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夫に騙されて死んだ元女騎士、次こそ愛娘と共に幸せになります!  作者: モハチ
第一章:始まりと冬

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第五十一話:怒り

「皇后様。クレアトン伯爵より手紙が届いています。」

「何?クレアトンだと?」

「はい。確かにそう書かれています。」


 王宮、皇后の自室に1通の手紙が届いた。

 皇后は書類を眺めながら紅茶を飲んでいたが、そのカップを置きメイドの方を見た。メイドはそっと手紙が乗った盆を差し出した。皇后はその手紙を取り、封蝋を見てニヤッと笑った。

「くくっ」


(本当にクレアトン伯爵家の封蝋だわ。)


 皇后は笑った。

 久しぶりにあの愛しいルイザからの連絡だ。

 封を開け、手紙を読むと謁見許可依頼の内容だった。


(久しぶりにルイザに会えるのね。そうだ、ルイザには子供ができたんだったな。確か、シンシアと言ったか?その子供にも会いたいものだ・・。どうしようか。)


 皇后が1人で笑っていると後ろから護衛騎士のカイフェンがヌッと出てきた。


「何をお一人で笑ってらっしゃるんですか。」

「おお、カイフェン。見てよ。ルイザから手紙が来たの。」

「!」


 カイフェンの目がカッと開いた。スタスタと皇后に近づき、食い入るように手紙の内容を後ろから見つめる。


「今度謁見したいと申し出があったんだ。ほれ。カイフェン、あなたも会えるぞ。」

「・・(ゴクン)」


 カイフェンは見るからに嬉しそうだった。


「あの《《男》》はルイザには合わないと思ってたんだ。あなたも知ってるでしょ。あの情報。あれは本当だよ。」

「・・・・」


 あの男というフレーズを聞いた瞬間カイフェンの顔は曇る。その顔を見て皇后はにやりと笑い、何かを言いかけたがやめた。


(自分で何とかする男だもの。カイフェンは。皆まで言わなくても良い。)

 

 そう思いながらカイフェンを見る。カイフェンは真剣な表情で何かを考えているようだった。

 皇后は知っていた。ルイザの夫ヨハスが浮気をし子供を別に作り、そしてクレアトン伯爵家を乗っ取ろうとしていることを。王家簒奪を夢見ているガスティン侯爵がヨハスと手を組んでいることを。

 そしてカイフェンも知っていた。情報屋カイラスとの連絡はカイフェンが行っていたからだ。情報屋から仕入れた内容は全てを通して仕入れていたからだ。


「・・どうするカイフェン。」

「俺も・・ルイザに会いたい・・です。そして・・助けたい、力になりたいです。」


 ぼそぼそっと気持ちを吐露するカイフェンをみて皇后はにんまり笑った。


「もう少しで春になる。春の早い時期にガーデンパーティを装ってルイザを呼び、そそこで話をすることにしよう。謁見として呼び出すと何かを・・相手に気づかれては困るからな。」

「・・分かりました・・。」


 カイフェンは下がった。皇后は窓の外を見た。王都は雪一色になり、銀世界が広がっている。ここから見る景色が好きだった。故に汚い手を使ってこの王国を壊そうとする輩が嫌いだった。


「首を長くして待っていろ、ガスティン侯爵・・易々としてやられる私ではないんだよ・・。」


 皇后は不敵に笑った。



「はっくしゅん!」

「・・大丈夫ですか?ルイザ様。」

「うん。大丈夫。昨日薄着しすぎたかしら。」


 クレアトン伯爵邸はつかの間の平穏を味わっていた。数日前にシンシアとアリスの騒動が起きてからアリスは特に騒ぎを起こすこともなく静かに過ごしていたからだ。その他のメイド達も特に何かをして来ることもなく、毒薬が中に入れられることもなく平和だった。

 シンシアはヨハスにお金を出してもらいドレスを3着、ルイザ監修のもと作ることになり、毎日楽しそうだった。


「お母様、嬉しい!」


 と笑顔でこちらを見てくれた瞬間は忘れられずルイザの脳裏に焼き付いている。

 

 ルイザは外を見る。雪により外には銀世界が広がっている。

 でももうすぐ冬は終わり、暖かい春がやってくる。


「今年は備蓄も十分あって、領民もお腹を空かせることもない良い冬だった。と言いたいわね。」

「そうですね。まあ備えは良かったです。」


 シイナと笑いあいながら仕事を行っていた。

 そんな時、メイドが1人部屋を訪ねてきた。


「ルイザ様、シイナ様、報告に参りました。」


 そのメイドはヨハスにつけていたメイドだった。


「昨夜、ヨハス様が単独で屋敷を抜け出し誰かに会っていた模様です。その方はガスティン侯爵ではないかと・・。」

「どうしてはっきり誰かと言えないのですか?」


 シイナが詰める。メイドは少し困ったように話した。


「その方の背後に2人の護衛がついており、その護衛の殺気が強く確認できる距離まで近づくことは危険だと判断したためです。」

「・・・分かりました。」

「そんな殺気を出せるほどの者が護衛についているということはガスティン侯爵で間違いなさそうね。そんな夜更けに会いに行くなんて。よっぽどバレたくないんでしょう。」

「侯爵と会っているということは、これから何か動き始めそうですね。」

「・・そうね。また一騒動があるかもね。」


 メイドの報告を聞き、ため息をついた。

 その時セバスが珍しく少し焦った様子で報告に来た。


「ルイザ様!報告があります!!」

「何、セバス。どうしたの?」

「・・あの孤児院が焼けました。」

「え?」

「あの、アリス様を預かっていた孤児院が全焼し、そこにいたすべての者がいなくなっているか死んでいるのです。」

「「「!」」」

「先ほど速報として伝達がありました。これから新聞にも掲載されるそうですが・・。理由は不審火。特に理由は分からないそうです。警察としてはこのところ寒かったため、火を消し忘れたのではないかとのことですが・・。」

「・・あり得ないわね。だってあそこの修道院は暖炉だけではなく、全体が石造りになっているし、火を消し忘れることはないようにチェックが入っていたもの。仮に火を消し忘れていたとしても全焼することは無いはずよ・・。」

「・・おっしゃる通りです。」

「死者数は?」

「・・2名とのこと。」

「は?2名?」

「確認されたのが2名とのことで・・詳細は不明です。」


 セバスが話す。ルイザは眉間に皺を寄せ話を頭の中で整理していく。

 

「怪しすぎる。多分これは・・絡んでいるわね。ヨハスも、アリスも、黒幕も・・・。」

「「「・・・」」」


 執務室に重い沈黙が流れた。一気に平和だと話していた雰囲気は消え去った。

 ルイザは手を握り絞めた。手からは血が少し流れた。


(何も罪のない領地民に手を出すなんて・・ありえない・・。)


 ルイザの瞳に怒りが込み上げてきた。

 


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