第二十七話:地下牢
地下牢へ行く途中、ルイザは男爵へ最初は隠れておくように伝えた。男爵はそれを了承した。シンシアにも最初は隠れていてよいことも伝えたがシンシアはそれを拒否した。
暗い螺旋階段を降りていくと、上階と違いすこしジメジメと湿ったような空気が流れる。岩肌が露出した造りの牢屋の、鉄格子の奥に夫人は居た。2日間この牢屋の中で過ごしていたため、明かりがとてもまぶしそうな様子でこちらを見た。明かりの中でルイザを見つけると、鉄格子に掴まり叫ぶように謝罪を繰り返した。シンシアは視界に入っていないようでルイザのみをじっと見つめていた。
「伯爵様!!本当に申し訳ありませんでした。今回のことは私が本当に悪かったです。どうか情けを、情けを頂けませんか!!!どうか助けてください!!!」
ルイザは夫人へ冷たい目線を投げつけつつ、以前も行った質問を繰り返した。
「情けをかけてもらいたいなら、教えてほしいの。どうしてあなたは大人でも難しい問題をシンシアに出していたのか、どうして体罰を与えなければならないのか、そしてなぜそういった教育方法は私が指示出したと嘘をついたのか。この3つを。誰に指示をされたの?」
「・・・・・・」
「また沈黙?答えないということはこの環境が気に入ったということで良いのかしら?一生ここで過ごしてもらうことになりますけど。」
ルイザの言葉に夫人はチラと自分の牢屋を見た。じめじめした空間のため壁には苔が所々生えている。ネズミもたまに寄ってくるため、安心して睡眠をとることもできず、貴族である夫人にとっては地獄のような場所だった。
「・・・言います・・言いますから・・・!!!」
夫人は半ば狂ったように話し始めた。
「お嬢様の勉強内容のレベルについては・・ヨハス様から出してほしいと言われました。お嬢様にはもっと高等教育を受けさせるべきだから・・と。」
「そう、ヨハスね。それで、体罰は?」
「それは・・その当主様から・・騎士にもなりたいと話をしていたから、厳しく指導をしてほしいと・・。」
「当主って私のこと?本当だと思って言っているの?」
「そう、お聞きしたのです・・ヨハス様から・・!」
「体罰の教育は私が指示したものだと言うのももしかしてヨハス?」
「・・はい・・。」
ルイザは家庭教師については、ファートン子爵やガスティン侯爵が絡んでいないことを喜んでよいのか分からない心境に陥った。シンシアの教育については全てヨハスが手を回していたのだ。
(あいつ一体・・シンシアをどうしたかったのよ・・仮にも父親なのに・・)
「あなた、ヨハスから言われたことを素直に受け止めたのか知らないけど、少しはおかしいって思わなかった?教師として今までやってきたのであれば疑問を持たないの?」
「それは・・・」
「お父様と先生は親密な関係にあるんだよね?私、2人でこそこそ話をしているところ、抱き合っているところ、この前は顔と顔をすごい近くまで寄せてて・・そう、キスをしているような時もあったよね・・?」
夫人が言葉に詰まった時、ルイザの影にいたシンシアが急に出てきて爆弾発言を告げる。光の具合でルイザしか見えていなかった夫人は驚き声を挙げた。
「え!お!お嬢様!!!」
「だって体罰も最初はなかったけど、あなたたちのそういった様子を目撃した後は厳しくなったよね?私が毎日の気力を失うように、宿題は沢山出して時間を無くさせ、痛みどめや治癒塗布剤を出さない日を作って私が外出できないようにしていたじゃない。それって口封じみたいなものじゃないの?」
「え?どういうこと?あいつ不倫していたの?」
「お!お嬢様!!!」
「お父様は私に気づいていなかったけど、あの角度であれば私は先生からしか見えてなかった。・・・目あったよね?」
「・・・・そんなまさか!!!あり得ません!!」
「ここでの浮ついた生活はさぞ、楽しかったんじゃない?」
「い・・いやあ!!そんなこと!!!」
「ねえ先生、あなたのその浮ついた生活について教えてよ。さぞかし高等な教育なんでしょ。」
シンシアの怒涛の言葉責めに対し夫人は声を荒げ、シンシアの言葉を途切れさせようとするがシンシアは止めない。ルイザはそんな2人の姿を見て唖然としていた。
「ねえ先生、フリーダ男爵は知っているの?先生とお父様の関係。本当のことを教えてくれたら、私『から』は男爵へ言わないようにするわ。ここだけの話にする。ねえ、本当のことを教えて?」
元々夫人は嫁入りに難航しており、フリーダ男爵とは遅くの結婚だった。体罰問題だけではなく、不倫のことがバレれば離縁されてもおかしくはない。夫人もそのことを考えたのか、意を決したように話し始めた。
「お嬢様、約束は守っていただけるのですか?」
「うん。私、約束は守るよ。」
「・・わかりました。・・・クレアトン伯爵様、申し訳ありません。あなたの旦那様とそういう関係を持っていました・・・。」
夫人が白状した時、シンシアはにっこり笑った。




