ずるいずるい禁止令?ずるいが口癖の妹と、妹に振り回される優しい姉、しかしずるいといわれても品物ではない王太子殿下は貴方に譲るわけにはいきませんわ妹よ。
ずるいずるいー、お姉さまだけずるーい。
ああこれはいつものことだわと私はずるいずるいを繰り返す妹を見ました。
これを言えば何もかもが許されると思っている魔法の呪文。
私ははあとため息をついて、今度はだめですと妹に返しました。
私が王太子殿下の婚約者に選ばれたのは必然でした。
私はこのずるい大魔神と離れるためだけに勉強をしてきたのです。
王太子の婚約者に選ばれれば、館を離れられる。その一念でした。
やっとこれから離れられる。
私はほっとしたものです。
幼いころから、一歳下なだけのこの野獣は私の大切なものを奪ってきました。
おねえさんだからね、譲ってあげて。
いつも両親から言われたものです。
なので私はこれから離れる方法を考え、魔法学院入学、早く縁組を決める。の二択から後者をとることにしました。
魔法学院は15歳、縁組なら適齢期の14歳から決められます。
少しでも早いほうがいいと踏んだのです。
魔法学院ならこのズルイ魔人が後を追いかけてくる可能性がありましたし。
「ではごきげんよう」
私は笑顔で妹に別れを告げました。ああやっとこれから解放される。うれしかったのです。
しかし妹の考えは私の斜め上をいっていました。
「悪い、君との婚約を破棄したいんだ」
「え?」
「いや君のせいじゃない。真実の愛に僕は目覚めたんだよ!」
脳内お花畑の王太子殿下に言われて、しまったと思いましたが後の祭りでした。
真実の愛の相手とやらはあのずるい魔人でした……。いつもの甘えのスキルを使い篭絡したようです。
さすがにそれは姉の婚約者にはするまいと思っていた私が甘かったです。
品物ではない殿下は譲るわけにはいきません。
新たな相手を見つけるにしても、絶対に婚約を破棄された令嬢の下げ渡しなど皆嫌がるかと。
そしてあのズルイ魔人はしたり顔で私に謝りたい、会いたいと言ってくるのです。
優越感に浸り、私をまたずるい以外に何かまた違う攻撃をしかけるに違いありません。
あれから離れられるならなんでもする。それにものじゃないから婚約者は譲れない! 私は決意しました。破棄といわれてもほいほいするわけにはいかないと殿下を説得して一時保留にさせたのです。
「真実の愛に目覚めたのはお伺いしました。しかし、姉がダメだったので、妹というのは前例もありません。非常識です殿下」
「え? でも」
「真実の愛とやらを悟ったのはわかります、そしてその真実の愛の犠牲になった私はどうなると思います? 殿下から婚約を破棄された女なんてもう縁談はきませんわ。私はたぶん修道院送りですわ」
「僕、そんなつもりじゃ……」
「殿下、私がお嫌いですか?」
「きらいじゃ……」
殿下は優柔不断です。切々と訴える私を困った顔で見ています。
一応ずっと一緒にいましたから、この方も私を嫌ってはいないのは知っています。
ならその情に訴えかけようかと。
割と簡単に揺らいできました。ズルイ魔人もこの性格までは見切れていなかったようです。
「殿下、お願いです。私にご不満なところがあるのなら改めますわ」
「いや君は悪くない!」
「ならお願いです……やり直したいのです!」
あ、うんとうなずきましたわ。この人を観察して、弱点を見極めようとしていた私の勝ちです。
私は一応この優柔不断な性格が嫌いじゃなかったのですわ。
殿下が婚約の破棄を撤回し、そして真実の愛の相手はどうなったのかというと……。
「ずるいずるい禁止令?」
「そう、ずるいといって人の持ち物をねだる行為をこの国では禁止するそうだ」
私は殿下に言って、ずるいずるいと人のものをねだる行為を禁止するようにお願いしました。
陛下もそれはさすがにといって妹の悪行を話しましたら賛成してくれましたわ。
ああすっとしました。ずるいずるいの必殺技が使えない大魔神は拗ねて拗ねてとうとう隣国に行ってしまいましたわ。
だってずるい攻撃が使えないのですもの。
それからどうなったって? 行方は知りませんわ。
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