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復讐のブレッドガンナー。

長年のアイディアを書いて見ましたが、まだ足りない。戦力の損耗数もカウント出来てないし、艦隊機動も書けてない。


 現代戦はミサイルの撃ち合いに過ぎない。

 

 CL1014。巡洋艦クラスの量産型宇宙戦闘艦。乗組員、ユウ。彼は自機の操作の準備をしている。彼は一般兵に過ぎない。愛国心も正義感もないただの兵だ。それでも敵と戦わずにはいられない。奴らはユウの敵だから。そう、彼は、姉を、希望を、誇りを奪われたのだから。


 ユウはコンソールに量子接続。出撃準備完了。

 

「CL1014ザッコ イーグル03、発進します」


 艦搭載戦術AIのアイが元気に返事をした。


「りよーかい、ちゃんとナビゲーションしますからねー」


 ユウは、はあ、とため息をつく。


「あのな、何で軍所属のAIなのにそんな軽いんだ?」


「やだな、出撃前の緊張をほぐしてるんですよ。肩に力入りすぎみたいだし。こー見えても私ベテランですよ。じゃ、頑張ろー」

 

 彼の先行端末機(パスファインダー)ザッコは同僚機とともに射出される。現代戦の主役足る兵器。


 先行端末機(パスファインダー)は、色々な呼び名や役割が説明されている。だが、要するにミサイル。敵まで移動し、武器を放ち、あとはぶつかるだけの兵器。


 ザッコは機体正面に追加装甲、手足にあたるマニュピレーター一基につき二つの加粒子砲を計八門もつ。補助兵装としてコイルガン二門。肩にあたる部分のハードポイントに装備。腰にあたる部分の二ヶ所のハードポイントには冷却剤の追加タンクを装備。背面には固定の冷却剤タンクと放熱器。赤外線の形で放熱する。


 なぜ先行端末機(パスファインダー)に手足があるのかというと、船外作業のため、次いで、宇宙施設や地上での戦闘に使用するためでもある。今でこそ高効率の推力比の擬似慣性駆動(クレア ドライブ)が実働しているにしろ、宇宙船の積載量には限度があり、地上戦闘専門の装備は積めない。

 

 ユウはザッコを加速させる。擬似慣性駆動(クレア ドライブ)、自然発生消滅型マイクロワームホールを介在して周囲の質量に電気的に運動エネルギーを移転し推進する駆動機(モーター)はパワフルだ。


 正面には同じようなCL、巡洋艦が整列し、さらに先行端末機(パスファインダー)を正面に展開している。敵の機体はポーン。同じ先行端末機(パスファインダー)。現代戦は先行端末機(パスファインダー)の撃ちあいだ。


 ただし、例外もある。一番正面にいる有人戦闘機。帝国正式戦闘機(デミ エンジェル)ドミニオン。先行端末機(パスファインダー)と同じように手足を装備している。しかし、その姿は人型であり、兵装や追加装甲、放熱剤増槽や翼のような放熱器を積んだ姿は全身鎧を装着した天使。最も戦闘距離からはその姿は確認さえも出来ない。帝国のプロパカンダ映像では確認できるが。


 所変わってCL1014のCIC(戦闘情報指揮所)。戦闘準備のため慌ただしい。


「敵からの通信です」


 そんな中、艦のオペレーターが報告した。それを聞いた艦長はる鼻を鳴らす。


「ふん、貴族(ノーブル)の言うことはわかっている。艦内放送。繋いでありがたい貴族(ノーブル)の戯言を伝えろ」


 オペレーターは通信を艦内通信に繋ぐ。音声のみ。最も敵は画像も送っているのだが、それは艦橋やCIC(戦闘情報指揮所)のみの対応だ。


「やあ、親愛なる自由惑星連合を自称する劣等民族。君たちに幸せになる方法、帝国への隷属を勧めにきた。私は代表たる公爵(デューク)級の貴族(ノーブル)ディオン クリストファー公爵だ。サイスペック最高位の私がやって来た。光栄に思うがいい。本来私はこんなところには来ない」


