序
小説初心者です。
稚拙ですが、よろしくお願いいたします。
薄暗い森の中。そこに、孤独にたたずむ小さく質素な木の小屋が建っていた。
「報せが届いたぞ」
小屋の中で、少女は小さくつぶやいた。
投函されていたポストから踵を返し、妖艶に輝く銀色の長い髪を静かになびかせた。
無表情に、木椅子に腰かけていた少年をじっと見つめた。
「いい報せ……悪い報せ?」
黒髪の少年は鏡に映したかのような表情の無さで、少女に問いかけた。
少女の眉が、かすかに動いた。
「……悪い報せじゃな、フェリよ。ぬしに行ってもらわねばならぬ」
神妙そうな表情で、つぶやいた。
「いいのか、エーテ。それではお前は――」
「わしのことは構わん。わしはここから動けんのじゃ、ぬしに行ってもらうほかあるまい」
エーテと呼ばれた少女は、無表情のままに淡々と答える。
「わかった……」
フェリはやおら立ち上がり、エーテを一瞥した。
「お前の指示に従おう、支度する」
彼女を尻目に、自室へと向かおうとした。
そのとき――ふっと手を掴まれた。
冷たく、華奢なことがわかる小さな手。フェリは何年も前から、このか弱い手を知っていた。
「フェリよ……わかっておろうな? 万が一わしの力を使うか、一年が経つまでには――」
エーテは心配そうな面持ちを薄く浮かべていた。
フェリはエーテを見つめ返した。
「お前が案ずることはなにもない。俺はお前の役目を代わりに果たす」
「うむ……」
そう言って手を離し、二階へと去った。
そうだ。認めたあの日からずっと、こうすることは決めていた。自分が育て上げたのだ。なにも憂慮することなど存在しない。
エーテは信じた。
「フェリよ……。ぬしがもし、望むのならば……」
その背中を見送って、エーテは消え入るようにつぶやいた。