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キングスライム戦②

 三十体となった分身スライムだが、攻略の方法が分かればそうキツい相手ではない。


 最初から何百体も出されていたら危なかったが、キングスライムが油断してくれていて助かった。


 さっきのように、突進してきた前衛スライムを捕まえて逃げ回っているスライムに投げつける。


「やっぱり守られるか」


 前衛スライムは二体後ろに下がって、弱点のスライムを守っている。


「白緑風!!」


 仕方なくスキルを使って、倒そうとする。

しかし、緑色の風は発生しなかった。


「あ、白緑風は一分のクールタイムがあるし五トン程度しか持ち上げれないから、せいぜい持てて五体。白緑風に頼りすぎるのは難しいかも!!」


「それ言ったらまずいんじゃ…」


 キングスライムは良いことを聞いたと嬉しそうにぷるぷる震えると、百体前後の分身スライムを作り出した。


「あ、ユウヒ様ごめんなさい!!白緑風!!!」


 グリンは必死に謝りながら白緑風で正確に弱点スライムを拾い上げ倒していった。


 グリンの白緑風にスライム達が夢中になっている隙に俺はせこせこスライムを捕まえて、弱点スライムを五体倒した。


「白緑風!!」


 クールタイムが終わった白緑風で二体の弱点スライムと三体の前衛スライムを持ち上げて地面に叩きつける。


 グリンは当たり前のように弱点スライムだけを取っていたが、沢山の的の中で狙う標的だけ拾うのはかなり難しい。

 これは要練習だな。


 さあ、残り十体だ。

キングスライムは分身スライムが倒されるのを見ると、また百体のスライムを作り出した。


 冷たい汗が頬を伝う。

弱点が分かった所で状況は何も変わってなかったのだ。


 無限に現れる分身スライムなど倒せても意味がない。


「狙うは本体しか無いってことか」


 試しに突進してきている前衛スライムをキングスライムに投げつけてみる。


「やっぱり効かないよな」


 攻撃された事が気に障ったのかキングスライムはその巨大な体を震わせ始めた。


 キングスライムの振動は空気を伝って行き、周囲が揺れ始める。


ゴゴゴゴゴゴゴゴ


 これは何かの音によく似ている、なんだったっけ…


 地震だ!嫌に不気味なあの音に似ている。


 分身スライム達はそれを見ると、ぞろぞろとキングスライムの元へ戻って行き、身を挺して守り始めた。


「何かくる?」


 揺れが止まった。キングスライムが止まったのだ。


「ユウヒ様!!!」


 俺はグリンに服を掴まれて一気に空へと巻き上げられた。


 その時、俺が今までいた地面がパックリと割れて、中から尖った岩が突き上がってきていた。


 グリンはかなりの速さで飛び上がっていた。

しかし、その岩はそれを超える速さで空へと伸びたのだ。


 今度は避けられないだろう…


「ユウヒ様、大丈夫?」


 グリンは俺を背中に乗せると心配してくれた。


「俺は大丈夫だ。そんなことよりグリンこそ、その傷で飛んで大丈夫なのか?」


「うん、大丈夫だよ!ありがとう。」


 いや、大丈夫じゃないだろ。

全身は傷だらけで、その傷から痛々しく血が流れている。


「すまない…もう少しだけ頑張れるか?」


「もちろん!!」


 キングスライムは空へ逃げたユウヒ達を迫撃しようと、また体を震わせてさっきの攻撃をしようとしている。


 そのキングスライムを守るように分身スライムは再びキングスライムを覆う。


「やっぱりか。」


「今、弱くなってるって事だよね。」


「うん、そういうことだと思う。」


 上空からキングスライムの上に来たと思うと、グリンから飛び降りる。


「あっ、ユウヒ様いきなり!!」


ごめん、でも今しか無いかもしれないんだ。


「万力鉤爪」


 両手を広げて、攻撃の準備をする。


「白緑風!ユウヒ達何してるの!!!」


 勢いよく落ちていたが、グリンの白緑風ですくい上げられる。

 下を見ると、分身スライム達が突進してきていた。

何も言わずに飛び降りたから怒っているようだ。


「空中じゃ避けられないでしょ?」


「はい…すみません……」


 調子に乗って飛び降りたが、後先を何も考えていなかった。グリンが咄嗟に反応してくれたから良いものの本当ならスライム達にぺちゃんこにされていただろう。


 グリンが息を大きく吸い込む。