 サイスペック、要するに超能力である。帝国は、サイスペックの強さで身分を決めている。公爵級はかなりの力を持つ。それこそ一軍に匹敵する存在として。



「はっきり言おう。君たちに勝ち目はない。まあ、もっともこれだけ数を揃えたのだ。勝てるとでも妄想しているのだろう。無駄の極みとは思うが。それでも我が親愛なる皇帝陛下は心優しく、お前らにも一言言えとおっしゃった。よく聞け」


 金髪碧眼の細身で筋肉質、均整がとれている美形の若者は嘲るように言い切った。


「降伏しろ。そうすれば命だけは助けてやる。そうでなければ民族単位で殺戮する。どちらが得かは自明の理だ。3分待つ。答えろ。でなければ攻撃する」


 自由惑星連合側の艦隊指令が旗艦から通信を開く。風采が上がらない中年の小男だ


「親愛なる皇帝陛下の部下の公爵殿、あなたの主張は受け取った」


「そうか、で、返答は?」


 少しイライラした調子で聞く公爵。


「申し訳ない。我が自由惑星連合の指導層は複数の代表による合議体で、すくには決められんのてす」


 鼻で嗤う公爵。


「ふん、迂遠な奴らだな。まあ、いい。宣戦布告する」


 そう言うと、公爵はいきなりドミニオンの加粒子砲を撃つ。ビームが一機のザッコを貫き爆散させた。


 CL1014の艦長は素早く指示。


「交戦開始」


「距離12000。もうすぐ加粒子砲の射程範囲よ。入ったらすぐに撃ってね。イーグル1、イーグル2、側面に回って。イーグル3とイーグル4はこのまま直進」


 CL1014の戦術支援AIの指示を受け、イーグル3ことユウのことをザッコは加粒子砲の準備をする。安全装置解除。


「全機、戦闘開始」


 艦長からの指示に、ユウはザッコを加速。ドミニオンに接近する。そして脚部にあたるアームの加粒子砲四門を連射した。ビームが発射されたあとは、砲身は切り離される。放熱と、デコイにするためだ。更に一発発射。他のザッコもドミニオンが中心になるように半球状に展開。四方からビームを乱射する。


「ビーム命中率5パーセント、なに、その命中率」


 ドミニオンはざっとよけ、もしくは機体に発生する防御フィールドで受け止める。


 装甲や火力、機動性、あらゆるスペックはドミニオンのほうが高い。いわゆるザッコは量産機。さらにコストを下げている。一定の性能は維持しているものの、その差は大きい。


 ドミニオンのビームがイーグル4を貫く。それを見てAIがわめく。


「イーグル4撃墜。何で向こうの攻撃は通るのにこっちのはとおらないの。いくらお金がかかってても、こんなの異常よ」


 AIのぼやきに思わず口を挟むユウ。


「アイ、うるさい。だいたいわかってたことだろ。お前のデータベースなら理解出来てるだろ」


「実際に見ると聞くとでは大違いよ。何あれ、反則よ」


貴族(ノーブル)だからね。サイスペックの分、性能が向上するから」


「なによ、それ」


 貴族(ノーブル)はサイスペックにより機体の強化が可能である。攻撃力、防御力、機動性、そして感覚。全てに機体以上のスペックを付与できる。


「うあぁぁぁぁ」


「イーグル1!」


 隣のユウの艦のザッコチームのリーダー機がビームに貫かれた。同時に爆散。近くの外の艦のザッコも貫かれ爆発する。


「このこのこのこの」


 イーグル2がビームを乱射。辺りに赤外線反応をばらまく。しかし、次の瞬間ドミニオンのビームがザッコを直撃。爆散する。お陰でこの領域は、赤外線反応によりセンサの精度がおちる。それでも気は抜けない、と、ユウは思う。


