22話
黒い刀を一瞬で手元に出現させた少女は表情を変えずにそれを振るった。
軽い動作で。
そんなもので、斬れた。
見事に斬れた。
空間を断ち、標的を切断した。
そして、標的は斬られた瞬間黒い炎に包まれて、完全に焼失した。
標的の正体は、子供の命を断とうとした獣。
普通ならば、子供の命と獣の命の比較――そこで逡巡するのだが、獣の体は巨大であまりにも差がありすぎ、理不尽と感じた為、少女は剣を振るった。
獣に対して礼をする。心からの冥福を祈る。
「……」
子供は、あの子供はどのみち死ぬことになるかもしれない。
ずっと世話をすることは出来ない。
もしかしたら、自分がしたことは、余計なお世話だったのかもしれない。
見て見ぬフリが出来なかった。体が勝手に動いていた。
……仕方ない。
少女はタンッと一歩強く踏み込んで軽やかに飛んだ。
飛んだ少女の体が消えた。少女が現れたのは、しばらく先の道の上。
そこをゆっくりと歩くのがなんだか嫌だったので、離れた。
振り返ってみると、子供が見える。
――どうなるかなんて……誰にもわからない。
どうか良い人としての道を築いてください――。
しばらく、ここの世界にいて色々わかってきた。
ここは、自分がいた世界と全然違う。複雑なものが入り混じり、上と下の差も激しい。
ここは、なんて面倒くさいんだ、と思う。
あそこにも、色々なものがいてそれを感じていた。




