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夫に騙されて死んだ元女騎士、次こそ愛娘と共に幸せになります!  作者: モハチ
第一章:始まりと冬

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第四十六話:波乱の始まり

 朝、シンシンと雪が降り積もる音がする。雪がもたらす清廉な雰囲気とは裏腹に、ルイザの心は曇っていた。

 自分は『前』の世界でまったくアリスのことを知らない。ベッドに横になる時間が長く、シンシアとも『前』は話ができていない。だが、シンシアから語られた『前』では、アリスは爵位に、貴族ということにものすごく執着していた。

 そんな彼女と今日から一緒に生活するということについて緊張していた。


(・・らしくもないわ。相手はまだ10歳くらいの女児なのに・・。どうしてこう胸がざわつくのかしら。いつも通り、いつも通りよ。)


 パンと頬を叩き、身支度を整え、朝食を食べにダイニングルームへ向かう。ダイニングルームに入ると、もうヨハスと・・そしてアリスは着席していた。


(ヨハス・・いつもは遅く来るのに、今日は早いわね・・)


 そう思いながら入っていく。

 アリスは今は空席である、シンシアの隣の席に座っていた。

 ルイザが自身の席に座ろうとするとシンシアが中に入ってきた。それを見たアリスがルイザに向かって話し始めた。


「・・・伯爵様。おはようございます。昨日はありがとうございました・・」

「・・おはよう。いいのよ。寒かったでしょうし。」

「はい。寒かったので、こうやってヨハス様と一緒に来れて良かったです。ヨハス様しか、私信じられなくて・・・」


 目をウルウルさせながら話し始める。そんなアリスを傍目に見ながらシンシアが話しかける。


「おはようございます。お母様、お父様。今日は私が一番遅かったみたいですね・・」

「おはようシンシア。」

「おはよう。ねえ、シンシア・・君は隣に誰がいるのか分からない?意地悪はせずその子にも挨拶をしなさい。」


 急にヨハスが父親面してシンシアに注意する。シンシアはきょとんとしながら答えた。


「え?ああ、・・おはようございます。・・・あの、お父様。私は彼女の名前を知りまません・・。彼女からも自己紹介されてないですし、お父様からも聞いてないです。この方、お名前は何というのですか?なんと呼べばいいんでしょうか・・。」

「う。僕からも紹介していなかったな。紹介するよ。昨日から伯爵家の養女になった、アリスだ。」


 ヨハスは少し胸を張ってアリスの紹介をする。紹介されたアリスはチラっとシンシアの方を見て、目をウルウルさせて自己紹介を始めた。


「あの・・・自己紹介が遅くなって申し訳ありません・・。ごめんなさい。あまり人に慣れていなくて・・私はアリスって言います。よろしくお願いします・・。」


 そんなアリスを見て、特に表情を変えずにシンシアも挨拶をする。


「そう、私はシンシアです。よろしく。」


 しーん

 その後特に会話が弾むこともなく沈黙だけが残った。

 シンシアは特に気にする様子はないようでそのまま食事が始まった。


 朝食自体はスムーズに終わり何事もなく終わった。食事中、アリスのテーブルマナーも際立って悪いところはなく平和だった。


「ルイザ、シンシア、話があるんだが。」

「ええ、良いわよ。何?」


 食事が終わった後改まってヨハスが2人に声をかけた。


「ゴホン。昨日は寒い中連れてきたため、アリスを紹介できておらず申し訳ない。改めて、この子は昨日から僕()()の養子になった、アリスだ。記憶喪失にはなっているものの少しずつ人と話すことができるようになってきているみたいだから・・。ルイザはシンシアと同じ対応を、シンシアは彼女を妹だと思って接してほしい。」

 

 ヨハスの紹介の後にアリスが席を立つ。つたないカーテンシーで挨拶をした。


「昨日、本日としっかり挨拶ができていなくてすみませんでした。改めてアリスと言います。伯爵家に恥じない人間になれるよう努力します。よろしくお願いします。」

「・・よろしくね。私はルイザ。」

「私はシンシアです。よろしくお願いします。」

「うんうん。アリス良い挨拶だったよ。これでアリスは伯爵家の一員だよな!

 ところでなんだけど、シンシア。アリスは昨日来たばかりで、ドレスや部屋着が今着ている一着しかないんだ。君は沢山持っているだろう?少し分けてあげてくれないか?姉になるんだし。優しくしてあげてほしい。」

「・・良いですよ。後から部屋に来てください。」

「良かった!これで当分の洋服は安心だな。アリス、父が購入してやるから、それまではお下がりで我慢するんだぞ。」

「はい。お父様。ありがとうございます。」


 アリスとヨハスは笑いあう。ヨハスは今までシンシアに見せたことのないデレデレとした表情を見せていた。


(なるほど、私が死んだ後シンシアはこんな風に少しずつ搾取されていったのね・・)


 ルイザは改めて感じていた。シンシアの方を見たが、シンシアは平然としており、悲しいというよりは冷めた目で2人を見ていた。



「シンシア、ドレスどうするの?あなたも最近購入したばかりなのに・・」

「お母様、大丈夫です。これは想定内でしたから・・。見ててください。」


 朝食の席を立った後、ルイザはシンシアに声をかける。シンシアはルイザににっこり笑って言った。


「それに()()は私の方が有利なんです。私には考える余裕があるし、味方もいます。彼女はまだ味方を増やしてもいないのに・・そんな簡単に『前』のようにはいきませんよ。」


 シンシアはどこか確信があるように話していた。


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