 アイが叫ぶ。


「ドミニオン、接近中、何て加速度なの?」


「そりゃあっちは貴族(ノーブル)様の特別機だからさ」


 ドミニオンはビームを放ちザッコを爆散させる。ビームの射程、威力、遥かに向こうが上だ。ドミニオンの動力が艦船用の半物資リアクターを小型化したものに対して、ザッコは反陽子バッテリー。出力も価格も桁が違う。更にサイスペックによる増強。かなうものではない。


「はははは、安物のおもちゃで、このドミニオンがおとせるか。劣等種族とは違うのだよ。お前らは我々貴族(ノーブル)に支配されてこそ幸福になれるのだ。そんな単純な考えさえ持てない連中は生きている価値すらなし」


 ドミニオンは公爵の台詞をブロードキャストしながら戦いを続ける。帝国の帝国正式戦闘機(デミ エンジェル)はこのようにオープンチャンネルで戦いをするように義務付けられている。貴族(ノーブル)の威光を示すためにと。貴族(ノーブル)の大半はこのような放送はバカらしいとは思っているが、公爵は本気で帝国のためにやっているようだ。最も貴族(ノーブル)の大半は自らを優等人種と思っている。公爵の主張は貴族(ノーブル)の基本だと思ってよい。


「なによ、一応穏和な私でもむかつくわね」


 ユウは、アイのぼやきを無視。ドミニオンの回りのザッコの配置を見る。数がどんどんと減っていくザッコ。勿論、想定内。高い地位の貴族(ノーブル)は確かに強力。だが、それでも側面に何機か上手くダメージを与えられそうなザッコを見つけた。ならば、ユウがやるのはその援護。


「アイ、この機体が接近できそうだ。支援しつつこちらも近づく。ベクトル構成頼む」


「わっかりました。私、がんばります!」


 ユウのザッコはタイミングを合わせてビームを撃つ。ドミニオンはザッコの集中砲火をうけるが、固有のシールドで防御。さらにサイスペックで強化しているのだろう、ダメージが与えられない。


 ユウは、さらにザッコを加速させ、ドミニオンの正面に出る。即、敵機の攻撃意思を感じたので正面装甲で受ける。


「正面装甲融解。強度低下。パージします」


「頼む」



 正面の追加装甲をパージ。ユウは更に出力をあげ機体を加速。過剰な発熱をバックパックの放熱剤を放出することで冷却していく。


「冷却剤の消費が激しいです。節約を推奨します。でも、ベクトル変更こまめにしないと撃墜されちゃう!」


 さらに接近したユウは残った加粒子砲を全部撃つ。


「ビーム命中。赤外線反応からダメージ確認。やりました。でもたいしたダメージではないですが」


「貶すなよ」


「誉めてるんです」


「褒め方かあるだろ」


「戦術支援用の私にそんなこと言われても。アラート、ドミニオンがこちらに向かって来ます。何で?」


 ユウの射撃がドミニオンを刺激したらしく、ビームの乱射がユウのザッコを攻め立てる。コイルガンを乱射しながら極端な加減速とベクトル変更による回避行動を繰り返すザッコ。


「機体に強烈な負荷がかかってます。また冷却剤の消費が激しいです。節約を推奨します」


「と、言われても。敵に言え!」


「言えたら苦労はないですうー」


 さらに擬似慣性駆動(クレア ドライブ)が過熱。強制冷却のため、背面から放熱剤を大量に放出、その白熱した閃光は旧態の宇宙船の推進材の輝きに似ている。光とともに強制冷却は続く。が、長くは続かない。


「冷却剤切れました。冷却機能低下。機体能力低下します」


「くそ、もう少しなのに!」


 それでも出力を維持。通常放熱では放熱しきれず機動力が落ちる。それでもあと一歩でドミニオンに届くと言うところだ。しかしドミニオンのビームが直撃。ユウのザッコは爆散した。


