで時間を稼ごうと思っていたが、騎士団が動いたことを知り、自分にできることは冤罪の証拠を探すことであると考えたからだ。
「毒薬をどうしてこれだと分かったのか・・そもそもアリス様は本当に毒薬を飲んだのかしら・・。こんな短時間で毒が分かるはずなんてない・・。断定ができるわけないのに。」
必死だった。まずは毒を盛られた張本人であるアリスの様子をうかがうことにした。
天井裏に入りこみ、アリスの部屋の上まで来て隙間からそっと室内を覗いた。アリスは元気に鼻歌を歌いながら何かを書いているところだった。
目を凝らして見ると、ここの屋敷の人間の名前を書いてある、関係図のようなものを自分で作成しているようだった。
「ふんふふーん。これで目障りなシイナはいなくなるわ。後は作戦のとおりね。」
「!」
(やっぱり、この人は毒を飲んでいない!となるとまずは医者に診てもらって、何も異常がないことをみてもらうか・・。)
ただ、これだけでは証拠として弱いことは分かっていた。
(何か他に・・ないかしら・・。)
探していると、シイナが仕込んだとされる毒薬と同じものがアリスの机の上に置いてあるのがわかった。
(これだ!)
メイドはもう1つの証拠を見た後、ルイザが帰還した時に調べてもらえるように頼み込むことにした。
(後は、誰かがシイナ様が冤罪であるということを発言してもらえたら嬉しいんだけど・・。)
メイドは考えた。そして思った。
(私がしよう・・!)
と。
自分が色々なところで動いていることを知っており、シイナがヨハスに命じられ本日のみアリスのメイドになったことは知っている。自分はその目撃情報を偽装することができる。
メイドはシイナが1人で紅茶をいれていないことを知っていた。




