1つめのお話 クマくん
『小説家になろう』さんの限定企画、冬の童話祭2019の参加作品です。
きらきらした雪が降る季節。
いつも変わらないうつくしい緑と、ここちよい風がふく、きれいな森がありました。
その森にはたくさんの動物たちが暮らしています。
今も、雪がひたいに舞いおりたことから、空を見あげた動物がいました。
「今日もきれいな虹だなぁ。それに雪もきれいだ」
そこにはいつもと変わらない虹が、森いっぱいにかかっています。上空には雪雲が広がっていました。
そのときでした。
「…………ぎゃあぁーー!」
大きな大きな毛玉が突進してきます。
キツネさんは少しよけただけで、特に逃げようとはしませんでした。
「やあ、クマくん。どうしたんだい」
「あっ、キツネさん!」
なぜならキツネさんのよく知る顔だったからです。
クマくんはキツネさんをみつけると、走ってきた速度のままキツネさんのうしろに隠れました。
「た、大変なんだ! この森におばけが住みついたみたいなんだよ~」
「おばけ?」
クマくんはキツネさんを盾にしてうったえます。キツネさんはクマくんのふるふる動く毛を見ていました。
「おばけが住みつくわけないじゃないか。どれ、いっしょにそのおばけを見に行こう」
「ええーー! いやだよ! こわいよ!」
おばけを見に行こうとするキツネさんを、なみだ目でとめようとするクマくん。
「どんなおばけか見てみないと。それには実際に見たクマくんがいないと困るだろう?」
「おそろしげなのがそうだよ」
「そんなあいまいな説明ではねぇ」
しりごみしているクマくんを気にとめないキツネさん。
とことこと、クマくんが走ってきた方向に歩きます。
クマくんは、おっかなびっくりしながらついていきました。
「そんなにこわいのなら、向こうで待っているといいよ」
「そんなっ。今からキツネさんと離れたくないよ! おいていかないで!」
クマくんはキツネさんに必死についていきましたが、視線をななめ上に移動させると、またもや悲鳴をあげました。
「うぎゃああぁぁ! でたーー!!」
クマくんの視線を追うと、そこにはひらひらゆれる姿。立派な木に寄りそっています。
「ん? 枝に…………」
キツネさんは目をこらしました。本当におばけか、よく確認したかったからです。だから、さらに近づくことにしました。
「危ないよぅ」
クマくんはこわいながらも、キツネさんと離れたくないのでいっしょに近寄ります。
「危なくないよ。よく見てごらん。枝に布みたいなものが垂れ下がっているだけさ」
「え」
そうです。クマくんがおそれていた『おばけ』は、枝に垂れ下がっている「ひらひら」「バサバサ」とした『何か』でした。
胸をなでおろすクマくん。
――――くすくすっ。
しかし安心したとたん、笑い声が耳に届きました。
小学生高学年くらいを意識していますので、漢字は六年生までに習う漢字を基本使用。
それ以降に習う漢字をどうしても使う際には、ふりがなをふっております(漢字が二つ出るときは一番最初のみ)。