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21話

 ――さて、と。さっさと行こうと思えば行けるけど、あえてゆっくり行こうかな。

 急ぐ理由なんてない。

 これも何かの縁。

 だんだん、ワクワクしてきた。

 走り出した。

 走るくらいなら、すぐに目的まで辿り着かない。

 魔力を存分に使って移動すれば、一瞬だが、そんなことしない。

 これは縁だ。せっかくだから、すぐには終わらせない。

 エスは、左手をすっと掲げた。

 そして立ち止まって、すうと息をつく。

 手の辺りの空間が揺らいだ。風景が歪んだのだ。空間が風景が――歪んで、生まれた隙間から鋭く美しいものが現れ、そして少女の小さな手におさまった。全身を確認して理解する。それは刀。一振りの美しい刀だ。

 漆黒の刀身と鍔。刀全身から妖艶なオーラを感じさせるが、扱うのはまだ大人の魅力はかもせない少女。

「……」

 軽々と少女はその刀を一閃した。

 少女は刀を使い、旅をすることを決めた。

 刀を選んだ理由はない。ただの気分だ。

 なかなか絵になっていた。自分の身長よりも高い刀を優雅に振るう少女。

 まるで今までもずっと使っていたかのような流れる動き。

 少女が魔力を解放してそれを振るったら、大地に線が走った。

 線は世界に一本の傷として残った。

 少女はまだよくわかってなかった。

 少女は刀を消して満足そうにうなずいた。

 剣士の少女がここに生まれた。

 ここの世界最強の剣士でも、本気の彼女にかかれば一瞬で葬られるだろう。

 剣技が神業でも、彼女の魔力にかかれば、津波に挑まんとする小波のようなもの。

 強大なものを穿つのは小さくも一点に集中した鋭い力。

 それが通じないほどの強大さ。

 彼女の魔力という力のガソリンは無限に限りなく近く防御も強固で崩せないものだ。

 無限の原動力に強固な壁には力というものでは、太刀打ちできないのだ。

 ……力の使い方を知らないがゆえに、彼女が気付く前に世界が崩壊している可能性は否めない。

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