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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

唸れ聖女の鉄拳!~異世界を救った聖女ですが、日本に戻ったらゾンビがあふれる世界になっていました~

作者: 深山鈴

「まことに、まことにありがとうございました」


 国王が床に膝をついて、深く頭を下げた。

 王妃と王女も。

 宰相や将軍や……身分に関わらず、全ての人が深い感謝を示していた。


 うん、やめて?


「ちょ……顔を上げて。私は、そんなことをさせるために魔王と戦ったわけじゃないし」

「ですが……」

「なら、魔王を倒したお礼ってことで命じるけど、いつも通りにして。あなたは、確かにこの国の王女で、そうしないといけないかもしれないけど……でも、それ以前に、私の友達でしょう?」

「……まったく。アヤメには叶いませんね」


 王女が苦笑しつつ立ち上がり。

 他の人達も立ち上がる。


 それから、それならばせめて……という感じで、拍手をしてくれた。


「ありがとう。あたなは、この国の……いや。この世界の救世主だ」

「アヤメ・サイオンジという聖女のことは、未来永劫、語り継がれるだろう」

「本当に素晴らしい。それ故に、元の世界に帰ってしまうことが辛い……」


 そう。


 私は、日本人であり、この世界の人間ではない。

 ある日、聖女として異世界に召喚されて。


 召喚っていうか、それは誘拐だよね? ふざけないで、すぐに戻してちょうだい。

 は? 戻せない? 舐めているわけ?

 よーし、魔王の前にお前達をしばいてやる。


 ……とかケンカをしたり、色々とあったのだけど。

 なんだかんだ、話し合うことで相手を理解することができて、友達もできて。


 仕方ない、やるか。

 そんな感じで仲間と共に旅立ち、三年の長い旅路の末、魔王を討伐することに成功した。


 その間に、私の帰還方法も確立されて……

 そして今日、私は、日本へ帰ることに。


「ありがとう、そこまで惜しんでもらえると嬉しいかな。でも、やっぱり、私の生きる世界はここじゃなくて地球だから。待っている人もいるし、帰らないと」

「そうね……うん。せっかく友達になれたのに寂しいですが、アヤメに無理をさせたままというのは、もっといけませんね」

「大丈夫よ。こうして、私が帰る方法も見つかったんだもの。また、どうにかしてこっちにやってくるから。その時は、一緒に遊びましょう?」

「アヤメ……はい、喜んで!」


 私と王女は握手を交わした。

 決して途切れることのない、友情の握手だ。


「ところで、向こうの……地球では、一ヶ月くらいしか経っていない、っていうのは本当?」

「絶対に、と断言はできませんが、おそらくは心配いらないかと。向こうとこちらとでは時間の流れが違いますからね。向こうの存在であるアヤメが、この三年で、一ヶ月分の成長しかしていないのが、その証拠になるかと」

「そっか。なら、よかった」


 これで憂いは消えた。

 あとは、元の世界に帰るだけ。


 私は、床の上に描かれた魔法陣の上に立つ。


 それから、ぐるりと周りを見回した。

 大事な友達の王女様。

 召喚早々、いきなりケンカをした国王。

 その他、絆を結んだたくさんの人達。


「みんな、さようなら……またね!」


 笑顔で手を振り……

 そして、私は異世界とさようならをした。




――――――――――




「……ん……」


 ふわふわと浮いているような感じ。

 それと、少しの酩酊感。


 それらが収まった後、そっと目を開ける。


「……私の部屋だ」


 バイトをして買った、ゲーミングPC。

 ぬいぐるみをたくさん飾っている、ふわふわのベッド。

 推しのタペストリー。


 三年ぶりの我が家、私の部屋。


「そっか……私、本当に帰ってきたんだ……」


 ちょっと泣きそうになってしまう。

 というか、泣いていたかもしれない。


 三年、異世界でがんばってきたけど……

 一度もホームシックにならなかったかというと、思い切り嘘を吐いたことになるからね。


「よかった、帰ってこれて……って、そうだ! お父さん、お母さん!」


 二人は家にいるだろうか?

