第百二話:勘が当たる
「それじゃあハル、よろしくね。」
「はい!書類まで準備していただいて‥本当にありがとうございます!こちらこそよろしくお願いします!」
ルイザから偽の毒薬入手経路を受け取ったハルは嬉しそうにお礼を言った。そしてもう1つの件についてもお礼を伝えた。
「あの・・家族の件についても考えてくださり・・本当にありがとうございます。私本気で頑張ります。」
「ああ・・良いのよ。私もガスティン侯爵家については何かしてやらなくちゃいけないって思ってたから。気にしないで。あなたは自分の役割遂行をよろしくね。」
「はい!」
「それから、サキのことなんだけど、」
「はい?」
サキは急に話を振られ、ビクっとした。ルイザはサキとハル両方を見ながら言った。
「ここまで一緒に居たら分かってると思うんだけど、サキは私のメイドよ。何故かアリス達に見初められてそちらにいるんだけど・・。まあ何かあったらサキに相談してね。サキは色々な方法を駆使して私たちに情報を伝えてくれるから、助けることはできると思う。」
サキはルイザに紹介された瞬間元気を取り戻したかのようにハキハキと話し始めた。
「そう!私なぜかアリス様に見初められちゃったの!だからこれは好機と思ってスパイとして怪しい行動をしている人がいないか見ていたのよ。まあ、あなたが一番怪しかった!」
サキは胸を張り堂々とスパイであること、そしてハルが怪しかったことを伝えた。
ハルはなんとなく気づいていたので笑いながら伝えた。
「ふふ。私も監視されている気がしていました・・。サキ先輩って呼んだら、アリス様達にバレてしまいそうなので、サキさんって呼んでも良いですか?」
「先輩呼びの方が凄く嬉しいけれど、しょうがないわね。サキさんでいいよ!よろしくね!」
「はい!サキさん!」
「ハル、早速だけどあなた一回しっかり寝たほうが良いわ。顔色は悪いし、足元はフラフラしているし・・日中ハルが倒れるんじゃないかと心配していたの。今日は早くメイド部屋に帰って寝て。」
サキにそう言われ、ハルは自分の顔を触った。確かに肌はカサカサでなんとなく萎れているような触感だった。実際に寝不足で辛い実感はあった。
「そうですね。今日はしっかり寝ます。ありがとうございます。それからハク・・」
「!ハル姉・・」
「明日から、同じところで働くことになるけど・・顔に出さないようにね。」
「うん!ハル姉もね!明日からまたよろしく。」
ハクとハルは笑顔で話し、ハルは部屋から去って行った。
「ルイザ様。私も退室しようと思います。今日は色々すみません。これから私も頑張りますのでよろしくお願いします。」
「うん。よろしくね。ハク。」
「それでは」
ハクもその後、ルイザにお礼を言い、退室して行った。
部屋にはサキ、シイナ、ルイザの3人になった。
「ルイザ様、良かったですね。こうしてアリス側のメイドをこちら側にすることができて。思惑通り進んでますね。」
ずっと黙っていたシイナがルイザに声をかけた。ルイザは笑った。
「・・そうね。あのハクと会った時からなんとなく思ってたのよね。この紹介状の人と似てないかって。」
ルイザは以前ヨハスからもらった5枚の紹介状を取り出した。その中の1枚はハルの紹介状だった。
『ガスティン侯爵領、トリバ村出身。15歳。』
地下牢でハクと会い、ハクの身の上話を聞いた時、ハルとハクはもしかして血縁者ではないのかと疑問に思っていた。
まず、ガスティン侯爵領であり、トリバ村出身であることは2人とも共通していた。そして紹介状の写真で目が似ていること。ハルは前髪で目元を隠しているからパッと見分からないが、2人とも三白眼だ。
そしてハクから聞いていた『姉がいる』という情報。ハクを暗殺者として仕立て上げ、自死させるつもりだったならば、次の刺客が必要になるはずだ。そういう時、動かしやすい人物・・もしかしたらハクの時のように血縁者を騙して暗殺者に仕立て上げるのではないかと考えていたのだ。
「今回は当たりだったわね。」
「はい。本当にその通りでした。ガスティン侯爵の考えを当てるのはなんか嫌ですけど。」
「まあまあ・・。」
「それだけわかりやすい奴だということですね。」
「そうね・・これから私たちの反撃になるわ。楽しみね、2人とも。」
「「はい。私たちも楽しみです。」」
3人はにっこり笑い、グラスにワインを注ぎ始めた。
3人とも早くアリス達を断罪したい、屋敷から追い出したい気持ちでいっぱいだった。だが、証拠や証言を集めること、そしてクレアトン伯爵家の者たちが世間から悪く見られないようにふるまう必要があった。
ヨハスたちは身目も良く、世間には良い夫、良いメイドとみられているためまずはそのイメージを悪くする必要があった。
でも今夜で布陣を少しずつだが整えることができはじめていた。
「これから忙しくなるわよ!」
「望むところです!」
「頑張りましょう」
チンとグラスの音を鳴らし、3人はワインを飲み始めた。




