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夫に騙されて死んだ元女騎士、次こそ愛娘と共に幸せになります!  作者: モハチ
第二章:春

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第六十九話:使用人

「はあはあ・・」


 ニックは膝に手を当て柱に全体重をかけもたれかかって、乱れた息を整えていた。

 全力疾走をしてやっとクレアトン騎士団の練習場に到着していた。


「・・アタンさんと、ディーンさんはどこだろう・・。」


 キョロキョロと周りを見渡す。見渡すと、訓練を終えたばかりの体格の良い男たちが上半身裸になって汗をぬぐう姿しか見えなかった。


(ぐう・・筋肉男だらけで分からないし、・・見えない・・。むさ苦しいな・・)


 ニックは目を凝らしてじっと男たちを見つめていた。

 そんな時、誰かが後ろから声をかけた。


「・・誰を探してるんです?」

「ああ、アタンさんとディーンさんです。男だらけで分からなくて・・。」


 ニックは声をかけられていることよりも、探すことに集中していた為無意識に質問者に対して返答をしていた。


「そうですか・・後ろを見てください。」

「え、後ろ?ってえええ!」


 言われるがままに振りむくと。そこには顔をタオルで拭きながら笑っているディーンが立っていた。


「ああ!ディーンさん!!」

「ふふ。お探しのディーンです。一体どうしたんですか?」

「うわあああん!ディーンさん!」


 ずっと心細かったニックはディーンに抱き着いた。先ほどあんなにむさ苦しくて嫌だなと男の上半身にもかかわらず、わき目も降らずに泣き着いた。


「うわあ・・、ちょっと・・何なのさ。急に泣き出して・・。」


 泣き声に気づいたアタンがディーンの所へ近づいてくる。


「どうしたんだ?ディーン。」

「あ、団長。なんかニックさんがここに来て、俺に抱き着いて泣いてるんです・・。」


 ディーンは腰に抱き着いているニックを指さす。


「あ、本当だ・・。」

「うわーん!助けて下さい!!」


 ニックが落ち着くまでに1分ほど時間がかかった。


「それでどうしたんですか。一体。」

「そうなんです!緊急事態なんです!シイナさんが!連れていかれちゃったんですヨハス様の策略に嵌められて・・。」

「「はぁ!?」」


 2人は驚き、そして聞き返した。


「詳しく教えてください!一体何が会ったんですか。そしてどこに連れていかれたんですか!!」

「ひゃい!」


 2人の迫力ある剣幕に少しビビりながらも、ニックは一生懸命身振り手振りを加えながら話し始めた。

 その内容を頭の中で整理しながら2人は聞いていた。


(・・おかしい。騎士団員に()()()()()()()をする者はいないはず・・俺の知らない騎士がいるということか・・・?)


 ニックの話を聞き終えた2人は立ち上がった。


「どちらにしてもヨハス様が実行するというのであれば、一介の使用人や騎士には止められる範疇ではない。・・でも、時間を稼ぐことはできる・・だろう?」


 アタンはニックを慰めるように話した。ニックは勢いよく頷いた。


「うう。はい!」

「ルイザ様はまだお戻りじゃないから、確実に冤罪を払拭することはできないだろうけど・・。俺らに今、できることをしよう。」

「はい!」


 ニックは立ち上がった2人を見て勇気が出てきた。心から安心した。


(良かった・・この2人が味方で良かった・・!)


 3人はとりあえず地下牢に向かうことにした。




 地下牢ではシイナが縛られたまま冷たい床の上に転がされていた。騎士たちに乱暴に牢の中に投げ入れられたため、メイド服は埃で汚れ、顔には打撲痕が残っていた。


「うう・・」


 口は依然とふさがれたままであり、うめき声しか出せない自分に腹が立っていた。


(くそ。やられた・・どうする。)


 シイナは冷静に自分の状況を把握し、これからどう対応するかを検討していた。


()()ヨハス様が大胆にやるということは、それだけ自信があるということ。裏のアリバイは作られ済ということね。あの女・・。やるじゃない。)


 シイナはマリサのことを思い浮かべていた。アリスは自分自身で手を下すタイプであるが、マリサは裏工作を行い人をはめていくタイプだ。今回自分はマリサに嵌められたのだと直感で分かっていた。


 ガチャ・・カタン・・


 小さい物音が遠くでする。足音を消してはいるが、誰かがこちらの方に近づいてきているのが分かった。


「シイナ様・・私です・・」

「!」


 来たのは部下のメイドだった。


「今、どうにかして助け出そうと思ってます・・待っていてください。必ずあなたを救い出しますから・・。」

「(コクン)」


 シイナは頷いた。

 その時、ガチャと大きな音が響いた。


 メイドはバっと暗闇の中に姿を消した。シイナは誰か自分たち側ではない誰かが近づいてきているのが分かり、目を細めて見ていた。


「シイナさん。」


 近づいてきたのはマリサとヨハスだった。

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