4話
初めて来た世界で初めて出会った男ヴェンは、不思議なオーラをかもしていた。
初めてだから、不思議に感じた、のかもしれないが、やはり違う。
ヴェンという存在は、この世界ではやはり不思議に属するのだ。
普通の人間なのだが、高貴な存在に愛され、自然からも愛されている。
漆黒の瞳は、確かにヴェンという男の性質を捉えていた。
「……」
不思議といえば、この闇の少女も不思議。闇と言っても、不吉なものでない神秘性のある不思議な闇だ。
ヴェンもそれがわかった。
闇の黒を強調したひたすら黒い少女だが、肌は陶器のように白く美しい。
まるでお人形のような端正な顔立ち。
そしてミステリアスで、不思議なオーラを放っている。それが、不吉な闇に見せないのだろう。
「ヴェンは不思議だね」
「そうかい。お嬢ちゃんの方が不思議だろう」
お互い様であった。
不思議な二人がここで初めて出会ったのはきっと偶然なんだけど、それは何か運命のような――通じるものがあった。
「……」
エスの話を黙って聞いていたヴェン。
元々居た世界のこと。急にここに来るハメになったこと。
話を聞き終えたヴェンはしばらく沈黙した後、
「…エスは、元いたところに帰りたいのか?」
静かな言葉。その後の静かな沈黙。沈黙を破った小さな声。
「帰りたいけど…帰り方がよくわからないし、やっぱりよくわからない」
ヴェンはうなずき、
「そうか。じゃあ、しばらくこっちにいるんだな。よかったら、一緒に探そうか?」
「いい」
即答された。ちょっとショックを受けるヴェン。




