第六十二話:会合
「私の話は・・」
ルイザは話し出した。今まで起こったことを。
シンシアにつけていた家庭教師であるフリーダ男爵夫人が教育虐待をしていたこと、ヨハスとの関係、そしてアリス、マリサが自宅に入ってきてクレアトン伯爵家を内部から壊そうとしている可能性が高いこと、すでに怪しいメイドがマリサを含め4人いること。
そして・・
「情報屋・・前騎士団にいたカイラスを覚えていますか?私はカイラスに依頼して調べたんです。メイド達について。そしたらガスティン侯爵家とファートン子爵が絡んでいました。ヨハスの生家と、先ほど辺境伯のとこでも話しが出たガスティン侯爵です。
そして更に情報として・・ガスティン侯爵家が王政を乗っ取ろうとしていることを知りました。」
ルイザは一旦話を区切り、一息ついた後、皇后をまっすぐ見ながら話した。
「皇后、今、王がこの席にいないのはそれが関係しているのではないかと思っています。ガスティン侯爵家の令嬢・・キャロル令嬢が来ているのではないですか?」
皇后は無言でその話を聞いていた。
その反応を見ながらルイザは話し続けた。
「・・私の考えではありますが、キャロル令嬢を第二妃にした後、そこから王政に入り込もうとしているのではないかと思っています。皇后派である私を殺し、クレアトン家を壊しヨハスに実権を持たせた後に・・。」
シーン。沈黙が流れる。皇后は黙ったままだった。
ルイザはごくりと生唾を飲んだ。紅茶を飲みたい気持ちはあったが、なぜか飲む気になれない、そんな気持ちだった。
そんなルイザを皇后は見て、にっこり笑った。
「そうなの。良く知ってるね。流石カイラス!ルイザにうまく伝えてくれてたみたいで助かったわ!」
「・・はっ?」
先ほどの緊張感はどこへやら、皇后はにっこり笑って手を叩いた。
「パトリック、先ほどルイザが話した通りだよ。ガスティン侯爵はキャロル令嬢を我が夫に第二妃として嫁がせようとしている。王に2人貴族派と王侯派の妻を建てようとしているわけだ。もちろん、貴族派のトップはその嫁の父、ガスティン侯爵が担うだろうけどね。王侯派の有力貴族を減らした後にこの国を乗っ取ろうとしているわけだ。」
パトリックは頷く。
「ルイザ、ごめんね。私の情報は君たち信頼している人たちが情報を得に来たら少し流すように事前にカイラスに言っていたんだよ。ルイザ、君が聞いてくれたんだね。依頼した甲斐があったよ。」
ルイザはポカーンとしていた。
(知ってたんかい!・・まあこの皇后が知らないはずはないか・・)
と心の中で突っ込みながらも気持ちを落ち着かせて聞いていた。
「でも私は知らなかったよ。君の夫、ヨハスがそんな最低な男だったなんて。早く離縁したらどうだい?そのほうが楽だろう?」
「あ、ああ。そうなんです。最低な人なので離縁はしたいですが・・今少し泳がせています。ボロを出させた後に思いっきり処しようと思ってますので・・。これは私の娘、シンシアも同じ考えです。安心してください。許すわけありませんよ。」
ルイザは不敵な笑みで笑った。それを見ながら皇后は顎に手を当て言った。
「シンシア嬢もか。良いね。肝が据わってて。増々気に入ったよ。・・ほしいなあ。」
皇后はにっこり笑う。
パトリックは手を挙げた。
「いや、義姉様。俺の息子にも良いと思っているので!そこは正々堂々と戦いましょう。」
「そうか。パトリックの所も良いな。・・まあそれは置いといて。」
皇后は話し出した。
「共有しておきたいことが1つ。今、王は確かにキャロル嬢と過ごしている。だがそれは彼女をこちらに取り込むためにしていることだ。」
「「え?」」
「彼女の育ちも複雑でね。父親からの言葉に散々傷ついてきた人だ。実はこの結婚もしたくないと話が王と私にあってね・・。それならこちらに付いてくれないかと少しずつ口説き落としているところなんだ。」
「そうなんですか。」
確かにキャロル令嬢の性格や考え方は父親とは全く似ていない。似ているのは髪色、目の色だけ。そんな彼女はこの王政にも、皇后に対立することも難しいだろう。父親の呪縛から助けるためにもその方法が一番良い気がした。
「それで、私はどうしたらいいですか?こちらは泳がせて都度彼らを孤立させ、逃げ道のない袋小路の中に入れた後、処す・・と考えていますが・・。」
ルイザは今考えている内容を簡単に話した。
「そうね。私もそんな感じで考えているわ。ただガスティン侯爵を処すタイミングはキャロル令嬢の意思を確認してからにしようと思ってる。ヨハスたちはどうでもいいが、ガスティン侯爵の件については一緒に合わせてほしい。」
「分かりました。」
パトリックは手を挙げた。
「義姉様。俺は?」
「あなたの所はその怪しい者たちを捕まえて、早めに処してほしい。こちらのタイミングと合わせなくて大丈夫。・・国防を担う辺境伯を狙うなんて。あいつ良い度胸しているじゃない。」
皇后の目に苛立ちが見え、語尾が強くなっていった。本当は自分のお気に入りであるルイザ、そして義弟にちょっかいを出すガスティン侯爵に腹が立って仕方がなかった。
「皇后・・」
小声でカイフェンが声をかける。
ハッと皇后は気を取り直して話し出した。
「今日は来てくれてありがとう。これで一応情報交換は終わりよ。これからも適宜話しましょう。よろしくね・・。あ、そうそう、パトリックは王が話をしたいって言ってたから残って。
カイフェン、ルイザをさっきの庭園まで案内して。」
「はい。」
カイフェンはルイザの前までやってきて手を差し出した。
ルイザはその手を黙って取った。




