プロローグ:家の聖樹の魔力検査(中)
「思い出したー?望くん」
「あ、ああ……なんとか」
そして、堀籠望の記憶を思い出した。一気にどっと疲れが湧いてきた。
「時間がないから手短に話すね。実は望くんはとっくに死んでて、転生したんだよね。でもこの年齢までは記憶は封印してた。だってさ、生まれたばかりの子供が喋ったらびっくりするでしょ?だから記憶を一時的に封印して、聖樹のあるフォームアウト家に生まれさせて、8歳に絶対私に会えるようにした。ここまで分かる?」
まあ、理屈は。テールはツインテールをふりふりさせて、説明をはじめる。
「で、なんで転生させたかっていうと、ノルマなんだよね。死ぬ運命の人を選んで、転生させなきゃいけないノルマ。君若かったから、丁度いいかなって。1年に一回、転生させなきゃいけないんだよね……ほんと疲れる」
「僕のほかに転生者はいるの?」
「あのさ、望くん、世界っていくつあると思う?」
テールの言葉に首を傾げる。世界の数?そんなの知らない。
「数え切れないほどあるの。そりゃいたとしても2人か3人。そして、望くんはテルミア帝国誕生前なの」
テルミア帝国誕生前……。そういえば。
「だんだん思い出してきたでしょ?」
「ああ……異世界転移したんだよな」
それはある秋の日。僕のクラスは突然異世界転移した。
クラスごと異世界転移した僕は、『らのべ?』とか『むそー?』とか知らない。
僕のジョブは【剣魔者】後に知る最強の職業だった。
そして帝国……クラスメイトの中心「中野 マサル」が考え、『テルミア帝国』を築いた。初代皇帝はマサルが務め、皇后はその彼女「岬 柚莉々」が務める。
異世界だと気づいたので、名前も異世界ぽくしようと言うのが、最初の詔だった。因みに僕は、希望を意味するespoir……エスポワールからとって、エスパールと言う名にした。
その頃、魔王と呼ばれる存在が出てきた。
その頃の生物は望たち地球人40名しかいない。つまり裏切り者がいると考えるのが妥当だった。そこでやっと【剣魔者】が役に立つ。次々に魔物を倒して倒して。
ある日、マサルが病に倒れたので、柚莉々と僕は森に薬草を取りに行く。柚莉々のボディガードとして付いて行ったのだ。
だが朝の森と呼ばれる薬草の群生地についた頃、柚莉々の様子が変化した。
そして、魔物が増えた。柚莉々に近づくのを片っ端から倒していって、魔力と体力は底をついていた。
そこで僕は、柚莉々の本当のジョブを知る。
柚莉々は、自称【召喚士】だった。鑑定できるものがいないため、その時はステータスを自分で言うのだ。
だが、柚莉々は本当は【魔王】だったのだ。
魔王のスキルとして、【召喚】がある。このスキルを使って、召喚士のように見せかけていたのだ。
「野蛮な人間め!体力も魔力も底をついているお前が、妾に勝てると思うなよ?」
結果、勝った。
でもこれは、実力ではない。実は、対象の体力を徐々に吸い取ってそれを自分の体力にする……【吸収結界】を使っていた。
「うっ……の、ぞむ……完全敗北、よ……」
「くっ……柚莉々……お前、どうなるんだ……??」
「死ぬわ……っ、でも、魔王の、支配は、……終わった」
苦しみ嘆く柚莉々を見て、僕は決意した。大量の魔力を使って、もしかしたら死ぬかもしれない。けれど、やらなくてはいけない。
「次世……魔王が生まれないように……“魔王の支配の源よ、我の元に来ん。悠久の時が経とうても、支配の源、善の心で埋め尽くしたり。”【浄化・心】」
その瞬間、激しい頭痛がした。
『お前……ガアアアアアアアア!!コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス」
これは、魔王の呻き。
その瞬間、岬柚莉々と堀籠望の命の炎が消えた。