25話
……まあ、少しは気が良くなった。あれからは特に何もなくヴェンと別れたが、また会える気がしていたので別に何とも思わなかった。
ここは、複雑で不快の多い世界。ここで自分に何が出来るのか。
やはり、元の闇に戻るしかないのだろうか。
もしも戻れなかった時は――?
本当に、ここで何をすればいいか、何を出来るのか考えないといけない。
闇で生まれ、闇で育った自分にはわからない。
わかるまで、生きる。
くよくよ悩まずに。
――その時、クスクスと笑い声が聞こえた。
エスは前を向いて、視線だけをちらちらとさせた。
わかる。あの子供だ。
「あはは。お姉ちゃんの本質は闇なんだから、くよくよドンヨリするのが普通だとボクは思うな」
ひょっこりとそんな音が出そうな感じで出てきた。
「悩んでても暗くても、死ぬという結果が起きてない今、生きるしかないんだから」
この子供には訊かないといけない。
「あの青いお兄さんが言ったことなんて聞かずに、自分の本質に合った生き方をすればいい」
どういうつもりなのか。
「大丈夫だよ。生きたくなくても、体が死なないで動いている限りは生きないといけないんだから」
この子供は何を伝えたいのだろうか。
「伝えたいのは、暇つぶしだよ。ボクの」
ただの暇つぶし。
「怒った? 別に怒ってもいいよ」
クルクルと楽しそうに瞳を大きくする子供。
この子供がただの子供なわけもなく、かなり強いことがわかる。戦いの場における確かな実力者。
余裕があるのも、力があるから。
無邪気なガキというわけじゃない。
これは悪意だ。
「……」
「あはは。お姉ちゃん凄い顔だね♪」
一度懲らしめてから、元の世界のことを考えよう。




