第十八話:新たな情報(2)
ルイザはガスティン侯爵とその娘、キャロル令嬢を思い浮かべていた。
ガスティン侯爵は黒髪で同色のひげを蓄えた赤目の小太りな男で、キャロル令嬢は同じく黒髪、赤目の令嬢なのだが華奢で、父親の遺伝子はどこに行ったのかと疑問に思うくらい弱弱しい令嬢だった。
(そんな令嬢が皇妃に・・?やっていけるの・・?)
ルイザは皇后の側近だったからこそ分かるあの強かさにキャロル令嬢は皇妃として対応していけないのでは、と逆に心配になっていた。
「ガスティン侯爵が裏稼業をしているのは噂で聞いたことない?」
カイラスはファートン子爵とガスティン侯爵、皇妃をそれぞれ丸で囲み線でつなげながらルイザに尋ねた。
「ある・・けど、詳細は知らない。ただ、そういう噂があるくらいしか。」
「そうか。実はガスティン侯爵はいろんな所に高額な利子で金を貸して、支払えない人たちを奴隷する、人身売買で金を稼いでいるんだ。最近では薬師を奴隷にして中毒性の高い薬を作って薬漬けにして働かせていることも分かってきた。」
「え!それは王国法で禁止になっているじゃない!」
違法な高額利子の金貸し、奴隷化、自身売買、麻薬作成、販売。
すべてが王国法で禁止となっている。
「そうなんだけどね。そこはガスティン侯爵自身が持っている裏ルートがあるようでさ・・」
トントンと図式されたガスティン侯爵をペン先でつつく。
「きな臭い背景があるガスティン侯爵の娘が皇妃になる。これは予定であり、決定事項だ。王家にこれから問題がでてくるのは間違いないよ。」
カイラスは真剣な目でルイザを見た。ルイザも固唾を飲んだ。
「今の流れで分かったとは思うけど、5人中2人は君の夫の愛人とその使用人だったよね。後の3人はガスティン侯爵の手下だよ。クレアトン家に自分の手下を入れているのは、ルイザ、君という王侯派、いや皇后派というべきかな?その牙城を内側から崩す目的があるみたいだ。今狙われているのは君さ。『敵』は少しでも自分に歯向かう可能性のある勢力を消していきたいみたいだ。」
ルイザは自分が狙われているのは分かってはいたが、それはヨハスと愛人の策略だろうと思っていた。
調べるうちにどんどん大きなことに巻き込まれている、組み込まれていることを知り愕然とした。
カイラスはルイザが慎重な面持ちをして黙っているのを見ながら話を続けた。
「多分だけど、クレアトンを落としたら次は君の生家、カウフマン侯爵にも手が行くんじゃないかな。これは情報ではなく推測だけど。」
「・・・そんな気はこの話の流れから思っていたわ。私、そしてクレアトン家を掌握した後はカウフマン、そして皇后の生家ファルストへ・・ってところかしら。」
「まあここはまだ推測だからね。でもそのうち手を出してくる可能性はあるよ。」
ルイザは深呼吸をして、背伸びをした。
そして両手で自身の頬を叩いた。室内にパン!と高く短い音がする。
「ああ!何かわからない、モヤモヤしたものが晴れた気がする!ありがとう。カイラス。」
先ほどまでの暗く真剣だった表情から一転、ルイザは元の明るい表情でカイラスへお礼を伝え、握手のための手を差し出した。
カイラスは一瞬止まったがすぐににこりと笑い
「それでこそルイザだよ。僕は情報屋という立場ではあるけど、君の味方さ。また依頼を待っているよ。」
と差し出された手をグッと握り返した。
ルイザは思いついたように、すぐカイラスへ次の依頼をした。
「ごめんそしたら、愛人について詳しく調べてくれない?」
カイラスは笑いながら手で〇を作った。