 私は、慌てて部屋を飛び出して、リビングに移動して……


「……いないのかな?」


 うちは共働きなので、曜日によっては、昼は仕事で家を空けている可能性がある。


「今日、何曜日だろ? えっと……あれ、映らない?」


 テレビをつけようとしたら、なにも反応がない。

 リモコンが壊れたのかと思ったけど、そもそも、テレビの電源が入っていないみたいだ。


 ふと思い、リビングの灯りのスイッチを点けた。

 反応なし。


「停電?」


 外は快晴っぽいのだけど……なんで?


「まあいいや。スマホで確認しよう、っと」


 自室に戻り、机の上のスマホを手に取り、電源を入れた。

 大容量バッテリーのタイプだから、電源を切っておいたため、一ヶ月経っても安心して使うことができる。


「って、あれ? 圏外になってる……」


 停電の影響で、無線がやられたか?

 いや。

 でも、ネットならともかく、通話もできない状態っていうのはおかしいな?


「日付は……うん。あれから、ちょうど一ヶ月。でも……うーん? 今日、日曜なんだよね。お父さんとお母さん、日曜まで働くほどブラックな企業に勤めていないんだけど……」


 二人はどこに行ったのだろう?

 たまたま、買い物で外出している?

 それとも、この停電が関係している?


「ほんと、どこに行ったんだろ? せっかく帰ってきたのに……わっ、びっくりした!?」


 突然、玄関の方からドンッ! という鈍い音が響いてきた。


 お父さんとお母さんだろうか?

 でも、やけに音が激しいというか……うわっ、また響いた。


 全身で体当たりをしているかのような、激しい音だ。

 それと……

 ガリガリと、なにかを引っ掻いているかのような音。


「なんだろ? ……もしかして、熊でも現れた?」


 最近、熊の出没情報が各地で相次いでいる。

 都会に出現した、という話もあるくらいだ。


 少し離れたところに山があるため、この街に熊が現れても不思議じゃない。


「だとしたら……熊のせいで、ちょっとした事件になっていて、それで、お父さんもお母さんも避難している……とか? うーん……でも、停電の理由はなんだろ? 熊が電柱を蹴り倒した?」


 ダメだ、わからん。

 気がつけば、玄関から響いていた音は消えていた。


 気になる。

 ものすごく気になる。


「えっと……光よ」


 異世界にいた時の感じで、力ある言葉を紡いでみると、手の平の上にぽんと光球が出現した。


「よし! 聖女の力、地球に戻っても使えるみたいね」


 それなら、熊なんて恐れることはない。

 ワンパンよ、ワンパン。

 ワンパンガールだね。


 妙な自信をつけつつ、私は靴を履いて、玄関から外に出た。


「……んっ……」


 眩しいくらいに空で太陽が輝いていた。

 異世界の三つの太陽に慣れていたけど……そうだよね、本来は、太陽は一つだよね。


 今日は暑いくらいだけど、でも、この暑さが懐かしくもある。

 ちょっとしんみりしてしまう。


「って、いけないいけない」


 さっきの音がなんなのか、確かめないと。


 我が家はマンションだ。

 階段を降りて、一階を目指す。


「停電しているから、エレベーターは使えないか。これくらいで疲れることはないんだけど、うーん、めんどい」


 そして、エントランスへ。

 停電の影響なのか、オートロックの扉は解除されている。

 誰でも簡単に入れる状態だ。


「不用心だなあ……だから、熊もやってきたのかな? あれ? でも、熊がマンションに侵入した、なんて話は聞いたことないんだけど……うーん? 私が知らないだけ?」


 釈然としないものを感じつつも、マンションの外へ。


 人がいない。

 音がしない。

 まるで、世界に私一人、取り残されたかのよう。


「……あっ、誰かいた」


 妙な不安を感じた時、少し離れたところにサラリーマンらしきスーツ姿の男の人が見えた。

 なにをするわけでもなく、ぼーっと立っている。


 なんだろう?

 後ろ姿だから、なにをしているかよくわからない。


「すみません」

「……」

「あれ、聞こえてない? すみませーーーん!」

「……」


 最初の時より大きな声をかけるものの、やはり反応がない。

 もしかして、無視されている?