 ユウの意識は途切れた。


「CL1014ザッコ03、撃墜されました」


 CL1014のCIC(戦闘情報指揮所)てオペレーターが報告する。それに対して艦長が指示。


「リロード急げ。ドミニオンの位置は」


「本艦より二時、N30度のベクトル。第二艦隊方向に向かってます。あっ、第二艦隊、ドミニオンの砲撃を受けてます」


 艦長は苦々しげに唸る。


「腐っても貴族(ノーブル)ってことか。通常の射程より遥かに長い。サイスペックは伊達ではないか」


「CL2012撃墜されました。CL2016大破、CL2008小破、CL2006小破、CL2019中破」


 艦長はオペレーターの艦艇撃墜報告をギリギリと歯をくいしばりながら聞く。その間に通信士が報告する。


「艦隊指令部よりに入電。第一艦隊は、ドミニオンの正面に展開。これを向かい打てとのこと。第二艦隊は後退。第三、第四艦隊はドミニオンの側面に展開しこれを攻撃せよ。なお、特務艦が側面からドミニオンを倒すそうです。第五艦隊は敵艦隊に対応せよ。とのことです」


 艦長は怒鳴る。


「簡単にいってくれるな」


 ここで副長が諦め顔で言う。


「しかし、第一艦隊が一番ドミニオンに近いですし、後の艦隊が側面に回るのは仕方ないですよ」


 艦長は憮然とした様子だ。


「まあ、わかってはいるがな。ところでユウ、まだ回復しないか?」


 艦長の声に、ユウは意識がはっきりする。


「い、今覚醒しました」


 ユウはザッコ、先行端末機(パスファインダー)の遠隔操作手。基本的にガンナーと呼ばれる。ザッコに量子的に意識を接続してオペレートする。ただし、先行端末機(パスファインダー)が破壊されると量子情報反動か発生し、オペレーターは意識を失う。ユウはその状態になっていたのだ。強制断絶は神経系に微細な損傷を与えるため、危険とされている。


 艦長は、難しい顔でユウを見る。


「早速で悪いが、リロードできるか?」


「はい、出来ます」


「よし、ユウのザッコをリロード。ドミニオンの正面に展開して奴を食い止める。ユウ、本艦にダメージを与えないようにザッコは使い捨てろ、いいな」


 ユウは了解しました、と言って呟く。いつもと一緒だな、と。


 但し命懸けでもある。ユウが抜かれればこの艦は破壊される。ユウのみならず、艦乗員すべての命にかかわる。


 ユウはザッコ用のコンソールに量子接続。意識がザッコに接続される。アイの声が出迎えた


「お帰りなさい、ユウ」


「ただいま。ああ、あんまり帰って来たくなかったけどな」


「機体装備は追加装甲と八本の簡易加粒子砲八門。補助兵装はコイルガン。背部バックパックに放熱剤補給完了。いつでも発進出来ます」


「いつもの奴だな、わかったよ。アイ。では、CL1014ザッコ03、発進します」


 ユウのザッコは発射菅から射出され宇宙を舞う。ベクトルをドミニオンの方に合わせ、リミッターギリギリて直線加速。ビームの輝きが舞うごとに、他のザッコやCLが破損、撃墜される。


 その破壊された残骸をダミーに近づく。更にビームの輝きが増す。


「イーグル3、リロードしたか」


「はい、イーグル1 」


 CL1014ザッコの隊長機が聞いてくる。勿論、隣のシートにいるのだ。本来なら声が聞こえるはずだが、量子接続しているため、その回線で通信している。


「すまんがベクトル変更頼む。俺に策がある。早急に合流してくれ」


「はい、わかりました」


アイがぼやく。


「ほんと、この小隊、人使い荒いわね」


 因みに基本的にザッコの量子接続が可能なのは数時間、また、接続に負荷がかかるので、三回が限度だ。すでにCL10のザッコは七機撃墜されている。隊長たちはこの機体が撃墜されればもうザッコは使えない。



