第六十六話:合流
シンシアはエリックとバラ園で少し話をした後、二人で手を繋ぎガーデンパーティまで戻った。
「え!手を繋いでいくの?」
エリックは手を繋いでいるところを見てアワアワとする。
そんなエリックを見ながら、シンシアは少し不貞腐れたように答えた。
「・・だってエリックはなんか逃げそうなんだもん。」
「そ・・そんなことはしないけど・・。」
シンシアはエリックの手をぎゅっと握る。エリックはその手を見て再び大きく慌てふためいたが、シンシアは手を放すつもりはないことが分かったので大人しく着いていった。
(エリックが元気になって良かったけど、この子、目を離すとどこかに行きそうだしね。手を繋いだ方が楽よ。)
シンシアはエリックの姉になった気分で先を歩いた。エリックは少し俯き顔を赤く染めながら半歩後ろを歩いた。
パーティ会場に戻るとルイザとパトリックはまだ戻ってきていなかった。
「まだ私たちの親は帰ってきてないみたいね。」
「そ、そうだね。」
「もう!あなたには恥ずかしいところなんてないんだから!しっかり背筋伸ばして!自信もって!」
「うひゃい!」
シンシアに背中を軽くたたかれ、エリックは背筋を伸ばす。その姿を見てシンシアはにっこり笑った。
「うん。それで良いのよ。ほら・・私と一緒に同年代の人の所に行きましょ?私、社交界に顔を広めておきたいの。あなたも一緒に行こう?」
「うん。」
本当はパーティで顔を広めなくても良い、隅っこでお菓子でも食べておこうと思っていたが、シンシアに誘われたので素直に頷いた。
シンシアはその返事に気分を良くしながら、エリックの手を再度強く握って人の集まっているところに向かった。
「カイフェン・・そろそろ戻らないと。」
「・・・」
ルイザはカイフェンの背中を叩く。だが抱き着いたまま離れない。いい加減ずっと太陽が当たっている顔半分が熱くなってきた。
「もう!いい加減にして!」
ルイザが大きな声で叫ぶと渋々といった様子でカイフェンはルイザから離れた。
「・・分かった。」
「ふう・・。」
ルイザは肩を回しストレッチをした。背の高いカイフェンの背中に腕を回したので上腕のいつも使わないような筋肉をこの短時間で酷使した気がした。
「ほら、帰りましょう。」
「分かった。」
スッとルイザが手を出してきたので、その手を自分の腕に回し、エスコートの体勢を取る。隣を歩き出したルイザを見ながらカイフェンは小さい声で話しかけた。
「ルイザ、君がもし助けを必要なら、必要な時があったらすぐに俺に言ってくれ。君が助けを読んだら。俺はどこにでも駆けつけるから。いいね?」
ルイザはじっとカイフェンを見上げる。カイフェンは真剣な表情で前を見ながら話していた。
「あなたがそう言ってくれるの意外・・。」
「え!俺、そんな意外?ずっと思ってたよ!頼ってほしいって。でもほら君に旦那ができたから・・。」
「・・あのクソ旦那ね。」
「そう、そのクソ旦那。」
クソ旦那と言い合って2人はくすっと笑った。
「・・ありがとう。何かあったら連絡する。」
「おう・・。 何もなくても連絡くれてもいいけど・・。」
ルイザは頼りにならない夫よりもカイフェンに安心感を抱いていた。
2人がパーティに戻ると、子供たちと大人たちでグループが分かれ、和気あいあいと話をしているようだった。
「君の娘さんはどこだろうね?」
「うーん。」
キョロキョロと周りを見渡すとシンシアが紫色の髪色をした少年と一緒にいるのが見えた。
「あ、あそこにいた!」
「おお」
ルイザが指を差した方向に、銀髪がきらめくシンシアとその隣で恥ずかしそうにしながら会話に入っているエリックの姿が見えた。
「シンシア!」
ルイザが声をかけるとシンシアがバッとこちらを向く。ルイザを視界の中に入れると飛び切りの笑顔でこちらに向かって走ってきた。
「お母様!」
「シンシア!楽しそうに話をしてたわね。お友達ができたの?」
「うん!彼は先ほど話が合ったパトリックさんの次男のエリックっていうの。」
シンシアがエリックを紹介する。
「え!僕?」
シンシアに連れてこられたエリックは急に話を振られると思っていなかったのでビクっとした。改めてルイザを見た後、挨拶の形をとった。
「は、はじめまして。僕はエリック・デレクシアスと申します。」
「はじめまして。私はルイザ・クレアトンです。あなたのお父さんと元々同期だったの。よろしくね。」
ルイザは手を差し伸べる。エリックはドギマギしながらもその手を握り、握手をした。ルイザの後ろにいたカイフェンがエリックの視界に入ってきた。
「あ!カイフェンおじさん!」
「「!?」」
((カイフェンおじさん!?))
ルイザとシンシアの心の声が1つになった。
カイフェンは手を挙げ、カラッとエリックに笑いかけた。
「おう、久しぶりエリック。元気だったか?」
「はい!おじさんも元気そうで何よりです。」
「おじさん?カイフェンあなた、知り合い・・というか血縁関係・・?」
ルイザはくるっとカイフェンの方を向きなおし話しかける。そんなルイザを見てニコッと笑いながらカイフェンは話す。
「あれ?言ってなかったかな?・・俺、パトリックの弟。というか王族の1人なんだよね。ははっ」
「え・・えええ!!!」
ルイザはつい大声で驚いてしまい、急いで自分の口を抑えた。驚きのあまり目が点になった。




