第六十八話:帰路
「皇后陛下、今日はありがとうございました。」
「ルイザ、こちらこそありがとう。また・・ね。もちろん、シンシアも。」
「はい。ありがとうございました。」
皇后と別れの挨拶をした後、2人は馬車へ乗り込み、クレアトン伯爵家への帰路へとついた。
「ああ、疲れた・・。シンシア。楽しかった?」
「はい!楽しかったです!・・お母様こそ。今日は大変だったんですか?」
「・・・まあまあね。」
馬車の中の中でルイザはぐったりしている。シンシアはその姿を見て笑った。
「ふふっ。お母様おかしいわ。すごく疲れてるみたい!」
「いやあ・・色々陛下と話していたけど・・衝撃的だったし、さっきのカイフェンのことで驚きもあったから・・。心がバクバクしっぱなしで疲れてるよ。」
「ふふ。・・私の予想ですけど、カイフェン様はお母様のことを凄く好いていそうな気がします。」
「ぶふっ」
ルイザはシンシアの言葉を聞いて吹き出した。それを見ながら更に笑みを深めたシンシアは話し出した。
「まあ、なんとなくですけどね。」
「・・そ・・そう。」
(何も知らないはずなのに、なぜシンシアは何かを知っているような笑いを・・?)
ルイザは心の中で思っていた。
「何をするんですか!」
「黙れ。アリス様の殺人容疑がかかっている、お前は今から地下牢行きだ。」
シイナがメイド長室で仕事をしていると急に騎士たちが押し寄せ、急にシイナを縛り上げた。その者たちの後ろからヨハスが後ろ手に手を組み歩いてきているのが見えた。
「ど、どういうことですか?」
「どうもこうもない。」
急な展開に戸惑いを隠せないシイナを見て、ヨハスは冷たく言い放った。
「シイナ。君のこと信頼していたのに・・残念だよ。まさかルイザがいない間を狙って、養子になったばかりのアリスを毒殺しようだなんて・・。」
「え!?」
シイナは驚いた。そんなシイナを見ながらヨハスは話を続ける。
「今日はルイザがいないから、アリスについてくれてただろう?だが、君の入れたお茶に毒が入っていたんだ。これを見てくれ。」
腹ばいになって押さえつけられているシイナの前に、シイナが入れたであろうティーポットと銀のスプーンを持ってくる。
「ほら、スプーンが変色した・・。君の入れた紅茶に毒が入っていることが分かったんだ・・。アリスは少し飲んでしまったからね・・。大事を取って今寝ているよ・・。可哀そうに。」
(嵌められた・・。)
シイナは悔しそうに顔を歪めた。ルイザがおらず、専属メイドがついてないアリスのためにメイド長として今日アリスについてくれないかとヨハスに命令されたため、1日着いていた。
昼食後のティータイムに呼ばれ、紅茶は入れたものの、アリスの目の前で作っており、毒をいれる隙なんて全く無かった。アリスは沢山飲んでいたが、毒の症状何て全く出ていなかった。
(しっかり言わなければ・・ここで何も話さないのは肯定することに等しい。)
シイナはしっかりヨハスを見て自身の潔白を伝えようとした。
「私はそんなこと・・ムグッ」
「・・言い訳は聞きたくないんだシイナ。君を地下牢に連れて行くよ・・。早めに審判を下そうと思っている。」
シイナは口を布でふさがれ、話すことができなくなった。
チラっと自分を抑えている騎士を見たが、見たことのない騎士だった。
(やられた・・!)
シイナは腕を縛られ、逃げられない状態にされてから地下牢へ連れていかれた。
ニックは焦っていた。
(やばいやばいやばい!ヨハス様が何か企んでいると思っていたが、これはやばい!シイナさんが殺されてしまう!)
ヨハス付きの執事になって情報を得るために自分なりに頑張っていたが、特に何もなく平和に過ぎていた為ニックは気が抜けていた。
(今日はルイザ様がいないからこそ気をつけなくちゃいけなかったのに!情けない!自分が情けない!)
ニックは騎士団の所へ走っていた。どうにかしてシイナの冤罪での処罰を防ぐために。
(少なくとも・・ルイザ様が帰ってくるまでは時間を稼がなくてはいけない!どうして騎士団はヨハス様の言うことを聞いたんだ!!)
ニックは少し腹を立てながらも必死に走った。
シイナが地下牢に連れていかれてから少し経ち、メイド長室の天井裏に隠れていたシイナの部下のメイドが出てきた。
(やばいわね。この状況。それにしてもあの騎士たちは一体・・?それとあの執事こんなことになる前に情報共有しておきなさいよ。使えないわね・・。)
メイドはニックに腹を立てながらこれからのことを考えていた。
(このままではまずい。とりあえず罰を止めるためにも時間を稼がなければ・・。)
メイドも動き始めた。
丁度ルイザとシンシアが皇后陛下と別れの挨拶をした時、クレアトン家ではシイナが殺されそうになっていた。




