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夫に騙されて死んだ元女騎士、次こそ愛娘と共に幸せになります!  作者: モハチ
第一章:始まりと冬

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第四十八話:立ち振る舞い

 ルイザはシンシアを抱きしめる。シンシアはルイザの胸の中で泣き始めた。


「どうしたの?シンシア・・何があったの?」

「・・・お母様と初めて作ったドレスを・・アリスが欲しいって・・」

「・・・うん・・」

「でも私は()()姉として、我慢して渡そうと思ったんだけど・・お母様とお揃いのドレスが取られちゃうと思ったら、なぜか涙が止まらなくなってきちゃって・・。お母様と一緒に着たかったから・・」

「そうだったのね・・。最初に渡そうとしたのはどの服なの?」


 スッとシンシアは指を差す。普段着で最近シンシアが着ていた服ばかりだった。


「良い服ばかりじゃない。これ何て、王都で有名なデザイナーが手掛けたものだわ。・・偉いわねシンシア。あなたは良い姉で間違いない。本当に偉いわよ。」

「・・お母様。グスン。」


 ヨハスは部屋の入口に立ったまま何が起こっているのか状況を確認しようとしていた。


(これは一体・・?アリスではなく、なぜシンシアが泣いている・・?)


 これからシンシアを悪女として仕立て上げる予定だった。アリスの愛らしさ、優しさを前面に出し、シンシアは伯爵令嬢としてふさわしくないという世論を作り上げる予定だった。

 そのため、これからの伯爵邸での生活、特に使用人に見せる姿は世論を作り上げるためにはとても重要だった。


(なのに、これは逆ではないか・・?)


 アリスはシンシアとルイザのやり取りを眉を吊り上げた恐ろしい目で見ており、手はぎゅっと力強く握っていた。後ろに立っていたマリサは、目の前で起こったことについてついていけてない様子で、ヨハスに助けを求める目を向けてくる。

 シンシアはルイザに抱き着いて泣いており、側にはメイドのレマが付き添い宥めている。


(まだ始まったばかりだから・・大丈夫だろうけど。どうしたものかな・・。)


 ヨハスはため息をついた。


 ルイザはアリスに声をかけた。


「アリス・・申し訳ないけどこのドレスは私とシンシアが初めて一緒に作ったものなの。・・遠慮してくれる?シンシアから他の服をもらう予定だったのでしょう?」

「・・・はい。」


 ルイザに声をかけられたアリスはハッと我に返り、かわいらしいく表情を変え返事をした。

 その様子を聞いていたシンシアはルイザの胸に顔を当て、誰にも見えないように笑った。


(あなたの考えは見え透いているのよ・・アリス・・。)


 アリスがマリサに手を引かれてシンシアの部屋から退室していく間、シンシアは顔を見せないようにして笑っていた。


(『前』は自分が大切にしていた者を全て取られていたけど、今回はそうはいかない。アリスがしていたことを私がし返してあげるんだから。)



 アリスはマリサと自室へ戻っていっても、ヨハスはその後を追いかけなかった。どう動くべきかはなんとなくわかっていた。


(今、怪しまれるわけにはいかない・・作戦は全く進んでないんだから・・ここでマリサたちの関係性がバレたら元も子もないし・・まずはシンシアを僕も宥めよう・・。)


 ヨハスは内心焦っていた。

 そんなヨハスを余所に、シンシアとルイザは話を続けていた。


「シンシア‥無理しなくて良かったのに。渡したくないものは渡さなくて良いのよ。」

「最初は渡す気は無かったんです。けど、あの子が奥にしまっていたドレスを見つけて、これが欲しい!って泣いたので・・。()()姉は渡すのかな?って思って・・。でも私が泣いてしまいました・・。お母様とお揃いの欲しかったし、これが初めてのお揃いだったから・・。」

「シンシア・・。ヨハス聞いていたわよね?」

「え!?」


 自分に話を振られると思っていなかったヨハスは焦った。


「あなたが今朝、シンシアに()()姉になれと言ったから、シンシアはこうして泣くまで我慢してドレスを渡すことになったのよ。・・正直もう少し発言には気を付けてほしいわ。急に養子ができ、妹ができたシンシアの気持ちを考えて。シンシア()あなたの子供なのよ。」

「ああ・・僕も軽率だったよごめん。ごめんなシンシア。許してくれ。」

「・・。」


 ヨハスはとりあえず、誠心誠意謝った。


「どうしたら許してくれるかな。・・そうだ、シンシア。新しいドレスを作ろう!僕がプレゼントするよ!この前来てくれた仕立て屋でいいかな?」

「・・お母様とお揃いがいいです。」

「分かった。これで許してくれないか?」

「・・(コクン)」


 シンシアが頷いたのを見てヨハスはホッとした。

 

「ごめんな。そしたら調整したら連絡するから!」


 ヨハスはそう言ってシンシアの部屋を出て行った。彼は急ぎ足でもう1つの自分の妻と子供の所へ向かった。


「シンシア、やるじゃない。」

「えへへ」


 ヨハスが居なくなった後、ルイザとシンシアは素の表情で話し始めた。

 

「あなた、ここまで見通していたの?」

「ここまでではないですけど、アリスは絶対私の大事なドレスや洋服を見つけて『ほしい!』って言ってくると予想していたから。正直私も渡したくないドレスで・・ちょっと泣いてみました。」


 えへ、と舌を出して無邪気に笑う。そんなシンシアを見て呆れつつも、偉い子だわと頭を撫でる。


「それに、お母様は私の声を聞いたら飛んできてくれると思っていたから。」

「そうね、最初からソワソワして仕事は手についてなかったから。すぐに飛んでこ来れちゃった。でも・・本当に驚いたんだから。」

「ごめんなさい。飛んできてくれてありがとうございます。」

「いいのよ。」

「向こうは今荒れてると思います。とっても楽しみです。」

「・・そうね。」


 シンシアはにやりと笑う。アリスに対して計り知れないくらいの何か、憎悪に近い気持ちがあるように見えた。


(自分が死んだ後の数年間、とても辛いことがあったんだろう・・。それこそ些細なことでもやり返したいと思えるような何かが・・。)


 ルイザはシンシアを再度抱きしめた。シンシアは頭に?を浮かべながらも抱きしめられていた。



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