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夫に騙されて死んだ元女騎士、次こそ愛娘と共に幸せになります!  作者: モハチ


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第三十四話:修道院にて

「もう1週間は経ったのに!どうして迎えが来ないの!!!」


 修道院で特別待遇を受けているアリスは不満を枕にぶつけていた。あの時ヨハスは1週間経てばアリスを迎えに来ると言い、修道院へお金を渡し去って行った。自分はその時待つしか方法が無かった。


「迎えに来るって!!!言っていたのに!なんなのよ!!それにお母様ももう伯爵邸に入ったって聞いたわ・・私だけなんなのよ!」


 日に日に声が大きくなり、枕やベッドなどの家具を傷つけるアリスに対して修道女たちは困っていた。正直早く出て行ってほしかった。


(でもしょうがないわ。私たちが面倒をみている本当の孤児たちのことを考えたら・・ここはヨハス様の言うことを聞くしかないもの・・)


 修道女たちがそう考えているとヨハスからアリスへ手紙が届いた。修道女がアリスへ手紙を渡すと、アリスはその手から手紙を強い力で奪った。その勢いで修道女は床へ倒れた。


「アリス様、ヨハス様から手紙が届いています。」

「!!貸して!!」


 バリバリと封筒を破り、床へ投げ捨てる。そこには下記の内容が書かれていた。

 アリスへ。元気にしているかい?不自由なことは無いかい?約束の1週間が過ぎてしまい申し訳ない。今計画がずれてしまってね・・申し訳ないんだけどもう少し修道院に滞在することになりそうなんだ。本当に申し訳ない。お金は送るから。


 謝罪が繰り返される手紙を見てアリスはブチ切れた。


「ふざけんじゃないわよ!!!!なんなのよ!!!早く迎えに来なさいよ!このアリスが待っているのよ!!!」


 アリスはさらに大きな声で叫び、手あたり次第物を床に投げ捨てた。パリンと花瓶は割れ、枕からは羽毛が飛び出したが構うことなくアリスは物に当たった。


「ひっ」


 床に倒れた修道女がその様子を見て小さく声をあげる。その声を聞いたアリスはゆっくり修道女の方を向いた。


「何見てんのよ・・・このクソ女があ!!」


 修道女は枕などの物を投げつけられた。


(我慢しなくては我慢しなくては・・・!みんなのためにも我慢しなくては・・)

 

 修道女はアリスの機嫌が収まるまで床の上で耐えていた。 




「ルイザ、今日はカウフマン侯爵が来られる日だね。」

「ええ、そうね。今日はよろしくね、ヨハス。」

「こちらこそだよ。ちょっと緊張しちゃうな~」


 修道院でアリスが発狂しているのを余所に、ヨハスはヨハスで今日の計画について慎重になっていた。


(今日、うまくやればこっちのもんだ。これからの計画がスムーズにいくはず・・)


「お母様、私もおじい様たちに会うの久しぶりで緊張します・・・」


 カウフマン侯爵たちのお出迎えの場に現れたシンシアは妖精のようだった。目の色に合わせた薄いグリーンのドレスはシンシアを緑の妖精のように魅せていた。


「シンシア!とっても似合っているわ!!なんてかわいいの!!」

「お母様・・ありがとうございます。照れます。」


 シンシアは自分で選んだドレスを身にまとうことができ、とても嬉しく思っていた。『前』は自分でドレスも選ぶことができず、ド派手な原色のドレスばかりをアリスに着せられていたため、こんな高揚する感覚は久しぶりだった。


 2人で話をしている時、遠くから馬車の音が聞こえてきた。


「あ、来たわね。」


大きめの馬車が到着し、中からカウフマン侯爵夫妻、兄とその婚約者が出てきた。


「やあ、久しぶりだね。出迎えありがとう。」

「こちらこそだよ。久しぶりお父様。」

「お久しぶりです、カウフマン侯爵。」


 まず侯爵が中から出てきて軽い挨拶をした。そしてチラとシンシアを見ると目がハートになった。


「・・シンシア!なんてかわいく育ったんだ!!まるで妖精じゃないか!!!」

「えへへおじい様、お久しぶりです。シンシアです。」


 シンシアはカーテンシーをして挨拶をすると益々侯爵は興奮した。その様子を見ていたルイザの母親、公爵夫人は持っていた扇子で侯爵の頭を叩いた。


「やめなさい。見苦しい。シンシアに悪影響だわ。・・久しぶりねルイザ、ヨハス君。元気そうで良かったわ。シンシアも、ごめんなさいね。悪い人ではないから、怖がらないであげてね。」

「はい。お久しぶりですおばあ様。大丈夫です。」


 侯爵夫人とシンシアの間にほんわかした空気が流れた。


「やあ、久しぶり。お出迎えありがとう。・・・大丈夫?エスティリア嬢。ゆっくり降りておいで。」

「ありがとうございます、マートン様。・・お久しぶりです。お出迎えありがとうございます。」


 次いで兄と兄の婚約者、マートンとエスティリア嬢が馬車から降りてきた。兄はルイザそっくりの瞳と髪色をしており、エスティリア嬢は水色の髪の毛に濃い青の瞳を持つおとなしそうな令嬢だった。


「お久しぶりです、兄さま、エスティリア様。」

「ああ。ほんと久しぶりだな。お前は全然連絡を寄こさないから。父上が痺れをきらしていたよ。」


 軽口を交わす兄弟を余所に、ヨハスは手に汗を握り始め、自分がすこしずつ緊張していっているのを感じた。そもそも小心者のため、こういった大胆な作戦には不向きな性格だった。


(・・・大丈夫。作戦は上手くいく。なんてったってマリサが体を張ってルイザを助ける役をするんだから・・!)


 ヨハスは緊張感を振り切り、カウフマン侯爵一行の案内を始めた。




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