「全艦、隊列を整えろ。0005後に全艦突入。ドミニオンの息の音を止めろ。なに、数だけはある。御貴族(ノーブル)様に目にもの見せてやれ!」


近くにいたイーグル1、イーグル2と合流。



「ユウ、俺も、イーグル2も、もう武器も放熱剤もない。あと、再撃墜もされている。二人で先行して盾になる。お前はドミニオンの喉元に食らいつけ。奴は、近接に持ち込まないように機動している。近接すればそこに勝機がある筈だ」


「ま、隊長の策が当たれば昇進出来るよ。ドミニオンのビームの威力が高ければ三機とも撃墜されるけど」


 イーグル2の女性ガンナーが割り込む。


「……はい、わかりました。けと、レイは?」


 ユウが聞いたのはイーグル4のこと。


「さっき撃墜された。ちょうどお前と同じくらいに」


「盾がへった」


 ユウの物言いに、四番機のガンナーが通信してくる。


「悪いな! お前の露払い出来なくてな。これでお前なんも出来なかったら笑ってやる」


「せめて一矢報いてやりますよ」


「じゃ、行くぞ」


 隊長の号令とともに、ユウたちは進行する。先頭は隊長機、次に二番機。最後にユウのザッコ三番機。もっとも多少ベクトルを外しては修正し、三機同時に撃破されるのを防いでいる


 先行端末機(パスファインダー)は要するに砲つきのミサイル。出来るだけ散開して運用するのかセオリーだ。それに反した機動。


 やがて、ドミニオンのビームが隊長機を直撃する。半壊した隊長機ををユウは回収しょうとする。アームに装備されたワイヤードアームを射出。細かい作業時に飛ばす装備で隊長機の装甲の一部を手に入れた。


「なにやってんの!」


 イーグル2の女性がわめきながら最後の粒子砲を撃つ。砲身をパージ。さらにコイルガンを連射。軽量、低加速の弾丸なので威力は低いが、相対速度の差が高ければダメージは増大する。


 しかし、いくらかは命中しているはずなのにダメージは通っていない。


 それでもドミニオンはこちらをむいてビームを撃つ。それは二番機を貫き爆発させた。赤外線反応が増大し、ユウの機体を隠す。


「アイ、動力をカット。破片に紛れてドミニオンに近づく」


「了解。でもせこいね」


「うるさい」


 残骸のなか、ドミニオンは無人の野を進むかの如くビームを撃ちながら進む。そして、ユウのザッコに接近してくる。


「動力オンライン、加速開始」


「了解! 」


 そしてある程度接近して、加粒子砲を発射する。断続的に光の矢を放ち、そのあとパージされ、ダミーの役割を果たす。一瞬パージした加粒子砲にドミニオンのビームが命中。そのまま爆発するが無視。直線的なベクトルでドミニオンに接近する。さらに隊長機の残骸もパージ。それにもビームが直撃。が、他のザッコや巡洋艦の攻撃が始まり、そちらの方にもビームが飛ぶ。その間にも接近。


「最接近、1000切りました」


「回避しながら最大加速度」 


 ドミニオンは、ユウのザッコに向けてビームを撃つ。何とか反らす。


「正面装甲融解。パージします。冷却剤あとわずか」


「わかってる。ザッコが数機接近してる。気を引くぞ」


 ユウは、ドミニオンの気を引くために粒子砲を連射。ビームの輝きはドミニオンに命令するものの、その装甲を貫くには至らない。しかし、公爵(デューク)のプライドを傷つけることには成功したようだ。


「ええい、雑魚、うるさい」


 その通信後にユウはランダム加速と大きくベクトル変更。ビームの直撃を何とかかわす。


「なんなんだ、雑魚の癖にしつこい」


 そりゃそうだろう、とユウは思う。貴族(ノーブル)は、やりたい放題やっているのだから。特にこの国は多くの帝国からの亡命者が在籍している。そしてそのうちの多数が軍にはいる。貴族(ノーブル)に恨みを持つために。


