キングスライム戦①
「危ない!!!!」
気づくとグリンは大岩の攻撃を受けて数十メートル吹き飛ばされていた。
かなりダメージが大きかったようでぐったりしている。
「なんで…」
「えへへ、良かった。ユウヒ様は無事みたいだね。」
グリンは俺への攻撃を身を挺して守ってくれた。
それなのに、俺はグリンをどこか怖がってしまう。
ただ、言葉を喋って人みたいだからという理由だけで…
「ありがとうグリン。もう、大丈夫だから。」
「敬語じゃない…うん、ユウヒ様!!」
相手は十数メートルにもなった大きな黒いスライム。
グリンが焦っていたようにかなり強いのだろう。
どこまで出来るか分からない
しかし、グリンは俺のために動けないほどのダメージを負ったんだ。今度は俺が助ける。
ユニークスキル『動物愛好家』
グリンとの仲が深まったことにより、使役主と使い魔のステータスが大幅に上昇し、スキルを獲得しました。
スキル『白緑風』
体に力が溢れてくる。
仲が深まったか…うん、そうだな。
「こいよスライム!俺が倒してやる!!」
黒スライムは俺の言葉に答えるかのように、大岩を発生させて投げつけてきた。
「よし、『万力鉤爪』!!」
さっきまでぎこちなかったスキルの使用も当たり前に使用できようになっていた。
これもグリンと仲が深まったからなんだろうな
物凄い勢いで飛んできた大岩に拳をぶつけると、辺りに一瞬衝撃波が走り、大岩は粉々に砕け散った。
万力鉤爪は両手の力を大幅に上げるものなのだろう
黒スライムは、また同じように大岩を投げつけてきた。
俺は万力鉤爪で壊していく。
10回程度同じことを続けると、黒スライムはこのままでは埒が明かないと思ったのか、1メートル程度の自分の分身を十体作り出した。
五体は俺に向かってきて、四体は後ろで控え、残りの一体は当たりをうろちょろしているようだ。
「陣形か?」
五体の前衛スライムは一定の距離に近くづくと、それぞれ飛びついてきた。
ぐはっ!!!
あれ、結構痛いぞ。
さっきまでのスライムのぷよぷよした柔らかい体とは程遠く、まるで鋼鉄のような硬さだ。
次々と向かってくる前衛スライムだが、単純な動きで避けるのは容易である。
「ユウヒ様、危ない!!」
前衛スライムに集中していると、大岩が飛んできた。
「またかよ!って……え?」
そう、同じように大岩は飛んできていた。
しかし、一つではない。後衛スライムが大岩を投げつけていたのだ。
飛んできた大岩は壊し、スライムの突進は避ける。
反撃のひまがなく、攻撃がとんでくる。
後ろで本体のスライムは余裕気に控えていた。
自分が出るまでもないってか。
「白緑風!!」
グリンがそう唱えると、辺りに緑色の暴風が吹き前衛スライム達を巻き上げていった。
「ユウヒ様も使えるよね?」
そういえば、使えるようになったって言ってたな。
かなり強そうなスキルだし俺も使ってみよう。
「白緑風」
俺が唱えると、グリンの時と同じように緑色の暴風が吹き始めた。風は自在に操れるようなので、残りのスライム達を巻き上げる。
「えいっ!!」
グリンは巻き上げた前衛スライム達を地面に叩き落とした。かなりの速さだったので、ダメージは相当なはず。
俺もグリンを真似して、スライム達を地面に叩き落とす。
すると、スライム達はぐったりして動かなくなった。
「やったか!」
「気をつけて!冥界の扉から生まれるキングスライムは災害級の魔物だよ。なんで災害級って呼ばれるかっていうと…」
キングスライムはさらに二十体の分身を作り出す。
「そう、何体でも自分の分身を作り出せるの。」
まじかよ…
だけど、同じことを繰り返して分身を倒せばいいだけだ。
同じように突進してくた前衛スライム達を白緑風で巻き上げて地面に叩き落とす。
「倒せてない…?」
前衛スライム達は何事もなかったように体を起こすと、また突進を始めた。
分身スライム達の数が増えて突進と岩が増えたが動きが単純なので避ける事はできる。
しかし、延々と繰り返される攻撃で体力が削られてきた。
じわじわと追い詰められているのを感じる。
このままではジリ貧だ。
反撃をしようと万力鉤爪で前衛スライムを掴み、後衛スライムに投げつける。
プロ野球選手の球の速さを優に超えるほど速かったと思うのだが、全く効いてない。
「なんで前は分身スライム達を倒せたんだ…」
前と今で違うこと…
前は全員を一気に倒した。今は一部しか倒してない。
全員を一気に倒さなければダメなのか?
しかし、前と今では数が違う。
分身を出す数は変えられるのに、その度に全員倒さなければならないなんてあるだろうか。
何体でも分身スライムを出せるとなると、倒すのなど不可能に近いはずだ。
災害級の魔物だが、逆に言うと災害級で収まるほどの魔物という事だ。
という事はもっと簡単にこの分身スライム達を倒せるのではないか?
攻撃を避けながら、落ち着いて敵を見る。
「攻撃してこないスライムがいる?」
そうだ、十体スライムを出した時も攻撃をしてこないスライムがいた。
スライムの周りを走り回っており、何かしているようにも
見えるが、逃げ回っているようにも見える。
万力鉤爪で突進してきたスライムを掴んで、逃げ回っている目掛けて思いっきり投げつけた。
ドガ!!!
何か硬い物がぶつかり合うような音がすると同時に十体のスライムは動かなくなった。
「あ!あ!ユウヒ様!!逃げるスライムを倒したらいいんだね?!」
どうやらそうみたいだな。
気づかれたかと焦るようにキングスライムは新しく二十体の分身スライムを作り出した。
「攻略の糸口が見つかったみたいだな」