第十二話:裏切者には死を
「ま・・待ってください!そんな!言いますから!命だけは助けてください!私は・・ガスティン侯爵家の推薦です・・!」
その言葉を聞いた瞬間、縄で縛られ、大人しく床に転がっていた護衛がバッと顔を挙げヘレンを睨んで叫んだ。
「お・・おい!お前!何言ってるんだ!」
「何って!しょうがないでしょ!私にとっては今、命のほうが大事なのよ!」
ガサガサと2人、床の上で動きながら大声で言い合っている。
(なるほど、ファートン子爵家だけではなく、ガスティン侯爵家も私を殺そうとしているということか・・)
頭の中でガスティン侯爵家の面々を浮かべる。
正直自身が伯爵位をもらった時に苦虫を潰したような表情をされたことしか覚えていない。
ガスティン侯爵は暗い噂が多く、今までの王家騎士団としての働きからして何かしら恨みを持たれていそうな気はしていた。
(それにしてもガスティンとファートン、ここに2家が私を暗殺するための協力関係を作るにしては何か足りない・・)
何か違和感に感じているとアタンが副騎士団長を連れ戻った。
「ルイザ様!すみません。今戻りました。副騎士団長を連れてきました!」
「ルイザ様、副騎士団長のディーン参りました。」
アタンが筋肉隆々なら副団長のディーンは細マッチョと言わんばかりな、一見軟派に見える金髪の男、ディーンはルイザに礼儀正しく片膝をついて挨拶をする。
「ディーン、急に呼び出して悪かったわ。あなた、この護衛騎士を知ってる?知っているなら何時、シンシアの護衛になったのかを聞きたくて。そこの木偶の坊、いや騎士団長は全く知らないみたいだから。」
ギロっとルイザはアタンを見る。
アタンはしょんぼりして肩を落とした。
「ああ、この方は最近、ヨハス様が『とても強い騎士が入ってきた、娘を守る護衛は強いやつではならない。』と言って騎士団に入ってきました。入って直ぐに『自分が認めた人ではないと護衛は務まらない!』ってシンシア様の護衛に大抜擢されたんですよ~。・・・本当に参りました。シンシア様の護衛をしていた者が急に解雇されそうになったので何とか騎士団に繋ぎとめたんですよ・・。」
副騎士団長ディーンはツラツラと自身の心情も含めて話し始めた。
(ヨハス、やはりあなたなのね・・)
ルイザがヨハスに対してさらに幻滅していると、シンシアはどんどん表情を曇らせていった。
(シンシアは父親が仕組んでいることなんて知らなかったわよね・・)
ルイザはシンシアの表情に気づき、握っている手を強く握る。
シンシアはその手の強さに気づきルイザと目を合わせ、頷く。
「ディーン。もう大丈夫。わかったありがとう。」
ルイザは空いている片方の手でディーンの話を止めるジェスチャーをする。
そして床の護衛に対し冷たく言い放った。
「それであなた、護衛騎士としての職務怠慢はどういう見解で?そもそもどうしてここに入ってこれたの?」
黙って話を聞いていた護衛は小さく
「あーっ、くそ」
と悪態をついた後、縄で縛られたまま制服の胸元から小刀を口で出し、隣で横になっていたヘレンの喉元を切った。
その後自身はガリっと奥歯の方で何かを噛み、痙攣した後動かなくなった。
「あっ」
一瞬の出来事だった。
護衛を見ていた全員が息をのみ、ディーンが護衛のそばに寄ったときはすでに息をしていなかった。
ヘレンはピクピク動いていたが、毒が塗られていたのか顔色がどんどん悪くなっていった。
最終的に彼女も息をせず、口から血を流し瞳孔が開いた状態で動かなくなった。