 なんだよ、もう。


 ちょっとイライラしつつ、男の人に近づいていく。

 そして、あと少しというところで……男の人が振り返る。


「オォ……あぁあああ、オァアアアアアア……!!!」

「……え?」


 男の人の首は、獣に噛みちぎられたかのようにズタズタになっていた。

 流れる血がシャツを赤く染めている。


 肌は青白い。

 目は瞳孔が開いていて、だらりと舌が垂れていて、手の爪はいくつかが剥がれていた。


「アァ、アアア……おおぉおお……!!!」


 意味不明な叫びを発しつつ、男の人は、ふらふらとよろめきつつ。

 しかし、意外に早く、的確な動きでこちらに近づいてくる。


 救いを求めるかのように両手を上げて。

 あるいは、お前も道連れにしてやる、という恨み節だろうか?


 ボロボロの男の人は、私の目の前に迫る。

 そして、いくらか歯の抜けた口を見せるように大きく開いて、噛みついて……


「うるさい」

「ギアォウ!?」


 タンッとその場でステップを踏んで、軽く跳躍しつつ、回し蹴り。

 ソバットが綺麗に決まり、男の人は吹き飛んで、近くの家の塀に叩きつけられた。


「お、オオオォ……」

「オオオ、じゃないのよ、まったく。はいはい、ゾンビゾンビ。きゃーこわーい。助けてー……なんて、なるわけないでしょ、このボケゾンビ!」

「フゲェ!?」


 ゴミ捨て場に落ちていたビールの空き瓶を拾い、それで思い切り頭部を殴りつけた。


 女子高生が殴りつけたわけじゃない。

 異世界を救った聖女の力で殴りつけたのだ。


 ゾンビは数十メートルほど吹き飛んで、今度こそ、完全にその機能を停止した。


「はっ、一昨日来なさい! この雑魚め!」


 ビール瓶を放り、吐き捨てるように言う。


「ゾンビ? はぁ、なによ、その雑魚は。こちとら、異世界で魔王を相手にしてきたのよ。今更、ゾンビとかいう雑魚に怯えるわけないでしょ! なにそれ、私、舐められているわけ? こんな展開が……うん? ちょっとまった」


 ふと、冷静になる。


 ゾンビ?

 異世界ならともかく、現代日本で?


「いやいやいやいやいや、ありえないでしょ!?」


 日本にゾンビがいる。

 ようやくその異常事態を自覚して、私は、思い切り慌ててしまう。


「え? え? ど、どういうこと……? ここは日本じゃなくて、まだ異世界……え、でも、私の家は確かに私の家だったし……周りの景色も日本そのものだし」


 いったい、なにが起きているのだろう?


 深呼吸。

 努めて冷静になり、現状を分析する。


「……もしかして、今、ゾンビパニックが起きている?」


 そんな答えを導き出した。


 そんなバカな。

 漫画や映画のような展開、実際に起きるわけがない。


 普通ならそう考えるのだけど……


「でも……私、異世界に召喚されるとかいう、これ以上ないほど非現実的な事態に直面したからなあ。ゾンビパニックも、起こる時は起きるかもしれない、って思えちゃうんだよね」


 まいったな。

 まだ断定はできないけど、でも、ゾンビパニックが起きたと考えた方がいいだろう。

 たぶん、それと限りなく近い状況に置かれている。


「異世界に召喚される前は、当たり前だけどゾンビパニックなんて起きていない。ということは、私が召喚された後、なにかが起きた……? 停電して、スマホが圏外なのもそのせい? いったい、どれくらいの規模で? この街だけ? それとも県? あるいは日本……世界全体で?」


 ……ダメだ。

 あまりにも情報が足りていない。

 異世界から戻ってきたばかりの私は、この世界では、右も左もわからない子供の迷子のようなもの。


「とにかく、誰か生存者を探して情報を手に入れないと。まずはそこから……うん?」

「「「おぉおおお……ァアアア、オオオ……!!!」」」


 さきほどの男に惹かれてきたらしく、大量のゾンビが現れた。

 だいたい、二十体ほどだろうか?


