第六話:情報屋
執務室で、ルイザは現在の領地の状況把握と書類整理を始めた。
(確かこの時は冬を迎える準備中で、備蓄の整理をしていたのよね。この秋は豊作だったからそんなに心配はなかったけど。)
書類を整理しながらルイザは考える。
(ヨハスはなぜ私を裏切ったのだろう。私に会う前から恋人だったとは言っていたが、私たちは政略結婚。元々ヨハスの方からの婚姻の打診であったのに。騎士仲間にいる脳筋よりも優男のほうがマシだと思った自分がバカだった。いやあいつと結婚してなければシンシアが生まれていないわ。それだけは感謝しなければ・・)
ヨハスは元々ファートン子爵家の三男。
長男が爵位を受け継ぐため、次男、三男は他の貴族へ婿養子として入るか、騎士や文官になるしか道はなかった。
ヨハスは体が弱く騎士にはなれないどころか知識も豊富では無かった為文官も適職ではなかった。
それを見かねたファートン子爵が何とか婿養子になれるよう手を打っているところ、ルイザが爵位をもらったので早速ルイザ、カウフマン侯爵家に打診。
ルイザは好きな人もいなかったのでこれ幸いと婚姻を結んだのだ。
頭の中に疑問を巡らせているとドアをノックする音がした。
「ルイザ、僕だよ。推薦状を持ってきたよ、入るね。」
ヨハスが執務室の中に入ってくる。手には5枚推薦状を持ってきていた。
「ファートン子爵、僕の兄の領地で働いていた人たちなんだ。貴族の家で働いていた経験があるからきっと君も気に入ると思うよ。」
といい、ルイザの机の上に5枚の書類を並べた。
この時期に入った新人メイドはマリサが頭角を現してから金魚の糞のごとく、マリサの下につく下級メイドとして動いていた。
(マリサだけではなく、5人とも怪しいな。)
「ヨハス、ありがとう。とりあえず見てみるから。また後から話すよ」
ルイザは書類を手に取り、ヨハスに早く退室するように声をかける。
ヨハスはその対応に面を食らったように言った。
「僕の兄からの推薦状なのに、そんなにじっくり見る必要がある?」
見るからに早く推薦状を返却してほしいようだった。
ルイザはほかの書類を手に取り、ヨハスに冷たく言い放った。
「今、他の書類を整理しているのが見てわからない?すぐにメイドを入れなくちゃいけないわけでもないし、まずはしっかり読ませてくれる?」
ヨハスは言い淀み何か言いたげな顔をしたが、
「わかった」
とすごすごと執務室から退室していった。
(・・なんだあの言い方。あんな風に僕を扱うことは無かったのに・・メイドが5人入ることくらい軽く見てもらえれば良いのに・・僕が良いと言っているんだからいいじゃないかクソッ!)
ヨハスは先ほどの冷たいルイザの態度にイライラしながら自室へ戻っていた。
(・・・でもまあ、そんなに変な推薦状でもないし、調べない限り大丈夫だろ。マリサ~早く気軽に会える距離にいてほしいよ!)
イライラを抑えるため自分にとって有利な状況を考えながら自室へと入っていき、マリサの家を訪ねる手はずを整え始めた。




