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8つめのお話 うそをつくと……



 クマくんはコマドリさんの声を聞いて、いっしょに根っこ広場にきていました。

 ともだちが危ないとわかり、いつもなかよくしてくれるキツネさんを助けたかったのです。

 しかし、やっぱりクマくんでした。

 なじみのない格好の二人を見ると、どうしてもこわくて木のうしろから出られません。


 ニンゲンたちが乱暴な態度になってからも動けませんでした。

 キツネさんは立ち向かい、リスちゃんは木の実を落とし、コマドリさんはけたたましい声を出してニンゲンたちの集中をそいでいます。


 そのうちニンゲンたちが、また筒をキツネさんとリスちゃんに向けるのを見て、クマくんは自分の胸から何かがこみあげてくるのを感じました。


 危ないものを大事なともだちに向けている!

 みんなで楽しく使っている広場でひどいことをしている!


 その気持ちがこわいという気持ちを上回りました。

 そして、からだの底からニンゲンたちにぶつけるように出したのです。




 もうすぐ広場の外の森に入ろうとしていたキツネさんは、その様子を見ていました。キツネさんはかくれているクマくんを見て、最初はほっとしていたのです。


「クマくん。ごめんね! 逃げ…………」


 逃げて、と必死に伝えようとしたキツネさんは、クマくんがいつもとちがうことに気づきました。

 いつも縮こまっているクマくんは、木のかげにいるのに堂々として大きく見え、目はぎらぎら光っています。


 そして、キツネさんがはじめて見る牙をむき出しにしてニンゲンたちにほえました。その音は森のすみずみにひびき、空気がふるえるような大きな大きなおたけびでした。



 クマくんは、いつもは逃げるときに使う速さで、ニンゲンに向かってかけていきます。


「わあああーー!!」


 兄はのぞいていた筒から思わず目をはなしました。突然聞こえた大きな声、予想していたよりもはるかに大きな姿、そして思いもよらない速さにおそれをなしたからです。


「ひいいい! ちがう! ちがうんだ!!」


 足元がゆれる勢いで走ってきたクマくんは、もうそこにいました。大きな口を見て食べられてしまうとあせった兄は、この場でいってはいけないことを口にします。


「キツネさんをうつつもりではなかったんだぁ! もちろんクマさんっ! あなたのことも決して毛皮にして、村でひけらかそうとしたわけではないんですぅ……………………あ、ああああっ!」


 がくがくさせていた足に、何かが巻きついたと思った兄。そこには木の根っこが絡みついていました。

 逃げようと筒を放り出して両手ではがそうとするも、まったく動きません。それどころか巻きついたまま上に持ち上がり、逆さづりにされます。


 「きゃああ」だの「ごめんなさーい!」だのと、逆さのまま情けない声をあげた兄。

 次のしゅんかんにはなんと、根っこによって森の外まで投げられてしまいました。

 ぽーんと、高く大きく放り投げられて、悲鳴があっというまに遠ざかっていきます。

 森のみんなは、はじめて見る光景にびっくりしました。


 ――コロン。


 そこに根っこ広場で新しい音。

 くるみが落ちてきた音でした。

 クマくんの様子と根っこの動きに、リスちゃんがびっくりして落としてしまったのでしょう。みんながその音に目を向けます。


「ひいいいいっ」


 すると視線の方向に、まだ残っている弟がいました。


「ひゃあ~~! ごめんなさぁい!」


 森のみんなは、さきほどの光景であっけにとられていたので、その様子をただ見ていました。

 しかしニンゲンの弟にとっては、『森に無礼をはたらいたニンゲンをじいっと見る動物たち』としか感じられなかったのでしょう。

 顔をべちゃべちゃにしながら、両手をひらひらさせて、おどるようにうしろへ後ずさりしました。根っこに足をとられ、しりもちをつくこともくりかえします。

 声をふるわせながら、やっと広場のはしまでたどりつくと一目散に逃げていきました。


 根っこ広場は、やっと静けさを取り戻したようです。



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