表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/33

28話

 終わった時、プティは、大地に大の字で寝ていた。

「グーグーグー」

 爆睡していた。無邪気に。

 こっちは、疲れた。

 子供の相手は疲れる。それがよくわかった。

 本当、こっちは楽しくもないのに、よくあんなにニコニコできる。

 下手すれば、死んでいるというのに。

 ――恐ろしいものだ。

 子供というのは、いつも生死を賭けて遊ぶのか。

 そんなのこの子供の姿をした化物だけに決まっているか。

「……」

 エスは、ちらりと熟睡する子供を見て指を振った。

 プティは闇に包まれ、より深い闇に入る。

 趣味が悪いが、エスはプティの夢の中を少し覗いた。

 少年が光の中に立っていた。その少年は夢を見ているプティとは違う顔をした少年で、とても無邪気で光った笑顔を浮かべていた。

 夢を見ている子供じゃない……?

 それが気になった。エスから見える少年は、今夢を見ている少年と違う顔。誰だろう、と。

 まあ、所詮夢。そりゃあ、誰がいても不思議じゃない。気になることがおかしいのだ、とすぐにどうでもよくなった。

 誰だろう? それは気になる。少し似ている。夢を見ている者と。

「――」

 ここで、映像は切れた。夢は覚めたのだ。

「ふあ〜あ、と」

 大きく欠伸をするプティ。

 エスは、太陽を見ている。まぶしくて、不愉快だ。相変わらず。

 プティがエスを見てニコッと笑う。

「楽しかったね、お姉ちゃん」

 エスはそれを見て、ニコッと笑うことは出来なかった。

「……気はすんだ?」

「ううん、もっと遊ぼうよ」

 闇が暴発して、広い範囲で闇で包まれそうになるのをエスは抑えた。

 怒ったわけではないのだ。予想が外れたから悔しかったのだ。

「もういいでしょう。わたしは疲れた」

「じゃあ、お姉ちゃんが気のすむまで休んでからでいいよ」

「いや、キリがなさそう」

「え〜、そんなことないよ。いつかは終わるよ」

「貴方の魔力は無限な感じ。だいぶ減ったかな? と思えばさっきの少しの睡眠でもう全快になってるでしょう。キリがない」

 エスはやる気なし。

 プティはふくれている。

「やる気ないねえ、お姉ちゃん」

 それはそうだ。

 子供と命を賭けた遊びをする為にここに来たとか考えたくもないし。

 なんでわたしはここにいるんだ?

「……」

「まあまあ、怖い顔しない」

 闇が溢れそうになるのを抑えるので必死。

 エスもやはり化物で、ここが光の世界とはいえ、今の状態の自身の闇が全て溢れれば、世界は闇で包まれる。そうなれば、一ヶ月以上は夜が続くという奇妙な現象に陥るだろう。

 この子供は光に愛されている。

 自分は闇。

 相手は光というだけあって、どよ〜んと暗いものは一切感じない。底抜けに明るい。腹が立つくらい。

 何がそんなに楽しい?

「お姉ちゃんはさすが闇って感じだね。終始笑わない。この世界に来て一回でも笑うようなことがあったかい」

 ……覚えてない。一度くらいあったんじゃないか。て、そんなの別にどうでもいい。

 プティが八重歯をにっと見せた。

「まあ、笑わなくてもいいかもね、姉ちゃんの場合。たぶん普通の人から見たら不愉快な笑いだから」

 ケラケラと笑うプティ。

 闇を馬鹿にしているのか。

 でも、たぶんその通りなんだろう。

 でも、腹が立った。

 だから、もう一度くらい――。

「遊ぼうか」

 エスの漆黒の瞳が妖しく光った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