9話
「……」
好奇心で輝いた瞳はだんだんと薄くなり、眉をよせるような表情になった。
オッサンは、そんな少女の顔の変化をいぶかしむ。
闇から生まれた少女は思う。
生きていく上で仕方ない場合は仕方がない。
しかし、これは、我慢すればいいのではないか?
生命を奪わなくても、生っている果物や野菜を食べればいいのではないか?
別にこれは……。
少女の中で渦巻くものがある。
渦巻いているものは、黒い風をイメージしたもの。
風に色が付くってどんなんなんだ、て感じだが。
とにかく、風だ。ゆるやかだが、力強く深い風が渦巻いているのだ。
中の中で巻いているものなので、目の前のオッサンもそれに気付いてなかった。
当の少女自身さえ気付いてないものかもしれない。
……考えて考えて、今の自分にどうにか出来る問題ではなさそうだ。自分はまだ世界を知らなすぎる。
「……」
何か残るものはあるけれど、今は何もできない。
少女は踵を返して行こうとした。
「ま、待ちなよ。嬢ちゃん、一つサービスするから。今度どっさりと買って行ってくれればいいから。一本もってけよ、な?」
「――」
貰ってしまった少女エス。
断ればいいのに、何故か受け取ってしまった。
受け取ってしまった以上、捨てるという選択肢を選べず、ぱくりと一口。
口の中に広がるジューシーな肉汁。至近距離になり、嫌でもダイレクトに鼻こうをくすぐる香り。
これは……言ったらいけない。それを言ったら、さっき考えていた原因を否定することになる。
しかし、これは…。