「俺も、貴族(ノーブル)に恨みがあるんだよ、特にお前らにはな」


「大丈夫、みんなそうだよ」


 ユウは、最後の粒子砲を撃とうとするが不発。即座にパージ。同時に粒子砲にビームが直撃し、ユウのザッコにもダメージが入る。全ての感覚が途切れた。だが、ユウの意識は途切れない。


「アイ、どうした?」


 アイの答えはない。


「なに、ブラックアウトか」


 ザッコとの接続が切れずにすべての機能が使用不能になるのかブラックアウト。ユウは、しばらく接続を切るか迷う。が、しばらく待つことにした。自己修復が出来るならすぐに反応があるはずだから。


 そして数十秒が過ぎ、ユウがリロードするか、と思ったの時にブラックアウトが終わった。情報が入ってくる。


 かなり近くにドミニオンがいた。そう、突撃出来るくらいに。


 ユウは、ザッコの出力を、最大にする。同時にコイルガンを乱射。最悪囮になればいいからと。


 擬似慣性駆動(クレア ドライブ)が最大駆動し、膨大な熱が発生。放出される大量の放熱剤は古い宇宙船の推進剤の輝きのように白熱し、尾を引いた。まるで流星のようにドミニオンに向かって飛ぶザッコ。


「アイ、ワイヤードアーム」


 ユウはアイに指示するが、反応がない。


 コイルガンの弾を撃ちつくしたユウは、四本のマニュピレータからワイヤードアームを射出、展開する。引っ掻けて少しでもダメージを与えられるように。


「なに、撃破したのじゃないのか!」


 ドミニオンはビームを放つが、照準がずれたのかアームを吹き飛ばしただけでおわる。しかし、ドミニオンも灼熱の放熱剤を放出しザッコの突撃を回避した。


 が、ユウはワイヤードアームを機動。一本がドミニオンをとらえる。二機のベクトルはほぼ正反対。衝撃かザッコとドミニオンを襲う。


「ぐあっ」


 ドミニオンのブロードキャストからカエルが潰れたような叫びが響く。


 しかし、ユウは構わすワイヤードアームを巻き取る。同時にザッコに装備されている作業用のビームマチェットを展開する。


 接近するザッコにドミニオンの機体が肉眼で確認出来た。いや、光学センサだが。


 ユウのザッコは輝く放熱剤を撒き散らしなから、ドミニオンにぶつかった。強い衝撃が二機を襲う。ザッコのいくらかの機能は失われたらしく、一部のセンサが機能しない。アームの一つも機能していないようだ。


 それでも残ったアームでしがみつきそして迷わすドミニオンの頭部にマチェットを振り上げ振り下ろす。何度も何度も何度も何度も。


 公爵(デューク)のブロードキャストはその轟音を拾っているらしい。時おり金属が砕けるのか破片が飛びちる。











 

「お前だったのか。どおりで負けるはずだ。卑怯で下劣な下等民族をお前が操っているのならな」


 目の前にいるのはディオン クリストファー公爵(デューク)。友人と信じていた男。裏切り者。椅子に座り紅茶を嗜んでいた。目の前にはチーズケーキ。よく姉が作ってくれていた。


