11話
…まだまだ。全然と言っていいほどわからない。あと少しで眠りにつく。その時、聞けるのならば、聞いてみよう。
誰のものかもわからない。意思。
今いる世界のこと。
元々自分がいたあそこはどうなってしまったのかを。
エスは、楽器を鳴らして近づいてきて、自分の睨みで逃げた男を完璧に忘れていた。
瞼を閉じて、自分の中の闇の中に入る。
問いかけてみる。自分の中にもあの意思は存在するだろうか。
……。
反応はない。
あの意思はやはり、あそこの闇にしかない、そういうことだろう。
そして、この闇はあっという間に終わってしまった。
瞼をくすぐる光でエスは覚醒した。
「……」
……眩しい。早朝だから、まだそれほど強い陽射しではないはずだが、エス的には眩しかった。
自分にとって落ち着く時間の方がこちらではすぐに終わるらしい。
――なるほど。繰り返すわけか。明るくなって暗くなり、そしてまた明るくなる。
「……」
こうしてボーとしていると、本当に自分は今違うところにいるんだなあ、と実感が湧いてくる。
……元のあそこに帰りたい、というわけではない。しかし、帰りたくないわけでもない。
……どうすれば帰れるのかまずわからない。
わからないならば、今を一生懸命生きるしかない。
一生懸命生きている内に、帰れる方法を見出せるかもしれない。
帰れる時が来た時、自分はどう思うか。
帰りたいと思うか。
そんなこと――今からわかるわけない。今すぐに帰れたとしても、何か考えてしまう自分がいるのだから。




