第十五話:愛人の考え
マリサは没落寸前な男爵家の両親のもとに生まれ、4番目の子供だった。
生家の家計はいつも火の車ではだったが、家族の仲は良かった。
両親と兄姉は平民たちと一緒に畑を耕し一緒に生活ができる人たちであったが、マリサはそれが嫌だった。
(私は貴族で、青い血が流れているのにどうして平民と同じ暮らしをしなくてはならないの!本来なら私は働くべき者ではないのに。選ばれ死貴族のはずなのに。私も綺麗なドレスを着て、社交界に華々しくデビューしたい!)
小さいころから貴族としての思いを捨てきれず、男爵家での生活を苦に感じたマリサは家から抜け出し、メイドとして子爵家に働きに出ることにした。
(もしかしたら私を見初めてくれる貴族の方がいるかもしれない。愛人でも構わないからどうにかして貴族の目に留まるところに行かなければ。)
ファートン子爵家に勤めながら、ファートン子爵家について調べ始めていた。
後継者の長男は婚約者がおり、婚約者も嫉妬深い人のため手が出しづらい。
次男は騎士志望で稽古中心の生活であり近づくタイミングがなかった。
三男のヨハスは兄たちと比べ際立った点は無かったが、両親からの愛を沢山受けていることを知り、どこかしらの領地が与えられるのではないかと推測した。
(この中で私が狙うべきなのは一番簡単そうなヨハス様ね。)
マリサはヨハスを狙うことにした。
仕事の合間にヨハスを観察し、昼寝は裏庭の木の下でするのが習慣になっていることを知ったマリサは、偶然を装いヨハスに近づいた。
まだ幼かったヨハスはまんまとマリサの手中に落ち、めでたく恋仲になることができた。
その後は順調に行くかと思ったが、ファートン子爵家にはヨハスに領地を与えられるほどの余裕がなく、マリサの目論見ははずれた。
またマリサの実家である男爵家が王国へ税金を支払えなくなり爵位返上、没落することになり、マリサは平民になった。
ヨハスは両親へマリサと結婚したい意向を伝えたが平民との結婚は許してもらえなかった。
「マリサ・・僕は君と一緒にいられるなら、平民になってもいいんだ。どこか地方にでも行こうか?」
ヨハスはマリサのことを愛していたため、平民になる覚悟はあったがマリサには無かった。
(なんで平民にならなければいけないのよ!あんたは貴族で、働かなくても金が入ってくる立場なのに。そんなこと許さないわ!)
「そんな、私のために自分を傷つけなくて良いの・・。私は日陰の者で全然良いから。あなたと一緒にいられることが幸せなの・・」
マリサは「平民になっても良い」という言葉を毎回撤回させ、ヨハスができるだけ貴族の爵位を持ち続けてるよう声をかけていた。
ヨハスが政略結婚でルイザと結婚してから会える回数は減ったが、マリサは別に会えなくても良かった。
(ヨハスがクレアトンから持ってきてくれるお金のおかげで生活はできている。後は私がクレアトン伯爵夫人になることが最後の目標になるわね・・)
この時マリサは夢にまで見た貴族、伯爵夫人の座を手に入れることが目標になっていた。
ヨハスの心を繋ぎとめるためルイザが妊娠中にマリサもアリスを妊娠。
ヨハスとマリサの間の子供をできるだけ愛するように仕向け、できるだけ会いに来てもらえるように努力していた。
そんな中、転機が訪れた。
ヨハスにとある高位貴族の方が声をかけてくれ、ある作戦に加わることができた。これが成功したらマリサは夢にまで見た、きちんとした貴族の仲間入りをすることができる。
(あともう少しだわ・・!後もう少しで、貴族になれる・・!)
ヨハスとの間に生まれた愛娘のアリスには自分と同じような思いをしてほしくなかったため、ヨハスから作戦内容を説明されたときは一も二もなく飛びついた。
(私の夢まであともう一歩よ・・!)
マリサはクレアトン伯爵家に行くことを心の底から楽しみにしていた。