「その為に私がいるんだよ!頼って欲しいな?」


 少し恥ずかしそうで、少し自慢気にそう言う。


「グリン…よろしくお願いします」


 思わず敬語になってしまった。

しかし、それは今までの敬語とは違う。


 覚悟のようなケジメのようなもの。


 ユウヒは今まで本当に信じた人はいない。

ただ親切にされた程度では開かない程固く閉ざしてあった扉をグリンがノックしてくれた。


 会って数時間だが、命をかけて俺を守り続け、信じ続けてくれる。

 その事がユウヒの心の扉を開く鍵となったのだ。


 ただ頼れと言われただけだが、ユウヒには今までの人生をかけるほどの覚悟が必要だった。


「私が白緑風でユウヒ様を操ってスライム達を避けるから、それで止めをうってほしいの…」


 グリンの作戦には大いに賛成だが、何故かグリンは悲しそうな表情をしている。


「それでいんだけど、グリンどうかした?」


「私が倒せたらいいのに、この傷だし…ごめんなさい」


「はははは、そんな事か。大丈夫、俺に任せて」


 グリンは俺を危険に晒すことが嫌なようだ。


 本当に優しいんだな


 出来るだけ安心させようと、笑顔を見せる。


 キングスライムはまだ揺れている。今がチャンスだ。


「行くよ、グリン。」


「うん!!白緑風」


 グリンから飛び降りる。

その瞬間、緑の風が俺を包む。暖かい…


 落ちてくる俺を見ると、キングスライムにくっついていた分身スライム達は俺目掛けて飛んできた。


 グリン頼んだぞ


 俺は百体いる分身スライム達から一体も当たず避けていけた。


「さあ、キングスライム勝負だ!」


 キングスライムに突っ込む。

硬いことを想定して万力鉤爪で攻撃の体制をとっていたかが、あの地面の詠唱中はスライムのように柔らかくなっていた。


 スライムって事は……核だな


 まさにスライム風呂となったキングスライムの体内を泳いで十数メートルの体から核を探す。


「あった…」


 キングスライムの核は単純にも体の中心にあった。

俺の身長より少し高い2メートル程度の核だ。


 壊せばいいんだよな。

万力鉤爪を使用し大きな核を殴りつける。


「痛った…殴ってるこっちにダメージがくるじゃん」


 殴りつけた拳がヒリヒリ痛む。

核が硬すぎるからというより恐らくこの核はダメージを反射する様な力があるのだと思う。


 やばいな、そろそろ詠唱も終わるぞ…

入ったら壊せると思っていたが、それはキングスライムを舐め過ぎていたようだ。


 中で壊す方法を考えていた最中、揺れが止まってしまった。


 どこから魔法が出てくる?

俺は体の中にいるはずだから攻撃できないはず…


「グリン、逃げろ!!!」


 俺が叫んだ瞬間地面はパックリと割れて岩が飛び出してきていた。

 グリンはというと、さっきの急上昇が体に応えたのか痛々しく低空を飛んでいた。


 不味い、あのままじゃ当たってしまう。

呪文の詠唱も終えてキングスライムも固くなってきており、俺もこのままなら閉じ込められて圧死だ。


 いや、俺の事なんかどうでもいい


 どうにかグリンを助けたい!!

任せろって言っちゃったんだよ!!!




 ユニークスキル『動物愛好家』

現在の状況で最適のスキルを使用しますか?




 最適?この状況打開出来るのか?

頼む使ってくれ、グリンを助けてくれ…

 藁にもすがる思いで動物愛好家に任せる。




 ユニークスキル『動物愛好家』

スキル『荷車の主』を使用します。




 荷車の主が強制的に発動させられた。

すると、壊そうと触っていた核は突如何処かへ消えてしまった。


 核が無くなった事によりキングスライムは今まで保っていた形は崩れて重力に従い地面に崩れ落ちた。


 どろどろになったキングスライムから外へ出る。


 グリンは?!


 無事なようだ。幸い核が無くなった瞬間に岩の行進は止まっている。


「よし、グリン帰ろう!!」


「待って、分身スライム君達まだ生きてるよ……」


「え、そんなはずは…」


 残った分身スライム達は一点に集まり始めていた。


 1メートル程度だった分身スライムは十数体が集まると、キングスライムと同じような大きさになる。


「え、まさか、これって……」


 キングスライムはまだ倒せていなかった。











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