第六十一話:辺境伯の話
「痛いなあ。全く。君は足癖が悪い。」
「あなたこそ・・。皇后と一緒のこと言わないでくれる?」
「あららら、あっちの方が先に言ってたか~参った!」
蹴られた足をさすりながらパトリックは話す。
(痛くないくせに、痛いフリをして・・全く。)
ルイザは横目でジロリと睨みつけていた。
パトリックは急に雰囲気を変え、ルイザの耳元でこそっと話し出した。
「君も今日、皇后に話に来たんだろ?ガスティン侯爵について・・。」
「っ!」
ルイザはバッとパトリックを見た。パトリックはにやりと笑いながら小声で話を続けた。
「俺の所にもさ、来てんだよ。怪しいやつら。まあ気づいたのは最近なんだけどさ・・。俺の息子を虐め?っていうと優しく聞こえるけど・・まあそういうことをしていてさ。俺のとこ、家庭崩壊しちゃいそうだったんだよ?妻が発狂してそいつを殺そうとしちゃってさ。長男は敵を倒しに俺は行くとか言って出兵の準備を始め出したし。」
「・・・」
(自分の所と一緒かもしれない・・。そんな濃い家族はいないけど・・。)
ルイザは思いながら話を聞いていた。
「俺もちょーっとだけ痛い思いをさせてさ、黒幕を聞きだしたんだけど・・それがどうも大きな事件に繋がってそうでさあ・・。これは兄貴たちに伝えなきゃいけないと手紙を出したら今日のパーティに誘われたんだよ。これは何かあるからだよなぁって思っててね。」
パトリックは腕を頭の後ろに組みながら話す。ルイザは呟くように話した。
「はは。私の所と一緒ですね・・」
「まじか。俺の所と一緒かあ。てことはシンシアちゃんもそういうことされたってこと?」
「まあ・・はい。シンシアもされてました。今でも思い出すと腹が立つ。早く黒幕をどうにかしないと・・。」
「そっか。そうなるよなあ。・・俺も。」
2人は少し遠くを見つつ、血管が浮き彫りになるほどの力で手を握っていた。2人ともその時のことを思い出していた。
2人の視界にヌっとカイフェンが現れた。
「うわっ」
「うお、カイフェン。」
ルイザとパトリックはその登場の仕方に少し驚いた。そんな2人にカイフェンは頭を下げ言った。
「お久しぶりです、お二人とも。パトリック様とルイザ様、お二人を皇后さまがお呼びです。・・温室でお待ちになっています。」
「おっけい。待ってたよ・・。皇后だけ?兄貴は?」
「王様は、別の貴族の対応に追われており、現在話すことはできません。」
「ふーん。別の貴族ねえ。・・了解。じゃあ行こうか。」
ルイザは頷き、2人の後を追うようにして歩きだした。
その時前から視線を感じ顔を上げるとカイフェンがじっと見ていた。
「久しぶり・・ルイザ。元気だった?」
「・・久しぶり、カイフェン。あなたこそ。」
「うん。」
言葉数は少なく、それだけを話した後2人の間に沈黙が流れた。
そのまますぐ、温室に着いた。
温室は季節の花々や木々に囲まれており、その真ん中に丸いテーブルが置かれていた。皇后はもう着席しており、温かい紅茶を飲んでいるようだった。
「遅くなりました。皇后さま。いや義姉様と呼ぶべきですかね?ここでは。」
「どちらでも構わないわよ、パトリック。元気そうで何より。ルイザも座って。」
「はい。」
2人は皇后に促されるようにして着席する。着席したのを確認した皇后は話を切り出した。
「まずはパトリックから聞きましょうか。教えて?」
「はい。」
パトリックは紅茶を少し飲んだ後、一呼吸おいてから先ほどルイザに言った内容を詳しく話し始めた。
体術、知識の家庭教師として入れた貴族がガスティン侯爵家の差し金であり、次男の精神状態を壊したこと。家庭教師を拷問したら他にも手下が入ってきていることが分かり調べたらメイド達の中にも怪しいやつがいたこと。その者たちの目的は辺境伯を内部から壊そうとしている可能性が高いことを話していた。
「俺の所を狙うということは、国防を壊すこと、そして現王の弟を殺すことに繋がる。それはつまり、今のこの国を壊すことに直結すると考えている。このことに対して王政の意見を聞きたくここまでやってきた。」
「・・・そう。ありがとう。」
皇后は紅茶をゆっくり飲んだ。
「私の返答は、ルイザの話を聞いてからにするよ。・・同じ内容かもしれないからね。同じことは2回も言わなくていいだろう。」
スッと皇后はルイザを見た。
ルイザは生唾を飲み込んだ。
「さあ、ルイザ。ルイザの話を聞かせてくれる?」
「はい・・。」
ルイザは口を開いた。




