15話
……少女は無言、無表情を崩さない。
そうだろうか、と思った。
危険なのは、危険な思考をもった人間では? 知能が高い分、本能的に活動する獣や魔物よりずっとタチが悪いような。頭の良い獣や魔物も、人間に比べれば、まだまだ可愛いものだ。
そう考えると、エス的にはそれだけタチの悪いのが多いここの方が――。
「うん。今度は、たぶん一人で来ない」
「たぶんじゃなあー」
苦笑いを浮かべるオッサンと目を合わせずに、エスは先へ進もうとした。
とりあえず、このオッサンから怪しいものは感じないが、別に無理に関わるものでもない。
何か後ろで言ってた気もしたが、エスはさっさと先に進んだ。特に目的もなく、ズンズンと先へ――。
「……」
エスは、人の少ない中央噴水の所でとりあえず、落ち着いた。
あまり、人というものが好きではないのが直接関わってわかった。
最初に会った男ヴェンは、好きというわけではないが、嫌いということも決してない。
なんというか、親近感のようなものがあった。
また…会えたらいいな、とか思ってないよ?
まだ…太陽は高い。
真昼間から、少々他の子供たちと格好が違う浮き気味の子供がぽつんと人気の少ない場所にいるのは…見た者に奇妙な印象を与えるだろう。
わかる者が見れば、息を呑んでその神秘的とも言える光景に見惚れてしまうだろうが。
少女から自然と発されているゆるやかだが、確かに強力な魔力の流れを感じてのことだ。
そして、人から離れた美貌。
彼女は幼いが、美人だ。
将来、今から言えるほど、間違いないと言えるほど美人になる。
黒のワンピースドレス。肌は陶器のように白いが、漆黒の髪と瞳。
子供だから、まだ近づける。見た目が大人だったら、よりづらいことこの上ないだろう。




