7話
草原を抜けた時、少女は平地に立っていた。
たまに石ころが転々と転がり、道の先は見えてこない。
見えない先にあるものは、何があるのかわからない。
それが何にしても、少女はきっと目を逸らさない。
自分で決めたことだから。
――少女の性格は真っ直ぐ。
闇で全てを覆う力をもち、正面だけを見据える。
本質が闇といえ、輝ける光の如く今の少女の瞳は真っ直ぐを向いている。
二番目に出会った相手は、やかましい男だった。
何やらシャンシャンバコンバコンと鳴らして道を歩いていて、こちらに近づいて色々話しかけてきたので鬱陶しいから睨んだら、ビクリと体を震わせて、すたこらさっさと向こうに逃げるように走っていった。逃げるように、ではなく、本当に恐怖を感じて逃げたことをエスは知らない。
鳴っていたものは、男が幾つかの楽器をもっていて、それが鳴っていた、ということだった。
エスは楽器というものを具体的に知らない。なんだ、この男は。奇妙なものをゴテゴテと体に装着している、という感想だった。
エスにとって軽くだったが、この世界の魔力基準にとっては凄まじい魔力の奔流で、男の恐怖を生み出すには十分すぎた。
「……」
無言で歩を進める闇から生まれた少女エス。
その様子は、客観的視点から不機嫌に見えた。
テクテクと無言でしばらく歩いていた。すると、香ばしい匂いが鼻こうをくすぐった。
「…?」
香りの方向を見ると、小さな建物があり、そこにオッサンがいた。