 これがゾンビ映画だとしたら、大ピンチだ。


 力は強く、噛まれたらおしまい。

 そんな化け物が二十体。

 逃げることしかできず、しかし、やがて追いつかれてしまい、仲間が犠牲に……という展開だろう。


 でも。


「はいはい、わかったから。今、ゾンビパニックが起きているっていうのは、ちゃーーーんと理解したから……ね? 雑魚は引っ込んでいてくれる? ……ターンアンデッド!」


 聖女の魔法を唱えて、ゾンビ達が光に包まれた。

 全てを浄化する神聖魔法だ。


 ゾンビ達は抵抗することはできず、悲鳴をあげて体を震わせて……

 そのまま塵に帰る。

 服だけが残り、ぱさりとその場に落ちた。


「ふふん、どんなもんよ♪」


 伊達に聖女はやっていない。

 ゾンビの天敵とも言える存在だから、いくら現れようが……


「って……あ、あれ?」


 目眩を覚えて、ふらりとよろめいた。

 立っていることができず、その場にしゃがみこんでしまう。


「……気持ち悪い」


 この症状、覚えがある。

 異世界に召喚されたばかりの頃、魔力が足りず、枯渇してしまった時に起きた症状によく似ている。


「魔法を一つ、唱えただけで、魔力が底を尽きそうになっている……? そんなまさか。魔王と戦った時は、今の何倍も魔力を消費するような魔法を連発したのに……あ、いや。待てよ? そういうこと……なのかしら?」


 ここは現代日本であり、異世界ではない。


 異世界には、魔力という、日本にはない物質があふれている。

 しかし、日本にはそれがない。

 あるいは、あったとしても極端に少ない。

 だから、私の魔力もがくんと減った。


「……そう考えると辻褄が合うわね。聖女としての身体能力はそのままみたいだけど、でも、このままだと、魔法を連発して無双することはできない……終末世界も楽勝、っていうわけにはいかないか」


 なかなか頭が痛い事態だ。

 そうそう簡単にやられることはないと思うけど、魔法の使い所に関しては、きちんと考えないといけない。


「まあ、元々、不思議いっぱいの力だから、人前で使うわけにはいかないし……ちょっとした制限がついた、って考えることにしておこう。うん! 私は、どんな時でも前向きにいくのよ!」


 これが私の武器、ポジティブハート。

 この根性と気合で異世界を生き抜いてきた。


 なら、ゾンビパニックの日本だとしても、しっかりと生き抜いてやる。


「って、またゾンビだし……」


 さっきのようにたくさんじゃないけど、一体。また一体と現れた。

 今度は、散発的に出現するみたいだ。


「ま、一体ずつなら楽勝かな?」


 魔法は連発できなくても、魔王と戦うことができる聖女の身体能力がある。


 殴る。

 殴る。

 殴る。

 たまに蹴る。

 時折、思いついたように投げた。


 そうやって、近くにいるゾンビをどんどん蹴散らしていく。

 もしかしたら、近くにお父さんとお母さんがいるかもしれないし、家の安全のため、できる限り数を削っておこう。


 倒して倒して倒しまくり。

 そうして、三十分ほどが経ったところで、援軍が完全に途絶えた。

 この辺りのゾンビはだいたい倒したみたいだ。


「よし、討伐完了! こうしていると、異世界の冒険が懐かしく思えてくるわね」


 王女は元気でやっているかな?

 あと、勇者のことも気になる。


 みんな、元気だといいんだけど……


「……ひっく、ぐすっ」

「うん?」


 ふと、泣き声が聞こえてきた。


「これ……公園かな?」


 気になり、足を運ぶ。


 公園は、遊具が壊れるなど、けっこう酷い有様だった。

 端の方に、ゾンビに食べられたと思われる人の死体がある。


「……ごめんね」


 異世界に行っていたものだから、今更、人の死体で驚くようなことはない。

 ただ、さすがに感傷を抱くことはあり、悲しさと寂しさを覚えた。


 できるなら丁寧に弔ってあげたいけど……

 今は、この泣き声の方が気になる。


「えっと……こっちのトイレかな?」


 女子トイレの方から泣き声が聞こえてきた。


 女の子……かな?

 泣いているっていうことは、生きている、っていうことだよね?


 やった、初めての生存者だ。

 情報が手に入る。

 でも、それ以上に、誰かが生きていてくれたことが嬉しい。


 私は足取りも軽く、トイレに入る。

 そして、コンコンと個室をノックした。


「ひぅ……!?」

「あ、ごめんね、驚かせちゃった? 大丈夫。私はゾンビじゃないよ」

「え、え……ほ、本当に……?」

「本当、本当。だって、ゾンビは、こうしてちゃんと喋ったりしないでしょ?」

「う、うん……」

「私は……正義のお姉ちゃん! あなたを助けに来たの。だから、ここを開けてくれないかな?」

「……開けるね」


 よかった。

 どうにかこうにか、警戒心を解くことができたみたいだ。


 強引に入ることも可能だけど、それじゃあ、逆に警戒させるだけ。

 向こうから開けてもらう、っていうのが大事だよね。


 そして、カチャと鍵が開けられて、扉が……


「ぎゃああああああーーーーー!!!?」


 中から小さな女の子が姿を見せて、しかし、私を見るなり悲鳴をあげて、そのまま気絶してしまう。


 え? え?

