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夫に騙されて死んだ元女騎士、次こそ愛娘と共に幸せになります!  作者: モハチ
第二章:春

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第五十八話:目をつける

(クソクソクソクソ)

 

 アリスは焦っていた。絶対にうまくいくと思っていたが、シンシアは若い護衛騎士に助けてもらって何事もなかったかのようにガーデンパーティへ行ってしまったからだ。


(この作戦は大成功だと思ったのに。)


 そう思いながら、アリスはマリサと共に踵を返し自室へ戻っていた。もうすぐ部屋に入れるとドアノブに手をかけた時、後ろから声をかけられた。


「すみません、アリスお嬢様。少しよろしいでしょうか。」


 後ろからシイナが声をかける。アリスは小さくチっと舌打ちした。


(クソ。今度はルイザのメイドか。)


 そう思いながらも笑顔を作って後ろを向く。そこにはシイナがいつもの張り付いた笑顔で立っていた。


「ルイザ様より、命を言いつけられていますので()()()()()()()()にお聞きさせていただきます。どうしてシンシア様が階段から落ちたのか・・。理由をご存じないでしょうか?」

「え?理由ですか・・・?私、お姉さまに謝罪の言葉をかけたら、踏み外したのか、お姉さまは勝手に落ちて行ったような気がしました。理由・・どうなんでしょう・・?それよりも無事でよかったですね。安心しました。」


 にっこりと、有無を言わさないとばかりの表情でアリスは話す。その表情を見たシイナは思った。


(分かっていたが・・本当、この人は曲者だな・・。それならば・・)


「それなら、マリサ。あなたから見てどうでしたか?」

「え?」


 シイナは目線をアリスの背後に立っているマリサに向ける。マリサは自分に問いかけられるとは思っていなかったため驚いていた。マリサは驚きを取り繕うように話し出す。


「・・私はアリスお嬢様についていたので、よくわかりません。すみません。私も少し気を取られていたので・・」

「気を取られる?それはなぜですか?」

「・・」


(失言してしまった。ヨハスに気を取られてしまったという流れになりそう。言わなければ良かった。)


 マリサは言葉に詰まり焦っていた。その時、シイナの後ろからヨハスが声をかけてきた。


「おーい。2人とも。先ほどは驚いただろう?大丈夫だったか?・・シイナ、どうしてこんなところに?」


 ヨハスは小走りで近寄ってきた。シイナが詰問する前にアリスたちと合流するはずだったが、シイナがあまりにも早く追いかけて行ったことと自分は人目を気にして遠回りしたことが関係して合流が遅くなったのだ。


(チッ。ヨハスがもう来たか・・。)


 シイナは心の中で舌打ちをしながらヨハスを見た。


「ルイザ様から命をうけており、こうしてシンシア様が階段から落ちた時の状況について尋ねていたのです。」

「そうだったのか。でも彼女たちも被害者だろう?目の前で人が落ちるという、恐ろしい場面を見てしまったんだ・・。彼女たちを休ませてあげてほしい。」


 ヨハスはアリスとマリサの前に立って訴えた。


(ルイザ様の命とは言え・・領主の夫か・・。はあ。()()邪険にはできない・・)


 シイナは頭の中で考え、悔しさを表情には出さずにヨハスへ伝えた。


「・・分かりました。それではそのようにルイザ様にも報告させていただきます。失礼します。」


 シイナはスッと礼をした後、踵を返してその場から立ち去った。

 その姿が消えるまでヨハスはアリスとマリサの前に立ち警戒していたが、消えた後は力が抜けたように膝に手を当てホッとした表情で長いため息を吐いていた。


「ああ~良かった。ごめんね、助けるのが遅くなっちゃって。大丈夫だった?」

「お父様・・あ、ここは廊下ね。とりあえず中に入りましょう?」

「そうね。開けますね。」


 3人はそれぞれホッとした様子でアリスの部屋に入った。


「あーシイナは僕、苦手なんだよね。ルイザよりもなんていうか、鋭い気がする。最近のルイザも変わったけど、あの人はずっとあんな感じだしな。」

「シイナ・・ね。そう思えば、確かに。彼女が居なければもう少し楽に、私がルイザの専属メイドになれるんじゃない?仮になれなくても、毒を盛れるかも・・。ヨハス、今がチャンスなんじゃないかしら?」

「そうだね。そうしようか・・。今日が一番人の配置整理がしやすいし、シイナにでっち上げの罪をかぶせよう。」


 ヨハスとマリサが今後のことについて話し合っている。それを不貞腐れた様子でアリスは聞いていた。


(ああ、もう少しだったのに・・。後もう少しであの子は大けがを負ってパーティには行けなくなっていたのに。あれは護衛騎士のせいだわ。護衛騎士に目をつけておかなくちゃ・・。)


 アリスはアリスで護衛騎士の方へと関心が向いていた。

 

 目をつけられたとは知らず、ハクは悠々と馬に乗りながらシンシアの護衛のために馬車の後衛をしていた。


(今日はいい天気だな~)



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