第十七話:新たな情報(1)
深夜、ルイザとシイナは変装用のマントとフードを深くかぶり、窓から外へ出て情報屋のところへ向かった。
情報屋の所へたどり着くと受付の強面は前回の来訪より1人増えていることに気づいていたが特に何かを報告することもなく、通常通り、合言葉を確認した後に地下へ案内をしてくれた。
2人でソファに座って少し経ち、奥からカイラスが出てきた。
「やあ、ルイザ。依頼通り調べ上げたよ。・・・ところで今日は1人増えているんだね。君の右腕?」
カイラスはフードで身を隠しているシイナを見つつ少し警戒しながら話し始めた。
ルイザはフードをとりカイラスを見た。
「カイラス、早めに連絡をくれてありがとう。そう・・私の右腕・・。もうフード外していいわよ。」
「はい。」
シイナはルイザに言われフードを外す。
カイラスはシイナを見て驚いていた。
「ええ!シイナ!まさか君も来るとは思っていなかったよ。」
「お久しぶりです、カイラス先輩。騎士団ぶりですね。」
二人は元々騎士団での後輩先輩にあたる。
ルイザを追ってシイナが王家騎士団を退団してからは久しぶりの再会だった。
「・・そうか、君がルイザの右腕なら安心だね、ルイザも。じゃあ早速、依頼の結果を話そうか。」
カイラスは自身もフードを外しながらソファに座り、二人へ書類を見せ大きな紙に図を書きながら説明を始めた。
「君に依頼されたこの5枚の推薦状。これはファートン子爵家が作ったもので間違いないよ。この5人全員をメイドとして雇っているという名簿も確認された。けど、実際に働いていたメイドではないっていうのが答えかな。この中の1人は君の夫の愛人、もう1人はその愛人の使用人。後の3人は・・まあ後からここは詳しく。」
紙にファートン子爵と5人のメイドを書き記しながら話し続ける。
カイラスがさらっと愛人のことについて触れ、ルイザは特に驚くことなく話を聞いていた。が、シイナは初めて知ったため驚きと共に心の中で怒っていた。
(は、愛人!?ルイザ様が妻なのに愛人!?)
ルイザは冷めた目で愛人と書かれたメイドの図を見ていた。
「次はファートン子爵のことなんだけど、最近領地経営がうまくいってないみたいだね。先代から今の当主に変わった当初は上手くいっていたみたいだけど・・現当主の妻、子爵夫人の金遣いが荒いみたいで資金繰りが大変になり、経営が疎かになってる。借金も作ってきているみたいだから。」
ルイザは頭の中でヨハスの兄と義姉にあたる子爵夫妻を思い浮かべた。
兄の方は真面目だが妻に対しては強く言えない一面があり、一方義姉は高価な物への執着心が強く、初対面時にルイザのネックレスを物欲しげにじっと見つめていたのを思い出していた。
(あれは宝石に目のない感じだった。金があると買い漁りそうね・・かわいそうに・・)
ルイザが心の中で子爵当主に同情している間にも、カイラスは話を続ける。
「当主は子爵夫人が作った借金を返済するために貯金を崩したり、税金を少しずつあげて対応してたけど、間に合わなかったんだ。そんな中、子爵夫人がとある貴族と交流を始めて・・そこからだよ。ファートン子爵が怪しい行動を始めたのは。」
カイラスがファートン子爵の図をグリグリと丸で囲み、矢印を書き記す。
「その裏ルートで繋がったのがガスティン侯爵家さ。さらにそこから今回の大元になるのが皇妃なんだ。」
「「皇妃?」」
ルイザ、シイナは死んだメイドの口からガスティン侯爵家の名前が出てきたので、その点は予想していたが、まさか皇妃の名前が出てくるとは思っていなかった。
2人とも目を丸くしている。
「皇妃って言ったけどさ、今皇妃いないわよね?」
現在の王の妻は皇后のみ。側室、皇妃にあたる女性は居ない。
「それがさ、実はこれから皇妃として娶る予定みたいなんだ。」
カイラスはしたり顔で説明を始めた。
「現在の陛下の妻は皇后、王侯派の貴族であるファルスト公爵家の令嬢、ロゼッタ様だろ。」
ルイザとシイナは頷いた。
「まあ、護衛についていたからね。それくらい知ってるわよ。」
「隠居した先王が急に、『皇妃を建てる必要がある!』って言いだしたんだ。陛下も『急に何言ってんだ父上!』って止めたんだけど、結局貴族会議で建てることが決まってさ。先王が王侯派と貴族派の対立を防ぐために新たに皇妃を娶ったほうが良いって会議で突っ張ったんだ。」
「そう・・急に言い出したって何か怪しいわね・・。それに殿下と皇后は政略結婚ではあったけどラブラブだし。皇妃になる予定の方もやりにくいでしょ。」
「そうだよね~今時あんな仲良しな夫婦はいないよね・・。まあそこは良いとして。皇妃として候補があがり、ほぼ確定になっているのがガスティン侯爵家のキャロル令嬢なんだよ。」
「「・・ガスティン侯爵家!」」
「そんなに驚かなくても。話の流れ的に皇妃はガスティン侯爵家から出てくる感じだったろ。貴族派の中心だし。」
「・・まあそれもそうなんだけど、キャロル令嬢か・・」
ルイザはガスティン侯爵とキャロル令嬢を思い浮かべていた。