 ど、どういうこと……?

 私、悲鳴をあげられるようなこと、したっけ……? していないよね?


 ということは私、悲鳴をあげられるような顔をしてる……?


「マジか……」


 異世界に行って修羅場を何度も潜り抜けたせいで、いかつい表情になっていたのか?

 それとも、顔そのものがいかつく……?


 凹む。

 女の子として、私は終わりかもしれない……


「ん?」


 ふと、トイレの鏡に私が映る。

 それを見ると、あちらこちらが血で赤くなっていて……

 頬や首の辺りも血がついていて……


「……あ、そっか。さっき、ゾンビを倒しまくった時に返り血を浴びていたんだ」


 これじゃあ悲鳴をあげられて当然だ。

 人間だと思っていたら実はゾンビだった、っていうことなっちゃうからね。


「ってか、ちょっとやばいかも」


 異世界のゾンビは、なんてことない雑魚モンスター。

 でも、日本のゾンビは?


 映画や漫画の知識だけど、噛まれたり血を媒介に感染するのが基本だ。

 感染を隠していて、後々でゾンビ化してさらなる犠牲者が、っていうのも基本。


「ま、私はそんなことにならないけどね……アンチドーテ」


 解毒魔法を唱えると、体から悪いなにかが抜けていくような感じがした。


 これでよし。

 聖女の魔力、舐めるなよ?


「とはいえ……はぁあああ、疲れる。たかが解毒魔法一つで、これだけごっそり体力を持っていかれるとは」


 ちょっと倒れてしまいそう。

 でも、ここで倒れたら、この子を誤解させたまま。

 なんとか、がんばらないと!


「……ふぅ」


 自然と吐息がこぼれた。


「異世界に聖女として召喚されて、魔王と戦うハメになって。やっと帰ってきたと思ったら、今度はゾンビパニックが起きていて……私の人生、ハードモードすぎない?」


 神様に意地悪されているのではないかと、そんなことを本気で考えてしまう。


 とはいえ、運命なんかに負けてなるものか。

 そんなものがあるとしても、自慢の拳で殴り飛ばしてやる!


「よーし、気合入ってきたわ。ゾンビだろうとなんだろうと、かかってきなさい! 聖女の力と、この鉄拳で全て粉砕してやるわ!」


 決意表明のように、私は力強く叫んで。


「「「オオォオオ……!!!」」」

「だからって、本当に来なくてもいいのよ!?」


 現れたゾンビ達に、再び鉄拳を振るうのだった。




――――――――――




 ……この時のエピソードが元になり、後々、私は『紅の聖女(血まみれという意味で)』なんて呼ばれることになるのだけど、それは別の話。


 ゾンビパニックに陥った世界を聖女の力で生き抜いて。

 異世界の時と同じように、色々な経験をして、たくさんの絆を結んでいくのだけど……それもまた別の話だ。


 今はただ……


「おらぁっ、かかってきなさい! あんた達、まとめて全部、いやーーーな香りがするださいオブジェに変えてあげる!!!」


 鉄拳を振るうだけだった。

読んでいただき、ありがとうございました。

ちょっと中途半端ですが、ゾンビを殴り倒す女の子とか書きたいな、とふと思い書いてみました。

どんな性癖……?

楽しんでいただけたら嬉しいです。

感想などいただけると、もっと嬉しいです。

よろしくお願いします。

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◇◆◇ お知らせ ◇◆◇
新作を書いてみました。

【悪役令嬢ものの悪役王子に転生してしまったので、改造コードを使ってバッドエンドを回避しようと思います】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
この一ヶ月の間に一体なにがあったんだ!? やはりアン○レラ社だろうか?
続編希望。 しかし聖女の力でも、ゾンビから人間へは無理で、強制昇天ですか。
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