第百話:懇願
「え・・?」
ハルは顔を上にあげ、ハクをみた。ハクは真剣な表情でこちらを見ていた。
「俺と一緒に、家族を助け出そうよ。1人ではできなくても、2人ならできるだろう?」
「え・・でも私・・。」
ハルは戸惑っていた。今回の作戦が失敗したら自分は死ぬと思っていたので、生きていけることが不思議だった。加えて自分が任務を遂行するか、死ぬか意外で家族に対してできることは無いと思っていた。
(それにターゲットであるルイザ様に自分が暗殺者であることがバレた今、私は殺されるに決まっている・・。)
そんなハルのある種、諦めの思いをなんとなくだが感じ取っていたハクはルイザを見て懇願した。
「ルイザ様、ハル姉は・・このメイドは、私と同じようにガスティン侯爵に騙されていた者です。どうか・・情けをもらえないでしょうか。」
ハクは両ひざを着き頭を垂れた。
「どうか、この通りです。どうか・・私と同じように助けてもらえないでしょうか。」
頭を床につけ、土下座の形をとったハクを見てハルは動揺した。
(もう私が死ぬことは確定なのに・・どうして・・!)
「え・・ハク!」
「お願いします!」
ハクは土下座しながらずっと震えていた。私が死ぬことを恐れているのだとわかった。
(ハルがここまでしているのに・・私が諦めてどうするの・・!どうせ死ぬのであれば・・悪あがきをするしかない・・!)
ハルはハクの隣で床に膝をつき頭を下げた。
「わ・・私からもお願いします!その・・伯爵様の暗殺計画の一部を担っていたことは認めます!私が持てる情報を提供させていただきます。どうか、命だけは助けて下さい!」
ルイザは2人をじっと見ていた。元々ハルを殺すつもりなど全くなかった。サキからの情報でハルとハクには何かがあるということを事前に分かっていた為、まずはその関係性を知りたかっただけだった。
(ついでにガスティン侯爵たちの情報を知れたらいいなくらいしか思っていなかったけど・・そんな軽い気持ちで対応しては行けなかったみたいね・・。)
シイナとサキはルイザの方を見て頷いていた。
(一体その肯定はなんなのよ・・。)
「はあ」と一息ついてからルイザは声をかけた。
「2人とも顔を上げて。」
「「・・」」
ハクとハル、2人は顔を上げ、ルイザを見上げる。
「私は別にハルを殺そうとしてないわよ。ただ、あなたの置かれている状況と可能であれば知っている情報を得たかっただけ。それにあなたの事はサキから聞いていたし・・。」
「「あ・・ありがとうございます!」」
2人は再度頭を下げた。
「また頭を下げて!あげてって言ったでしょう!」
「「はい!すみません。」」
「ふう・・。まあ話の中であなたはハクと同様、ガスティン侯爵に騙されてここに来ていることは分かったわ。」
「はい。すみません。」
「謝らなくていいの。それじゃああなたが一任されていた、暗殺計画について教えて?」
ルイザは笑顔で尋ねた。ハルは生唾をごくりと飲み込んだ後、アリスからの依頼内容とそのために行っていたことを話し出した。
「・・つまり、私を毒殺するために毒薬を手に入れるための経路を見つけてくるように言われていたけれど、伯爵邸の夜間警備体制が整いすぎてまだ経路を見つけられていないということ?」
「・・はい。その通りです。まさか3人体制で警備をしているとは思わず・・。ガスティン侯爵家ですら2人で、ゆるゆるでしたのに・・。ここは凄く整っていて、毎日きつかったです。」
ルイザは警備体制を強化していたことがこうした毒薬入手経路を潰していたことを知り、喜んでいた。
(護衛騎士たちがしっかりしている証拠ね。本当に有難いわ。)
「そう・・それは、あなたにとっては辛い日々だったかもしれないけど、私にとっては警備体制が十分整っている証拠だから知れてありがたいわ。」
「はい。本当にすごいと思っていました。なので、今の所暗殺計画は全く進んでいません。」
「そう・・。ありがとう、ハル。それ以外に何か情報は無いかしら?」
「・・そうですね・・ヨハス様は、伯爵当主代理権が無くなったことがショックだったようで・・伯爵様を暗殺したら俺がここの当主だ!と言っていました。伯爵様を暗殺するのはそれが理由のようです。」
ルイザはそのことを聞いて額に青い血管が浮かび上がった。
「へ・・へえ。そんなことを言っていたんだ。」
「そういうことは、私たちの前ではスラスラ話しますので・・。」
ハルはルイザが少し怒っているのを感じ、(しまった、怒らせた)と少し後悔していた。




