第二十一話:シンシアの状態
4人が所属先について話し合いをしている時、シンシア専属のメイドであるレマがルイザの所に報告に来た。
「夜間はよく休まれていたので、本日はもういつも通り起きられると思っていたのですが・・。今朝方熱を出されまして。」
「そう・・。そしたらトムに診てもらいましょう。」
ルイザはクレアトン家担当医、トムに連絡し早速診てもらうことになった。
「シンシアはどのような状態ですか?」
ルイザが尋ねる。担当医トムは聴診器をシンシアから外して答えた。
「特に肺などの呼吸器、循環器系にも異常は無いです。聞けば、昨日とても強いショックを受けたと聞きました。ショックにより体調のバランスが崩れて発熱したのでしょう。まずお嬢様はゆっくり休んでもらうことが一番です。数日様子を見ましょう。」
シンシアは汗を頬を火照らせ、はぁはぁと荒く熱い呼吸をしながら眠っている。
(シンシア・・こんなに苦しんで。昨日のことが恐ろしかったのね。気を使ってあげれなくてごめんなさい。)
ルイザは心の中でシンシアに謝り、トムにお礼を伝えた。
「トム、ありがとう。」
「奥様。もちろんです。また何かあったらすぐお申し付けください。」
トムは笑顔で頷き、メイドに連れられ退室していった。
ルイザはシンシアが寝ているベッドの脇に座り、シンシアの髪を撫でながら汗を拭いてシンシアの看病を行った。
「シンシア、きついわね。大丈夫よ。今日はお母様がここにずっといるから・・」
ルイザはベッドサイドに小さいテーブルと椅子、書類を持参し仕事をし始めた。
周囲のメイドは看病は自分たちがするからとルイザを止めたが、ルイザは聞き入れなかった。
その時シンシアは夢の中で自分の姿を見て苦しんでいた。
「お母様・・なんで死んでしまったのですか・・」
夢の中のシンシアは雨に濡れる墓の前で泣き崩れていた。
ぼろぼろの黒いワンピースのみを身にまとい、手足は棒切れのように細くなり自慢だった髪はボサボサで櫛も通らない状態だった。
足からは血が出ているが、そのことは気にしていなかった。
場面が変わった。
次の場面は自分が「この魔女め!」と領民から叫ばれ、石を投げつけられていた。
自分は頭から血を流していたが他のものは止めることもなく、石の数は増えていった。
連れてこられた場所は記憶にない場所のはずなのに、なぜか処刑場だと分かった。そして最終的に自分は火あぶりになることも分かっていた。
(なぜ分かるんだろう・・?苦しい・・)
シンシアは寝ながら夢の中で見ている、自身の前世に苦しめられていた。
ちょうどその頃・・
ガタンガタン
馬車の中でヨハスはアリスと共に、クレアトン伯爵家に向かっていた。
マリサ宅で提案した、次回の領地視察時にアリスを養子として連れて帰ることについて、一度は受け入れたアリスだったが、一夜明けて考えが変わったからだ。
自分を早く養子として受け入れるようにしてくれ・・と。
(なんで私がクレアトン伯爵家養子になるのを待たなくちゃいけないの?この可愛さがあれば誰だって受け入れてくれるでしょ。あのクレアトン伯爵だって他の人と変わらないわ。)
アリスは自身の外見に自信があった。ヨハスと同じグレーの、ウェーブがかかった髪は太陽の光に当たるとキラキラ輝き、金の眼は宝石のよう。母親、マリサに似た顔で笑うと大抵の人たちは頬をデレっと緩ませて笑いかけてくれた。
平民街に出ると年頃の男性から声をかけられることも少なくなかった。自分が他の人から優遇される存在であると思い込んでいた。
(朝、お父様が出る前に頼み込まないと!私を連れて行けって!次回と今回なんてそんな変わらないでしょ。)
夜が明け朝食を摂っている時、アリスはヨハスに頼み倒した。
「やっぱり今日行きたい!クレアトン伯爵家に私を養子として連れて行って!」
そう懇願された時、ヨハスは困惑し、マリサも一度はアリスをなだめ、止めた。だがヨハスがアリスの希望を断ると、アリスが泣きだしたので、ヨハスは渋々アリスの希望を受け入れた。
ヨハスはアリスの希望を受け入れ、こうして一緒にクレアトン伯爵家に向かっている間も悩んでいた。
(ルイザはアリスを受け入れてくれるだろうか・・孤児を養子として受け入れるという作戦は、今の見た目では使えないだろうし・・どうするべきか・・)
本来ならば、次回迎えに行く時までに食事を減らすなどして体重を減らし、汚い洋服を着てもらって見た目は孤児になってもらう予定だった。
(孤児で栄養が滞っている状態なら、ルイザは仮に怪しんだとしても、すぐに家からは追い出さない。少なくとも栄養状態が改善するまでは家に置いていてくれるだろうし。それまでに何とか理由を付け養子にする手はずを、と思っていたのだが・・)
悩んでいるヨハスを横目にアリスはクレアトン伯爵家に、貴族になることを心の底から楽しみにしていた。
(私も今日から!貴族よ!!)