「何だ、ここは?」


「サイスペックの感応に寄って作られた量子通信場、と言ったところだな。サイスペックには無限の可能性がある」


 均整が取れた端正な身体を物憂げにさらすディオン。


 相変わらずの元親友にユウは苛立ちを感じながらも肩をすくめた。


貴族(ノーブル)も一般人に負ける。わかるだろう。間違ってるんだ。お前も言ってたのに」


貴族(ノーブル)は間違わないさ。何せ、予知が出来る貴族(ノーブル)が何人もいる。それだけでも貴族(ノーブル)が人類を支配するべきなのは自明の理だ」



「わずか数人で銀河を支配できる訳がない。貴族(ノーブル)と言えどもひとだよ」


「我々はヒトより優れた種だよ。まあ、お前も可哀想だな、自業自得だが。愚かなやつだよ」


「ほんの少し一般から意見を取り入れるのがそんなに悪いことなのか?」


「絶対的に正しい選択の前では、その他の意見はノイズにしかならんよ」


 少しイライラした様子でディオンは話す。


「そうではないよ、ディオン。確かに数値で表せるものはそうかもしれない。しかし、人は多様だ。その個性には正解はないよ。それぞれの正解がある。それぞれが正しい答えをもっている。それを全て許容する答えなんて出せはしないよ」


「帝国の、貴族(ノーブル)のための答えなら出せるさ」


「ああ、結局サイスペックの能力で人間差別するお前らは嫌いだ。皇帝陛下にサイスペックを奪われたら手のひら返し。友人と思っていたお前には裏切られ、放逐された。それだけじゃなく、俺を助けてくれた人々を極刑に処しただろうが。これでお前らをどう思っているか、わかるだろう。少なくともいい感情は持てないな」


「皇帝陛下にそんなこと進言するからだ。第一、お前の姉も見捨てただろうが」


「ああ、だから亡命して、軍人になって、お前らを倒すつもりだよ。帝国を」


「そうか、でもな、無理だよ」


 嗤うディオン。


「なにいってやがる。既にお前も負けつつある。お前のバカにしていたおもちゃによってな」


「そうか、しかし、それでもむりだ。お前は、これから俺になるのだから」


 そう言うと、ディオンはユウの中にはいってきた。ユウの体の、心の中に。ゾッとしたユウは叫ぶ。


「何を、している!」


 嗤い続けるディオン。


「俺のサイスペック、人格転写だよ。既に俺は死んだ。しかし、サイスペックの感応をたどってお前に行き着いた。あとは、俺の人格をお前に写してお前になれば、また復活できる。お前のような堕ちた奴でも貴族(ノーブル)に役にたつのだ。光栄に思え」


 ユウは、怒った。心の底から。


「断る。いくら貴族(ノーブル)でも、個人を凌辱する権利はない。第一お前らの為に何かするとでも思っているのか? それを考えるだけでお前らの、貴族(ノーブル)の意識は甘いんだよ。お前らは、すくなくとも帝国は滅ぶ。いや、俺が滅ぼす。貴族(ノーブル)なんて言う連中はな」


「お、お前の姉も貴族(ノーブル)だぞ。殺すのか?」


「俺を、貴族(ノーブル)を、信じて生きてきたみんなを殺戮したあいつも同罪だ。必ず復讐してやる」


「しかし、それでもサイスペックがないお前には抵抗する能力は……」


 自信満々に笑っていたディオンの顔がひきつる。


「バカな、あり得ない。なぜ私のサイスペックがなぜ効果がない。そろそろ転写できるはず。あの貴族(ノーブル)なら、サイスペックが奪われたあとは、すぐに転写出来たのに」


