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29話

 世界ルースは、光に包まれていた。

 ルースを創ったのは光。

 光が落ち着いた時、世界が生まれていて、一人の子供がいた。

 その子供は世界が生まれたと同時に生まれていた。

 その子供は生まれながらにして、自分のやるべき事を理解していた。

 知識や力はすでに備わっている。ならば、あとは動くだけだ。

 子供は自然を動物を人を育て導いた。一定のところまで育てて、あとは自立を示した。

 そこで子供は見守るだけにした。世界を。あとはみんなに託した。信じて託した。みんなが協力して光で溢れる世界に出来るのを信じて見守るだけにした。

 しばらくの年月が経ち、みんなはよく頑張っていた。光で溢れていた。

 ――ずっとこのままだと思っていた。

 やはり子供ゆえに、疑うことをよく知らなかったのだ。

 世界に一点の闇が生まれた。

 それは大きくなり、光を蝕もうとした。

 子供は目を見開いた。たったの一点の闇が、遥か巨大な光を獣が小さな獣を喰らおうとするように――。

 見守っている、だけなんて悠長なこと言ってられない。

 子供は降り立った。地に。黒くなっていく土地に。

「――」

 今まで光だけで安定していたのに、何故突然闇が――。

 原因は人、だ。

 人が突然変貌し、闇をふりまいたのだ。

 人以外は今まで通りだった。

 人は複雑だった。

 それはわかっていたけれど、まさか、ここまで――。

 子供はなんとかしようとした。しかし、無理だった。

 人から生まれた闇は巨大すぎた。

 自分と正反対に位置する存在が、ここまで恐怖に感じるとは。

 自分の天敵だ。闇というものは。きっと相手から見たらそれは同じ。

 こちらの敗北。

 光は闇に喰われた。

 しかし、完全ではない。子供は力をふりしぼって耐えた。

 闇に包まれた中、小さな光を灯したのだ。

「……」

 目が覚めた時、世界は闇、だったが、一筋二筋と無数の光の線が天から地に向けて射し込んでいた。

 終わってない。まだ終わってない。

 子供は開いた瞼を再び閉じた。

 声が語りかけてくる。

“プティ。まだ終わってません。貴方にはまだ出来る。頑張ってみなさい。きっと世界が再び光で包まれる時が来るから。そして、闇を憎んではなりません。決して憎むものでもないのです。存在するものに憎むものなんてないのです――”

 その声は懐かしく、とても暖かかった。

 冷えていた自分の心が再び温かくなっていくのを感じる。

 まだ、自分はやれる。

 世界を光だけで溢れさせることが再び出来る。

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