「はは、いい気味だ。まて、なら、お前はディオンではないのか?」



「何を言っている! 私はディオン、公爵(デューク)クラスの貴族(ノーブル)だ。それ以外何があるといえる。皇帝の血縁の私が、なぜここで死ぬことになるのだ!」


「お前は、ディオンでない?」


ディオンは、皇帝の血筋などではないからだ。


「抵抗するな、なぜだ。なぜ転写出来ない。このままでは私は死ぬことになる。ええい、抵抗するな!」


「なんか知らないが、断る。はは、ざまあみろ! お前らみたいなくそ貴族(ノーブル)は滅びてしまえ!」


「いかん、意識が、いしきが、保てなくなる、いやだ、」


 ユウのいる空間が歪む。そのなかで、一瞬ディオンが年老いた老人になった。そこからユウのいしきが、














「ユウ、無事か?」


 隊長とザッコ隊の全員がユウの顔を見つめていた。


「どうしたんですか、隊長、みんな」


 安堵する隊長以下皆。


「あれから一時間以上たっているんだ。普通なら復帰していておかしかないのに」


 ユウは思った。ああ、ディオン、いや、あの貴族(ノーブル)の後遺症だろうか。


「とにかく、軍医に調べてもらおう。確かにザッコのオペレートを長時間行っていた。何らかの損傷があっても可笑しくない」


「いえ、たぶん大丈夫です」


「大丈夫じゃないよ。量子通信の後遺症はあとからどっと来るから」


 心配する皆をよそに、ユウは自分の聞きたいことを聞いた。


「で、ドミニオンは」


 隊長が笑って答える。


「お前のザッコがドミニオンにとりついてどついている間に先行端末機(パスファインダー)と艦船をしこたま集めて集中砲火。何とか沈めたよ」


「でも、半個艦隊が壊滅。たかが一人の機体によって。敵の貴族(ノーブル)連中、恐ろしいわ」


「まあ、公爵(デューク)級なんてそんなにいないだろ。この次は大丈夫さ」


 隊長の言葉に、ユウはつい呟く。


「いえ、まだまだいるんですよ。あんな化け物が」


「なにか言った? ユウ?」


 イーグル2の女性が上目遣いできいてくる。が、ユウは誤魔化した。


「あ、いや、腹へったな、って」


「その前に軍医の所に連れてって検査だ。有望な若い兵士は貴重だからな」


「あ、はい、隊長」


 ユウは、隊長建ちに連れられながら医務室へ向かう。そう、貴族(ノーブル)だったころはなかった。たとえ義務的なものであっても。


 そしてわずかな達成感とより多くの憎悪と使命感を胸に、ユウは歩く。これまでと同じように。



 

ザッコ。全高5メートル前後。下部アームを展開したら10メートル前後。球体に近い本体に平たい折り畳み式のアームが四本つく。下部のアームはターレッドに接続されており、人の下半身のように動く。また、アーム的な作業もできる。


本来は、先行して航路の安全を確保する探査機。色々な装備を取捨選択する際にこのかたちとなった。


なお、帝国のポーンはザッコのコピー。


ドミニオン。


帝国の戦闘機。本来ならば有人機は過剰なGや環境にたえられないが、サイスペックのお陰で無人機よりも高Gが出せる。


因みにこの世界のテクノロジーの一部はサイスペックの研究から発展している。


サイスペック。超能力。脳量子接続による現実干渉改変能力。探査、干渉、操作、特殊に別れる。今のところ、テレパシー、予知、念動力、透視、遠隔知覚などが確認されている。理論上テレポテーションも可能らしいが、人の体力では難しいらしい。また、念動力は、単独で行使するよりは既にあるものを強化する方が強いことになっている。発火能力も確認されているが、念動力を行使してより温度をあげることができると確認されている。その他身体的な能力の向上にも使われる。


帝国での身分はサイスペックによって決められる。公爵位の身分の者は公爵位のサイスペックを持たなければならない。能力は行事ごとに行われ、能力が落ちると身分も落ちる。なお、サイスペックがない一般人は平民とされ、貴族の言動に従う義務をおう。その為、貴族によっては平民を酷使するものも多い。


以後愚痴。


もとネタはFFSの戦艦の砲。勝手に動く所から。宇宙戦艦ヤマトと鉄人28号のコラボと思って欲しい。よくあるビームライフル、シールド、ビームサーぺルから離れて見たかった。因みにドミニオンは

よくあるロボット物の主人公機のイメージつまりガ○ダム。ザッコは無線誘導式のボ○ル。ほんとはこの設定で艦隊戦をやりたい。最も全面戦争はコスト的に割合わないと思うので、限定的な航路の制圧による企業買収、それによる企業国家間の生存競争みたいなのが書きたい今日この頃です。


ボツネタのひとつに、特攻する際に「ファイナルストライク!」と叫ぶ予定があったのですが。

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